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日本発のスポーツの力を 考えよう「2020年以降」 文部科学省参与 藤沢久美氏インタビュー(下)

スポーツイノベイターズOnline

2016/9/8

スポーツ・文化・ワールド・フォーラムのリーダーを務める藤沢久美氏(写真:加藤康)

 世界経済フォーラムの協力と、官民の連携で開催される国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(主催:文部科学省、スポーツ庁、文化庁)。2016年10月に開催されるこのイベントは、スポーツ・文化芸術の発展による新たな産業の創出や、スポーツ・日本古来の文化(道)の魅力、成長戦略と連動した日本ブランドなどを海外に積極的に発信することを目指している。その取り組みは、対日直接投資の拡大につながるという期待も大きい。

 例えば、文化庁では19年のラグビーワールドカップ(W杯)や20年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に「文化芸術立国」を目指すプログラム「文化力プロジェクト(仮称)」を実施する。全国で20万件のイベント、5万人のアーティスト、5000万人の参加を目指す。

 今回のスポーツ・文化・ワールド・フォーラムは、日本で開催が相次ぐ大型スポーツイベントをキッカケにした、一連の取り組みのキックオフ会議である。「“日本”を世界に向けて発信する」をいかに具体化していくか。「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム リーダー」として準備にあたる藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)のインタビュー最終回は、今回のフォーラムの課題や意義について聞いた。(聞き手は、上野直彦 スポーツライター)

――先日開催した「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(以下、ワールド・フォーラム)のアンバサダー就任式では、登壇した4人全員が女性で目を見張るものがありました。今回のフォーラムでは女性の活躍をどう捉えていますか。

藤沢 就任式については全く性差のことは考えておらず、たまたまです。実は、ワールド・フォーラムを開催するに当たり、行動規範をつくりました。その最初がダイバーシティ(多様性)です。

 女性、男性、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字)、国内、国外、年齢も、準備室の中では役人だろうが、民間人だろうが、ダイバーシティを大事にしています。関連するテーマをワールド・フォーラムの中で取り上げて議論するよりも、そういう価値観を共有したメンバーがつくり上げることできっとダイバーシティの重要性が伝わるものになると考えています。

――会期中にスポーツ大臣会合が開催されるそうですが、どのようなテーマが取り上げられる予定でしょうか。

藤沢 今、世界の国際会議では、開発と平和のためのスポーツが注目されており、日本政府はスポーツを通じた国際貢献事業として「Sport for Tomorrow」を世界的に公約し、日々実践しています。

 世界でもユネスコ(国連教育科学文化機関)主催の「MINEPS」(体育・スポーツ担当大臣等国際会議)をはじめ、国際的な場でスポーツの議論がとても増えています。スポーツの力というものを、今回のワールド・フォーラム期間中のスポーツ大臣会合で日本から発信し、国際的なフォローアップをして、今後につなげていくような具体的な議論をしていく予定です。

馳浩文部科学相(当時)を中央に、左からスポーツ・文化・ワールド・フォーラムのアンバサダーに就任した映画監督の河瀬直美氏、女子レスリングの伊調馨氏、パラリンピック水泳の成田真由美氏、元パリ日本文化会館館長の竹内佐和子氏(写真:上野直彦)

――現在、フォーラム開催に当たっての課題は何でしょうか。

藤沢 課題はいっぱいありすぎて……(笑)。人が足りないというのが一番の問題ですね。

―― 現状、フォーラム準備室のスタッフは何人ですか。

藤沢 23人です。本当は40人欲しいですね。参加者が延べ3000人以上の規模ですので、ロジスティックスだけでも、準備しなくてはいけないことが相当の数に上ります。

 また、今回のような規模の国際フォーラムを開催するのは文科省にとって初めての取り組みです。この大きなチャレンジを成功させるカギは、できるだけ多くの人に関わっていただくことだと思います。準備室の人が増えればいいというのではなく、今回のワールド・フォーラムにどれだけ多くの人に参加してもらえるかが一番の課題だと私は思います。

