価格に還元できない商品の魅力を伝えるジャパネットたかた前社長 高田明氏(2)

マーケティングで重要な要素の一つに価格戦略があります。ジャパネットの提供する商品の価格は、安いと一般に思われていますが、実はそれほど安くないと思う消費者もいらっしゃいます。消費者には「安い」と言う人と、「高い」と思う人と、「普通だ」と思う人の3タイプがいらっしゃると思います。先日、ジャパネットの通販番組で50型ハイビジョンの液晶テレビをオーディオラック付きで9万9800円で売りました。分割でも金利負担なしで同じ値段で買える。めちゃくちゃ安いとツイッターでも反応が多数ありました。それでも2、3人は他にもっと安く提供する業者がいるとして「高い」と言う。

今はインターネットですぐ価格情報が調べられますが、売り手側には価格の他に供給量という要素を考えなければなりません。店頭では5個、10個という少量だけを目玉商品として安く売ることはできますが、テレビ通販では数万台の単位で売りますからそういう価格設定は難しい。だから、商品の使い方も含めて、価格に還元できない魅力を伝えて、お客様に納得して買っていただこうとジャパネットは毎日、苦心しています。

アマゾンとは異なる戦略

購買の動機やシチュエーションも様々です。私事になりますが、先日、自宅の鍵の水銀電池がなくなって予備がない。どうしようかと途方に暮れていたら、アマゾンで売っていたのです。「こんなモノまで置いているのか」と本当に驚きました。

アマゾンさんは1000万点以上の商品アイテムがあるそうですね。置いていない商品がまずないという世界です。ネットの世界というのは、そうした特殊なニーズ、個の要求にまで対応できる分野がある。でもなかなかそれだけでは消費者が膨大な品ぞろえを前にして逆に困ったり、迷ったりしてしまいかねない。そこですみ分けが起こるのでしょうね。

ジャパネットのように「厳選して商品を置いています。気に入って安いと思ったら選んでください」という商法が一方にあり、もう片方の極には「いやそうじゃない。ネットの海で消費者に独力で探しもらえばいい」という売り方もあるのだと思います。その中間も含め、どこにアクセント(強調)を置くかに応じて売り方も自然に変わってくるのでしょう。

いずれも異なる価値をお客さんに提供しているのです。どっちが優れている、どっちが素晴らしいということは一概に言えないでしょうね。それぞれの企業の特性や戦略の中でマーケティングというものが成り立っていくのではないでしょうか。勝ちパターンは一つではありません。1番というのも1人、1社だけではないのです。同じ土俵の上で違うものを比較することがおかしい。粛々と自分たちにあった手法を見つけることが大事だと思います。

高田明(たかた・あきら)
1971年大阪経済大経卒。機械メーカーを経て、74年実家が経営するカメラ店に入社。86年にジャパネットたかたの前身の「たかた」を設立し社長。99年現社名に変更。長崎県出身。67歳

(シニア・エディター 木ノ内敏久)

前回掲載の「モノを伝えるのではない」では、「伝えたいと思う気持ちを持つこと」の大切さを語ってもらいました。

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