汗疱が悪化したら皮膚科へ ステロイド塗り保湿

日経ヘルス

2016/10/2
PIXTA
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夏になると、手のひらや足裏の水ぶくれ、皮むけに悩まされる女性も多い。これは“汗づまり”が原因の汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹(いかんせいしっしん)かもしれない。手あれや水虫と誤解されやすく、間違ったケアで症状を悪化させるケースも。原因から治療法まで3回に分けて解説する。最終回は治療法について見ていこう。

手や足裏にポツリポツリできる初期の汗疱なら、汗づまり対策や角質のセルフケアで症状を改善できる。しかし、「かゆみがあり、かいてしまうと、症状が悪化してしまう。できるだけ保湿をしたり、薬をまめに塗る、冷やすなどで対処したい」(埼玉県済生会川口総合病院皮膚科の高山かおる部長)。

汗疱が破裂して皮がむけ、かゆみがひどくなり、湿疹が出る異汗性湿疹の状態になったら、皮膚科での治療が必要だ。

「汗疱、異汗性湿疹の一般的な治療は、皮むけや湿疹の患部にステロイド剤を塗布して症状を改善しながら、角質層を整えるためにローションやクリームで保湿をしていく。ステロイド剤などの外用薬は1日1回、寝る前につけるといい。日中は手のべたつきが気になり、手袋をはめたくなるものなので、汗対策のためにも避けたほうがいい。かゆみが強い場合は、抗アレルギー薬が処方されることもある」(アース皮ふ科クリニックの木下順平院長)


もともとアトピー性皮膚炎がある人などは異汗性湿疹が悪化しやすい傾向にある。外用薬で症状の改善がみられない場合は、内服薬によるアプローチを併用する。

「過剰に働く免疫反応を落ち着かせるため、抗アレルギー薬を内服し、アレルギー反応による炎症を抑えていく。同じ効果を持つ治療法として、有益な紫外線を皮膚内の炎症に照射する光線療法もある」(木下院長)

皮膚科によって、内服薬は処方しないなど、治療のアプローチが異なる場合もあるので、受診したときに医師に治療法を確かめておきたい。

症状の似ている「掌蹠膿疱症」

(イラスト:sino)

汗疱、異汗性湿疹によく似た症状の皮膚疾患に掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)がある。手のひらや足裏にかゆみを伴う小さな水疱ができ、それが次第に膿をもった膿疱に変化していく。やがてかさぶたとなって、角質層がはがれ落ち、湿疹が現れる。足裏にできた場合、やはり水虫と誤解されやすい。

「汗疱、異汗性湿疹と同様に、免疫システムの過剰反応による皮膚疾患といえるが、異なる点は、背景に歯周病や虫歯、慢性扁桃腺などの基礎疾患の併発が見られる場合があること。掌蹠膿疱症のほうが症状はより強いことが多い。治療は汗疱、異汗性湿疹と基本的には同じだが、並行して基礎疾患の治療も必要となる」(木下院長)という。

■この人たちに聞きました

木下順平院長
アース皮ふ科クリニック(東京都・足立区)。幼少期からアトピー性皮膚炎だったことから、症状改善のために皮膚科医を目指す。国立成育医療研究センターで小児皮膚医療を担当した後、アース皮ふ科クリニックを開設。難治性の異汗性湿疹を始め、皮膚科一般を診る
高山かおる医師
埼玉県済生会川口総合病院(埼玉県・川口市)皮膚科主任部長。皮膚科一般を診る一方で、特にフットケアに力を注ぎ、足の健康の重要性を啓発する「足育研究所」代表を務める。近著に『「ガサガサかかと」が危ない!足の手入れが健康寿命を延ばす』(家の光協会)がある

(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2016年9月号の記事を再構成]