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天引き貯蓄は20代前半から 10年後に年収相当目指す

2016/7/30

 新入社員が社会に出て約4カ月。初めての賞与を受け取った人もいるだろう。つい使ってしまいがちになるが、これからの長い社会人生活や老後を考えると若いうちから貯蓄の習慣を身に付けておきたい。無理なく貯蓄できる天引きを活用し、10年後に年収相当額をためることを目標にしてみよう。

 今年大学を卒業して働き始めた人は10年後におおむね30代前半だろう。「結婚して子どもができたり、マイホームの購入を考え始めたりする人が多い年代。年収相当額の貯蓄があれば教育資金や住宅購入資金に生かせる」とファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔氏は話す。

 国税庁の民間給与実態統計調査(2014年分)によると、20~24歳の平均年収は248万円。30~34歳は392万円だ。そこで、これから貯蓄を始めて30代前半で平均年収相当額の400万円にする計画を考えると、月2万円、夏冬の賞与月は10万円をためれば年間で40万円なので10年後に400万円になる。

 年収250万円の人にとって年40万円は16%。貯蓄を始めた当初は生活がやや苦しく感じるかもしれない。しかし25~29歳の平均年収は344万円なので、働くうちに年収も増え、負担感が和らいでくることもありそうだ。

■まず財形を活用

 ではどんな方法でためていくのがいいのだろうか。FPの馬養雅子氏は「先取り貯蓄が王道」という。先取り貯蓄とは給与が出たら使う前に一定額を貯蓄に回すこと。具体的には給与からの天引きが有効だという。「勤務先に財形制度があれば、第一に活用を考えたい」(馬養氏)

 財形制度は勤労者財産形成促進制度の略。勤務先を介して、給与から一定額を差し引き、金融機関が扱う商品で運用する。厚生労働省によると、14年で常用労働者1000人以上の企業の75%、300~999人の企業でも72%が採用している。貯蓄分を差し引いた金額で生活をやりくりする習慣がつきやすい。

 財形制度は貯蓄目的に応じて一般財形、住宅財形、年金財形の3つがある。住宅財形は住宅資金づくりのため、年金財形は60歳以上になった時の老後資金に備えるもので、ともに利子などが非課税になるメリットがある。

 勤め先に財形制度がない人は、自分で銀行の自動積立預金サービスを利用するのが選択肢になる。給与振り込み用の口座がある銀行で別に貯蓄目的の口座をつくって手続きをしておけば、給与が振り込まれた翌日などに、銀行が自動的に貯蓄用口座に一定額を移してくれる。

 給与振込口座で貯蓄をすることも可能だが、ついつい生活費を引き出して気がついたら思った以上に残高が減ってしまっているということもある。別の口座に移すことで「引き出したいという気持ちに歯止めがかかりやすい」とFPの坂本綾子氏は助言する。

 貯蓄残高が増えていくと、ATMの引き出し手数料が無料になるなどの特典もある。例えばみずほ銀行は、残高10万円以上といった一定の条件をみたすと、ATM時間外手数料が無料、コンビニATMでも月4回まで無料になる。

■ネット銀も一案

 貯蓄用の口座を別途、インターネット銀行につくる手もある。一般的に預金金利が大手銀行に比べ高い例が目立つからだ。ソニー銀行などは、利用者が他の銀行に持つ口座から毎月、自動的に資金を移し、4~5営業日後に普通預金口座に入金してくれるサービスがある。手数料は通常かからない。入金された資金を定期預金に入れたければパソコンやスマートフォンから指示すればいい。

 貯蓄がある程度の額になったら資産運用を考えよう。公的年金は将来目減りする可能性が大きく、「20~30代から備えていた人とそうでない人とでは老後資金の準備でも大きな差がつく」(馬養氏)。

 投資初心者はまず指数連動(インデックス)型の投資信託が候補になる。一般的にコストが安く、商品性が分かりやすいからだ。山崎氏は「毎月貯蓄する2万円のうち5000円分で投信を積み立てていくといい」と話す。

 最近は、勤務先を通じて少額投資非課税制度(NISA)を利用できる例もある。給与天引きで株式や投信を購入でき、非課税措置がある。来年1月からは、個人型確定拠出年金(DC)を利用できる範囲が広がる。掛け金を天引きできる仕組みが導入されれば、より効率的に貯蓄をしやすくなる。掛け金は全額が所得控除となるなど税優遇が大きい。

 坂本氏は貯蓄と同時に緊急時に引き出せるお金もためておくことを勧める。「常に30万~50万円持っていれば、病気や急に仕事を失った場合にも安心して対応できる」。生活費をやりくりして給振口座に毎月一定額が残れば、それが「緊急用のお金」にもなる。緊急用の口座をつくって管理しておくといい。(川鍋直彦)

■社内預金の金利 有利さが目立つ
 給与からの天引きで貯蓄をするとき、代表的な制度の一つに社内預金がある。民間の金融機関よりも高めの金利が設定されるのが一般的だ。法律上も下限金利がある。厚生労働省が市中金利の状況を勘案して毎年見直しており、現在は年0.5%。マイナス金利政策の影響で大手銀行の預金金利が一段と下がるなか、元本確保型商品として有利さが目立っている。
 ただし社内預金の導入企業は2014年で全体の3.6%と、09年の4.6%から減少した。常用労働者1000人以上の大企業では6.7%。企業は福利厚生のメニューを絞っているが、勤め先に制度があればぜひ利用を考えたい。

[日本経済新聞朝刊2016年7月27日付]

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