1日2個のキウイが腸に効く ダイエットや便秘にも
キウイフルーツの健康効果に関する初めての国際シンポジウムが、ニュージーランドの北部タウランガで開かれ、最新の研究成果が発表された。なかでも注目は、世界的にも関心の高い腸内細菌との関連だ。腸内細菌は、肥満や糖尿病、アレルギー性疾患などと深いかかわりがあるとして国内外で研究が進む。
キウイフルーツの機能性に詳しく、シンポジウムに参加した駒沢女子大学健康栄養学科の西山一朗教授は「腸内モデルを使った実験だが、キウイを添加すると、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が増えた。これらが善玉菌のエサとなり、腸内環境を改善すると考えられる」と分析する。善玉菌のビフィズス菌、肥満の人に少ないといわれるバクテロイデス属なども増加したという。
一方、キウイはダイエットにも効果がありそうだ。「キウイのGI値(Glycemic Index=グライセミック インデックス。食後血糖値の上がりやすさを示す指標)は、40前後で、低GI値食品といえる」と西山教授。しかも「炭水化物の一部をキウイに置き換えた実験では、食後の血糖値の急上昇が抑えられた」(西山教授)。肥満ホルモンのインスリンが過剰に分泌されずにすむというわけだ。西山教授は血糖値対策なら「炭水化物を食べる前にキウイを食べるといい」と助言する。
また、お通じ改善効果についても報告が。便秘型の過敏性腸症候群の患者(IBS-C)や便秘を訴える成人に1日2個のキウイを4週間食べてもらったところ、排便回数や便の形状、腹痛の頻度などが有意に改善した。この研究は、ニュージーランドとイタリア、日本の3カ国共同で実施されており、日本でもヒト試験が始まる予定だ。
西山教授は「キウイに含まれる水溶性食物繊維や多糖類が主に血糖やお通じに関与しているようだ」と話す。水溶性食物繊維には糖の吸収を穏やかにする働きがある。また、「腸内で増えた酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が腸管を刺激して便通を改善すると推測できる」(西山教授)。
ほかにも、1日2個のキウイで血しょう中のビタミンC濃度が飽和状態になることや、血しょう中の好中球が増加して免疫力を高める可能性があることなどが発表された。
●腸内細菌叢が改善する可能性
ビフィズス菌やバクテロイデス属など体によい働きをもたらす腸内細菌を増やす。腸内の発酵を促し、短鎖脂肪酸が増加することで、腸内環境を良好に保つ
●炭水化物の置き換えで食後の血糖値が抑えられた
ビスケットなど炭水化物の一部をキウイフルーツに置き換えると、食後の血糖値の上昇が緩やかになる。炭水化物を食べる前にとると血糖値の急上昇を抑える働きも
●便秘型の過敏性腸症候群(IBS-C)への有用性
ニュージーランド・オタゴ大学のリチャード・ギャリー教授が発表。1日2個のキウイ摂取でIBS-C患者の排便回数や便量などが改善
●キウイの多糖類が便通改善をもたらす
キウイには水溶性食物繊維のペクチン、セルロースなどの多糖類が重量の2~3%含まれる。ペクチンは保水して膨らみ腸管を刺激し、ぜん動運動を促す。便のカサを増す効果も
この人に聞きました
駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授。キウイフルーツの品種や酵素、機能性研究に注力。「キウイは通年出回り、冷蔵庫で保存すれば1カ月はもつ。果物のなかでもビタミン、ミネラルなどの栄養が豊富でバランスがいい」
(ライター 松岡真理)
[日経ヘルス2016年9月号の記事を再構成]
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