NEC、東京五輪警備にらみ顔認証ソフトの精度アップ0.3秒で160万人分を照合/顔下向きや横向きOK

NECの顔認証システムのイメージ
NECの顔認証システムのイメージ

東京五輪・パラリンピックを控え、NECは米国立研究機関から「世界一」に認定されたという顔認証技術に磨きをかける。監視カメラに映った通行人が顔を横や下に向けていても要注意人物を割り出せるよう精度を高めた。東京五輪では競技会場などの警備用に提供する計画だ。技術力の高さを示し、海外市場の開拓につなげる。

NECは監視カメラに映った人物を特定する顔認証ソフトの販売を月内に始める。従来のソフトと比べて、カメラに映り込んだ人物が遠くにいたり、顔が正面を向いていなかったりしても高い精度で認識できるようにした。価格は200万円(税別)から。空港など公共施設での利用を見込む。

監視カメラに映る通行人の映像と、データベースに登録してある要注意人物などの顔写真を照合して人物を特定する仕組みだ。要注意人物を発見すれば警報を出し、警備員や警察官が急行する。

ただ通行人は監視カメラに顔を向けていないことがほとんどだ。顔が正面を向いていなくても識別できる性能が求められる。今回NECが新たに開発したソフトは左右40度、上下20度の傾きに対応させた。同社の従来のソフトが対応したのは左右30度、上下15度の傾きまでだった。

人物が遠くにいて監視カメラに映っている顔が小さいケースもある。新しいソフトは従来と比較して顔の面積が4割小さくても識別できる。

NECは今後も性能の向上を図り、顔認証技術で世界をリードする立場を守りたい考えだ。

米国立標準技術研究所(NIST)が数年に1度実施する精度や処理速度の比較テストでは、過去3回連続で仏モルフォや米3Mなどの競合を抑えてNECが首位だった。世界一の実績をベースに海外で積極的に顔認証システムを売り込んでおり、すでに空港の入国審査場を中心に40カ国以上に納入している。

NECは顔認証システムをけん引役として、「セーフティー」と呼ぶ警備や保安関連の事業領域で、2018年度に海外売上高を15年度比3.4倍の1420億円に引き上げたい考え。

その先の成長も見据えてNECがNISTの性能テストと並び、自社の技術力の高さを世界にアピールする機会と位置づけているのが20年の東京五輪だ。遠藤信博会長は「セーフティーの分野で安心・安全な大会運営に貢献したい」と強調する。競技会場の入場者の本人確認や、周辺施設での不審者の発見などの用途で顔認証システムの受注を目指している。大会期間中に世界中から集まる人々に技術の高さを認識してもらうのが狙いだ。

海外事業の拡大に向けて、技術力を高めるだけでなく個々の案件の規模を大きくすることも求められる。NECは昨年、ブラジルの政府機関から同国の主要14空港向けの顔認証システムを受注した。ところが受注総額は3億円と1空港当たりの平均は2100万円にとどまる。システムの提供に満足することなく、運用や監視代行など幅広いビジネスにつなげることが今後の成長には欠かせない。

(吉野次郎)