桐谷美玲 幅広い認知度とコメディエンヌの才能で開花

日経エンタテインメント!

デビュー11年目で月9主役の座に上り詰めた桐谷美玲。主演クラスの他の女優と比較して、彼女の特徴と言えるのは、「広い世代での高い認知度」と、近年身に付けた「コメディエンヌとしての才能」だ。

アーキテクト「タレントタワーランキング」調査データ(2016年2月実施分)より。認知度は、「名前も顔も知っている」と回答した人の割合

認知度については、並行して取り組んできた女優、モデル、キャスターという全く異なる活動が功を奏した。左のグラフは、株式会社アーキテクトがまとめた桐谷の世代別認知度。まず女性を見ると、20代が突出しているが、これはモデル活動の影響が大きい。桐谷は06年の女優デビュー後すぐに、『Seventeen』専属モデルに就任。当時発売したスタイルブックが累計20万部を超えるなど、10代女子の支持を得た。その後も定期的に雑誌モデルを務め、桐谷と共に年齢を重ねた20代女性の認知度を維持している。

1989年12月生まれ、千葉県出身。2006年映画『春の居場所』でデビュー。16年は映画『暗殺教室 -卒業編-』などにも出演。雑誌モデル、ニュースキャスターとしても活躍。(写真:アライテツヤ)

ちなみに『Seventeen』を卒業する際、記念イベントが開催されたのだが、これが『NEWS ZERO』のキャスター就任のきっかけとなった。その場で桐谷が読み上げた卒業スピーチが自分の考えを的確に表現していると、プロデューサーからオファーを受けたのだという。男性の認知度は30代40代が高いが、これはキャスターとしての活動の表れと、容易に推測できる。

転機となった『ヒロイン失格』

女優としての桐谷については、以前から「作り手が求めるものを察知する感覚に優れ、どんな役もこなす」との声が業界関係者から聞かれていた。確かに出演作を見ると、『荒川アンダー ザ ブリッジ』などで見せるクセの強い役から、大河ドラマ 『軍師官兵衛』まで幅が広い。これは長所であるが、短所にもなる。個性が見えないとも受け取られるためだ。

表はこの数年の間、映画やドラマで主演を務めた主な女優を年齢別にまとめたもの。桐谷よりやや年上の85~88年に生まれた女優の層が厚い。

昨今、主役を務める女優は30歳前後と、新たに台頭してきた20代前半に集中している。桐谷美玲は、ちょうどその谷間に当たる。なお、表記した年齢は、2016年の誕生日以後の満年齢

「圧倒的な個性や知名度を誇る女優が多くいて主役を務めるなか、その下の世代にあたる桐谷さんや多部未華子さんは何にでも染まれることが求められていたのでは」と、『好きな人がいること』の藤野良太プロデューサーは分析する。

では藤野氏がこのタイミングで、桐谷を月9の主役に選んだのはなぜか。同氏は、15年に公開された映画『ヒロイン失格』で2つの魅力を再発見したという。

1つは、同性の共感を得られること。「10代女子が集まる渋谷の映画館で『ヒロイン失格』を見たんですが、通常、恋愛映画は男性俳優を見に来る子が多いんですよね。それが『ヒロイン失格』では、桐谷さんの役を応援する雰囲気になっていた。彼女はいい意味で女らしくなくて、視聴者の敵にならないんです」(藤野氏、以下同)。

『好きな人がいること』は、桐谷美玲演じる主人公・櫻井美咲の目線でストーリーが進む。「美咲役に求めるのは女性が共感できて、応援できること。桐谷さんしかないと思った」という。

もう1つの魅力は、コメディエンヌとしての才能だ。『ヒロイン失格』のなかでの桐谷は、変顔をしたり、坊主頭の姿まで披露するなど、恋に暴走するヒロインを体当りで演じて観客の笑いを誘った。「桐谷さんは特に、喜怒哀楽の感情をデフォルメさせると魅力が増す。怒った表情がかわいい女優は珍しい」。

女優として様々な役を経験し、他のジャンルでもキャリアを積んできた桐谷美玲。デビュー10年目に出合った『ヒロイン失格』で個性を勝ち取り、ついに自分の道を歩き出そうとしている。

(日経エンタテインメント! 羽田健治)

[日経エンタテインメント! 2016年8月号の記事を再構成]

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