マネー研究所

税務署は見ている

副業で赤字 確定申告で税金還付の可能性も

2016/7/26

 大手の中にも社員の副業を認める企業が徐々に増えてきたことから、副業を始める会社員が増えているようです。カウンセラー仲間の会社員のA子さんもそのひとり。今回はA子さんとの対話を再現してみましょう。

飯田:「最近、どうしたはるんですか?」
A子:「どうなんですかねぇ。毎週水曜日がノー残業デーになったんで、ヨガに行くのを復活させました」
飯田:「ヨガ、いいですよね。で、副業の方は? 何か始めようかなって言われてましたよね」
A子:「あ、そっちのことやったんですね」
飯田:「何を始められたんですか?」
A子:「色々考えたんですけど、やっぱり、同じやるんやったら好きなことというか、やりたいことをしたいって思って、電話カウンセリングをやることにしたんです」
飯田:「そうなんですね」
A子:「ちょうど、職場の同僚でホームページ(HP)の作成を副業で始めた子がいて、その子にHP作ってもらいました」
飯田:「へ~、HPね。それって、結構な出費やったんと違うんですか?」
A子:「ええ、まあ……。でも、そういうことをちゃんとしといたら、途中で辞めたいと思っても、辞めずに続けられるかなって思って」
飯田:「なるほどね」
A子:「でも、HPを立ち上げたからって、すぐにお客さんが来るわけじゃないんですね」
飯田:「まあ、そうやと思いますよ。どんな業種の人に聞いても集客が一番大変って言われますしね」
A子:「そうなんですね。確か、副業って所得金額が20万円を超えたらお給料と合わせて確定申告しないといけないんですよね」
飯田:「収入金額から必要経費を差し引いた残りの金額を所得金額っていうんですけど、それが20万円を超えたら確定申告しないといけないってことになってます」
A子:「実は、恥ずかしい話なんですけど、先月はお客さん、1人だけやったんです。この調子で行ったら、今年は赤字になると思うんです。赤字やったら申告しなくていいんですよね」
飯田:「う~ん、でも、A子さん。HP作成の費用払ってますよね」
A子:「はい」
飯田:「そしたら、確定申告したらお給料から源泉されてた所得税が還付されるかもしれませんよ」
A子:「えっ! どういうことですか?」

 数年前までは、サラリーマンの副業というと、こっそり会社にばれないようにやっているイメージがあったと思います。けれども、最近では、副業を奨励する企業も出てきました。

 A子さんは働いている会社で人事にかかわる部署に配属されたことがあり、仕事に役立てるためカウンセラーの資格を取りました。その時は自分でお金を払って講座に通っていました。今年、副業として何をしようかと考えた際、今まで勉強してきたことで退職したらやりたいと思っていたカウンセラーの仕事にチャレンジすることに決めたのでした。

 A子さんは会社勤めをされてるので、会社での勤務が「本業」、カウンセラーの仕事は「副業」という呼び方になると思います。所得税法は所得について(1)事業所得(2)不動産所得(3)利子所得(4)配当所得(5)給与所得(6)雑所得(7)譲渡所得(8)一時所得(9)山林所得(10)退職所得――の10種類に区分し、それによって課税の方法が決められています。

 A子さんの本業は給与所得で、副業のカウンセラー業務により発生する所得は、事業所得に該当することになります。所得税の計算をする場合、「損益通算」という計算方法があります。

 損益通算とは、所得金額の計算上生じた損失のうち、一定のものについて一定の順序に従って所得金額から控除できることをいいます。

 損益通算の対象になるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4つです。A子さんのケースで「損益通算」について考えてみましょう。

 カウンセラーの業務を6月から始めてそれ以降、収入が毎月1万円だったとします。そして、HPの費用として初期費用30万円、以降、毎月メンテナンス料として、1万円を支払い、HP以外の費用はなかったとします。

売上金額:1万円×7カ月=7万円
必要経費:30万円+1万円×7カ月=37万円
利益:7万円-37万円=-30万円

 つまり、副業の事業所得は30万円の赤字になりました。

 A子さんが、カウンセラーの仕事だけをしているのであれば、その年の確定申告は不要となります。けれども、A子さんは事業所得以外に給与所得があるので、確定申告をすることによって、給与所得の金額から事業所得の金額を差し引きすることができるというのが「損益通算」なのです。

 給与所得の金額から30万円を差し引いて所得税の計算をし直し、お給料から源泉徴収されていた所得税が還付されることになるのです。

 この場合、A子さんは趣味でカウンセリングを行っているのではなく、事業として行っているのだということを明確にさせるために「個人事業の開業届出書」を提出することをお勧めします。

 副業を申告することで、還付金を手にすることができると知ったからといって、毎年そのような申告を続けていると、サラリーマンであっても、税務調査の対象に上がってくることになるかもしれません。

 副業の際の必要経費の判断基準は、その出費が売り上げを得るために直接関係しているかどうかです。経費になるのか経費にならないのか。ご自身の良心に照らして判断することが大切だと思います。

飯田真弓(いいだ・まゆみ) 税理士。産業カウンセラー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生。26年間国税調査官として7カ所の税務署でのべ700件に及ぶ税務調査に従事。在職中に心理学を学び認定心理士の資格を取得。2008年に退職し12年(社)日本マインドヘルス協会(http://jamha.org/)を設立し代表理事に。税務調査とメンタルヘルス研修という切り口で、企業が活性化する研修を全国で開催し好評を得ている。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』(ともに日本経済新聞出版社)。

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著者 : 飯田 真弓
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