今回は私道について考えてみます。建築基準法では「幅が4メートル以上の道路(建築基準法上の道路)」に「2メートル以上」接していなければ、原則として建物が建てられないことになっています。また、建築基準法上の道路の幅が4メートル未満の場合、原則として道路の中心線から2メートル後退して建物を建築しなければならないことになっています。
購入する一戸建ての敷地において、将来、建て替えができないとなると大問題ですから、このような「敷地と道路の関係」については、土地や一戸建てを買うときにチェックしておくべき重要なポイントとなっており、一般の方々でもご存じの方が多いと思います。
売買契約の前に行われる重要事項説明書でも、「建物が建築できる道路か否か」については比較的多くの紙面を割いて説明しており、もれなく説明できるような書式になっています。
一方、私道に関しては問題が表面化していなければ、将来発生するかもしれないリスクについて詳しく説明してくれる不動産屋さんはあまり多くないというのが実情です。
私道なら通行制限や費用請求も
「公道」は一般的に国や県、区市町村などの地方公共団体が所有し管理している道路のことです。一方、「私道」というのは「私人が、その道路に対して所有権等の実体法上の権利を有し、維持管理している道路」を指します。
「関係者以外の通行を禁じる」という標識や、車が自由に通行できないよう可動式のポールなどを立てているような道路を見かけることがありますが、これは私道である場合がほとんどです。
このように、私道の所有者は他人が通行すること、車両の通行、さらに水道管などを敷地に引き込むための道路掘削などを制限したり、そのための承諾料を要求したりすることもできます。
他人が所有している私道にのみ面している土地や土地付き一戸建てを購入した後、私道所有者から私道の通行などを制限されたりすると問題です。そこで、その私道を自由に通行したり、給排水管を交換したり修繕する際に道路を掘削することについて、事前に私道所有者から承諾を得ておくという方法があります。
一般に、「私道の無償通行・掘削承諾書」という書類を売り主と私道所有者との間で作成してもらうのですが、承諾書の内容としては、以下の3点を押さえておくことが重要です。
(2)購入対象の土地にガス管、水道管、下水管等、生活に必要な設備を設置する場合、その私道を無償で掘削することを私道所有者が承諾すること(ただし、工事をした人は、その私道を自分の費用負担で原状復旧すること)。
(3)私道所有者、購入対象の土地所有者が変わる場合、上記2点について承継すること。
このように私道所有者と売り主が上記のような約束を書面で交わしていれば、買い主は安心して購入できますし、売り主も売った後になって、買い主からクレームを受けるということがなくなります。
ちなみに、私道の共有持ち分も含めて購入できる場合は、その持ち分権に基づいて私道の権利を持つことになります。従って、私道の他の共有者が通行などを妨害するような事態が発生したとしても、持ち分権に基づいてその妨害の排除を請求することが法的には可能であると一般に考えられます。その場合は、上記のような承諾書まで取得しないというケースもあります。
維持管理の費用負担の可能性
公道の維持管理は地方公共団体が行いますが、私道は、原則としてその所有者または私道を利用している方々が費用を負担することになります。
購入時の重要事項説明において「負担金なし」となっていても、将来、私道を修繕しなければならなくなった場合、私道所有者から費用の請求を受けるなど、費用の負担が発生する可能性があるわけです。
また、私道の場合、その道路に埋設されている水道管や下水管が誰のものかということも問題となります。公道の場合は、一般的に水道局や下水道局が所有・管理していますので、道路の維持管理同様、お金がかかることはありません。
一方、私道に埋設されている上下水道は私設管である場合があり、これが破損すれば、その費用は利用者の方々が負担することになります。
私道にしか面していない土地や一戸建ては世の中に多くみられるものですが、問題が顕在化していないケースがほとんどです。しかし、現時点ではこうした問題が顕在化していなくても、将来、発生する可能性があるということを知っておく必要があるのです。これから購入される方にも、現在所有している方にも知っておいてほしいお話です。
