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長期運用、低リスクでそこそこ稼げる投信はこれだ QUICK資産運用研究所 北澤千秋

2016/8/3

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原油安や新興国景気の変調、英国のEU(欧州連合)離脱決定などを背景に、年初から世界の金融・株式相場は荒い展開が続く。手持ちの投資信託で含み損を抱えてしまった投資家も多く、投信市場への資金流入は細り気味だ。

こんなとき安定的に資産を増やしたいと考える人なら、下げ相場に抵抗力があり、そこそこのリターンも期待できるファンドが欲しいと思うはず。変動率の大きい相場でも堅実にリターンを積み上げてきたファンドを探してみた。

■小粒でも個性的

公募の追加型株式投信(DC・ラップ口座専用、ETFを除く)を対象に、(1)過去6カ月の分配金込みリターンが0%以上(2)過去3年間の同リターン(年率)が5%以上(3)基準価格の過去最大の1年間下落率が10%未満(4)過去3年の標準偏差(リスク、年率)が10%未満――という4つの基準で選択した。

選びたかったのは、年初からの荒れ相場でも損を出さず、過去3年でみても運用成績は安定し、かつ基準価格のブレ幅がさほど大きくないというファンドだ。

基準価格の1年間最大下落率を10%未満としたのは、年間で1割程度の損失なら、資産運用のビギナーでも何とか心理的に持ちこたえられるだろうと考えたからだ。逆に、それぐらいの一時的な含み損にも耐えられないなら、長期の資産運用は不向きと思った方がよいだろう。

4つの基準を満たした投信は28本。そのうち主なものを表にまとめた。あくまで過去の実績ではあるが、相場の下げ局面では抵抗力を示し、上げ相場にもそれなりに追随できたファンドといえる。国内債券や為替ヘッジ付きの外国債券で運用する投信が中心だが、小粒ながら個性的なファンドも目を引く。

AR国内バリュー株式ファンド(みずほ)は、どんな相場局面でもプラスの収益をめざすヘッジファンド型投信だ。国内の中小型割安株に投資する一方で先物を機動的に売り建て、相場の局面に合わせて株式の実質組み入れ比率を0~20%にコントロールしている。3年間の年率分配金込みリターンは8%と、今のところ運用は順調だ。

ストラテジック・リート・ファンドAコース(明治安田アセットマネジメント)は海外不動産投資信託(REIT)型。通常のREITに加え、相対的に利回りが高く価格変動が小さい優先REIT(議決権なしのREIT)が主な投資対象で、3年年率の標準偏差は8.3%と同分類のファンドの中では低い。

年4回決算で、決算期末の基準価格の水準で分配金額を決めるという「予想分配金提示型」であるため、多くの海外REIT型投信のように、高額の分配金を払うために元本を取り崩すようなことはなさそうだ。

■利回り低下、コスト上昇に注意

バランス型ではファイン・ブレンド(日興)が顔を出した。日本の長期国債、海外債券、世界の高配当株式、海外REIT、金の5資産に分散投資しており、足元では長期国債と金の相場上昇が運用成績の向上に寄与した。「リスク・パリティ」といって、組み入れる各資産の値動きがファンド全体の価格変動に及ぼす影響が均等になるように資産配分比率を決める運用手法を採用し、基準価格の変動が穏やかになる運用を目指している。

これらのファンドを個人投資家はどのように利用できるだろうか。まず考えられるのは、資産形成や資産防衛のための金融商品の一つとして保有する方法だ。大きなリターンは期待できない代わりに、大きな損失を出す恐れも小さそうで、中長期で資産を少しずつでも増やしたい、という人に向いている。

ただし注意も必要だ。国内債券を主な投資対象とする投信は、ここ数年、日銀の未曽有の金融緩和による債券価格上昇の恩恵を存分に享受してきたが、これから先は債券の利回り低下が運用の足を引っ張りそうだ。年1%前後の運用管理費用(信託報酬)も重荷になり、これまでのようなリターンは期待しにくくなる恐れがある。

楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは「すでに保有している人が持ち続けるのはいいかもしれないが、国内債券ファンドを新規に購入するのは疑問」と話す。

ヘッジ付きの外債ファンドに投資している投信は、ヘッジコストの上昇が気がかりだ。ドルの調達難などでヘッジコストは足元で1%を超えてきた。今のところアジアのドル建てハイイールド債(低格付け債)などは高い利回りでコストを吸収しているが、ヘッジコストの動向には目を配っておきたい。

■資産全体で攻守のバランス

低リスク・安定リターンのファンドのもう一つの使い方は、分散投資の対象として資産に組み入れる方法だ。例えば人気の海外REIT型投信しか保有していない人が追加で表に出てくるようなファンドを購入すると、資産全体のリスクが低下する。

具体的なケースをQUICKの情報サービスであるQr1で分析してみよう。全投信の中で純資産総額トップの新光US-REITオープンを100万円保有している投資家が、NNアジア・ハイ・イールド債券ファンド日本円コース(毎月分配型)を30万円追加で購入したとする。すると、標準偏差(1年)はUS-REITオープンを単独保有しているときの23%から18%に低下。一方、リターンは5%前後でほぼ変わらない。

高額の分配金に目を奪われて海外REIT型投信ばかり保有している人などが、偏った資産構成を見直す際には有効な方法になる。

ただし、この場合も気を付けなければならない点がある。表に挙げたファンドは大半が為替ヘッジ付きで、実質的には円資産になる。保有しているのが日本株や国内債券ファンドの場合、追加でヘッジ付き投信を買うと資産はすべて実質円建てになり、分散効果は薄まってしまう。篠田氏は「追加で購入するなら保有ファンドとの相性を考えるのが大事」と指摘する。

マーケットの環境はよいときばかりではないし、悪いときばかりでもない。山あり谷ありの資産運用を長く続けるには、金融商品選びで攻めと守りのバランスを取るのも大切だ。

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