 そのためには周知が必要です。多くの人に今回のフォーラムの存在と魅力を伝えて、「面白そうだから参加してみよう」「面白そうだから自分たちも同じ時期に何かを始めてみよう」と考える方が増えることを目指しています。

――藤沢さんは世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」の取り組みに携わっていますが、どういった活動をしているのでしょうか。

藤沢 私がヤング・グローバル・リーダーになったのは、07年です。その時に言われたのは、「あなたたちは、いろいろな分野のリーダーです。世界をより良いものにしていくために考えて行動を起こしなさい」と。世界の課題をみんなで議論して、その課題をどのように自分たちの持っているノウハウや人的ネットワーク、リソースで解決できるかということを議論して、具体的に動いているんですね。

 例えば、日本のヤング・グローバル・リーダーから生まれてきた取り組みの一つに「Table for Two」という社会貢献活動があります。食の不均衡について議論した際に「先進国ではメタボで病気になっている人がいて、途上国では飢餓で死んでしまう子供たちがいる。それらを両方同時に解決できないか」という話になりました。Table for Twoはそれをきっかけに生まれた活動です。

 具体的には、先進国では社員食堂などで低カロリーのおいしい料理を20円上乗せした価格で提供していただき、その上乗せ分をアフリカなど食糧難が社会課題になっている小学校の給食代として支援しています。日本発のアイデアに各国のヤング・グローバル・リーダーが力を貸してくれて、世界の10を超える地域で活動が広がっています。

 それ以外にも日本では、東日本大震災で被災した若者たちを支援する「BEYOND Tomorrow」も立ち上げました。海外から生まれたプロジェクトの中には、「Global Dignity」があります。これは、戦争や紛争で親を亡くしてしまった経験や貧困による苦しみの経験から一人でも多くの子供たちが立ち直り、勇気を持って人生を歩んでいけるように、世界各地の小学校などでつらさや苦しみをいかにして乗り越えたかという経験談を互いにシェアするプロジェクトです。

 そのほかにもヤング・グローバル・リーダーが集まって議論する中で、様々なプロジェクトが生まれています。「Just Do」、とにかく実行が合言葉です。「評論家もいらないし、考えているだけの人もいらない。やりなさい。解決に向けて行動を起こしなさい」と。

藤沢 だから、私たちは問題があると全員が「何かをやらなくては」と思ってしまいます。また、ヤング・グローバル・リーダーになると、例えば、各国の首相や大統領、トップ企業経営者と対話をする機会やリーダーとしてのトレーニングを受ける機会などを与えられます。こうした体験を通じて、いろいろな問題を目の当たりにすると「何かやらなければならない」という気持ちや、今までいただいたチャンスに対する感謝の気持ちが生まれて、自然に世の中のためになることをしたいと思うようになる人が多いですね。

 ヤング・グローバル・リーダーに選出されるのは、40歳以下の各界のリーダーです。選ばれてから6年間活動期間がありますが、6年後からも卒業生としての活動があります。私も既に卒業生ですが、卒業生の中には首相や大臣になった人もいます。

――最後にワールド・フォーラムについてのメッセージをお願いします。

藤沢 「Co-Creation、Co-Growth、All Together」(共に創ろう、新たな成長)。とにかくみんな一緒にやりましょうということにつきます。実はこれ、今回のワールド・フォーラムのコンセプトなんです。

[スポーツイノベイターズOnline 2016年7月27日付の記事を再構成]

藤沢久美(ふじさわ・くみ)。シンクタンク・ソフィアバンク代表。大阪市立大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。1999年に同社を世界的格付け>会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年から現職。2007年に世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。文部科学省参与、政府各省の審議委員に加え、豊田通商の社外取締役などを兼務。
上野直彦(うえの・なおひこ) スポーツライター。兵庫県生まれ。ロンドン在住時にサッカーのプレミアリーグ化に直面しスポーツビジネスの記事を書く。女子サッカーやJリーグを長期取材している。 『Number』『AERA』『ZONE』『VOICE』などで執筆。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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