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新興株投資の基本 銘柄分散し、成長力見極めを

2016/8/6

 今年に入り東証マザーズやジャスダックなど新興企業向け市場が関心を集める場面が増えている。世界景気の先行き不安や円高で輸出関連の主力株が手がけづらいなか、内需で稼ぐ企業の多い新興株への注目度が相対的に高まっている。足元で新興株相場はやや調整気味だが、今後も折に触れて物色される可能性が高い。ただ新興株は特有のリスクもある。投資する際の留意点をまとめてみた。

 今年前半、マザーズ上場で創薬ベンチャーのそーせいグループの株価急騰が話題となった。英子会社が製薬大手と相次ぎ提携契約を結び、将来の収益拡大への期待が高まった。5月には一時昨年末比で約2.6倍まで上げた。

 そーせい株人気は主力株が円高などで足踏みを続けていた時期とかさなる。足元は主力株も復調しつつあるが、昨年末と比べ日経平均株価は13%下落している。これに対し、東証マザーズ指数は4%上昇するなど新興株相場は底堅い。

■軽い値動き魅力

 新興企業は創業間もない企業が多く、早い段階で投資すれば“大化け”する可能性がある。例えばヤフー。インターネット普及を追い風に成長し、株価は上場時から株式分割などを考慮すると180倍を超えた。

 値動きの軽さも魅力だ。新興株の時価総額は総じて小さい。新興株は約1000社で、うち4分の3は100億円未満。市場に流通する株式も少ないので値動きが大きくなりやすい。タイミングをうまくとらえれば利益を得る機会も多い。ただし値動きの大きさはリスクの裏返しでもある。経験の浅い投資家は短期売買を避け、中長期保有を前提に投資すべきだろう。

 中長期投資でまず留意すべきは配当収入が期待しづらい点だ。新興企業は稼いだ利益を成長投資に回す傾向が強く全体の3割は無配(東証1部企業は5%)だ。投資家は値上がり益を狙うのが基本だ。

 新興株は玉石混交だ。銘柄をどう選べばいいか。SBIアセットマネジメントの関谷明広氏は「まず収益モデルが自分の頭で理解でき、利益がきちんと出ている会社に絞るべきだ」と話す。新興株を見る証券アナリストは限られ、銘柄によっては事業環境を調べるのにも限界があるからだ。

 自動運転や人工知能、電子商取引など市場で話題のテーマに乗れば投資の取っかかりになるが、思惑や期待で買われている場合が多い。大和住銀投信投資顧問の苦瓜達郎氏は「市場で人気化する前なら果たして買ったかどうか。冷静な視点が必要だ」と指摘する。

■PERを参考に

 企業が公表する決算や予想数字を見る場合も主力企業とは違う視点が必要だ。岡三アセットマネジメントの五十嵐和人氏は「売上高が数倍になるなど変化率が大きい企業かどうかに着目すべきだ」と助言する。

 新興企業は収益の柱が少なく、財務も不安定だ。倒産リスクに注意を払う必要がある。手っ取り早いのはキャッシュフロー計算書の推移を見ることだ。本業の現金の出入りを示す営業キャッシュフローが黒字かどうかが一つの目安になる。また会社の過去の業績目標の達成度合いを見るのも一つの手だ。信用力の物差しになるからだ。

 投資のタイミングはPER(株価収益率)が参考となる。「高成長が期待できる銘柄ならば東証1部平均(15倍前後)を上回る数十倍も許容される」(みずほ投信投資顧問の岩本誠一郎氏)が、短期間の株価上昇で100倍を超えている場合はしばらく待つのも一つの手だ。赤字だとPERは使えないが、企業が3~5年後の目標利益を掲げていれば、それをベースとしたPERが一定の目安にはなる。

 資金は複数の銘柄に分散することを勧める市場関係者も多い。「主力株より値動きが大きいため、一銘柄に絞れば、一時的な株安局面で慌てて売り急ぐことになりかねない」(SBIアセットの関谷氏)からだ。

 中長期保有が基本だが、一定の含み損益が出たら、素早く売るルールを設定するのもよい。「高い成長期待に支えられる新興株は増益でも成長減速の兆しがあるだけで売られるきっかけになる」(みずほ投信の岩本氏)からだ。いずれにせよ、新興株投資では成長力の見極めが何よりも問われる。(真鍋和也)

[日本経済新聞朝刊2016年7月30日付]

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