夏本番を迎え、休日のコーディネートがよりラフになってきた。短パンを着用する機会が増え、それに伴い足元にサンダルを合わせるという人も多いだろう。そこで、今夏の注目サンダルを3回にわたって紹介していく。前回の「大人の街履きサンダル、完売続出のグルカとは?」に続き、第2回となる今回のテーマは、和服にも洋服にもマッチする和テイストのサンダルだ。
スタイルの多様化で和テイストが見直される
花火大会に盆踊りと、祭りは夏の風物詩。せっかく女性が浴衣を着ているのに、隣の男性が洋服だとバランスが悪い。気分を盛り上げるためにも、そこはぜひ和服で参加したいところ。そうなると足元はげたや雪駄といった和の履物を合わせることになるが、1年に1~2回しか履かないためなかなか手を出しづらい。
そのため、和服にも洋服にも合う和テイストのサンダルがにわかに人気を集めているという。サンダルの販売に力を入れる三越伊勢丹の紳士靴バイヤー・田畑智康氏は、「浴衣や着物といった季節やスタイルを楽しむ傾向が強くなってきており、その中で和テイストのかっこいいサンダルを探している方が増えている」と話す。
和テイストのサンダルとは、一体どんなものなのか?
例えば、形状としては雪駄やげたをモチーフとしながら、レザーやラバーといった素材使いのものが挙げられる。これらは黒やネイビーといった都会的なカラーリングのものが多く、洋服にも難なく合わせられる。逆に洋風のサンダルでも、木や革などの天然素材を用いたものであれば、どこか和の雰囲気が感じられるため浴衣にも合う。
この汎用性の高さから、今夏は人気が急上昇。三越伊勢丹では「販売実績としては昨年比150%程度」(田畑氏)と売れ行き好調だという。
「サンダルに合わせるスタイルが多様化していることも人気の一因だと考えます。以前はサンダル=ショートパンツやビーチスタイルに限定されていましたが、昨年からデニムスタイルやドレスアップスタイル、ストリートスタイルなど幅広い着こなしに合わせる方が増えてきました。そのなかで、和=ダサい・やぼったいというイメージがなくなり、洋のスタイルにあえて組み込むことがスタイルとして認知されている」(田畑氏)
そこで今回は、和サンダルの注目作を見ていこう。和テイストなだけあって、いずれも日本人の体形や雰囲気と相性がいいのも魅力。これらの細部を見ていくことで、今回取り上げたブランド以外の和サンダル選びでも役立つ条件が見えてくるはずだ。
オール牛革で仕立てたブラックの雪駄
日本の伝統的な履物のひとつ、雪駄をモダンに仕立てた逸品。雪駄なので和服にマッチすることは言うに及ばず、オールレザー&オールブラックのため洋服とも相性抜群だ。
これは1917年創業の老舗着物専門店「やまと」が手がけるショップ、Y.&SONS(ワイアンドサンズ)のオリジナル商品。浅草の老舗メーカーと共同製作し、職人の手によって丁寧に作られているため、オール牛革の見た目のかっこよさはもちろん履き心地も文句なし。
Y.&SONSは“メンズきものテーラー”を標榜し、着物に合わせるアイテムとして、ノルウェーブランドのコートをセレクトしたり、ドメスティックブランドとコラボレーションしたオリジナルコートを製作。そのほか着物とシューズを合わせたスタイリングを提案するなど、これまでにない洋装の発想から生まれた自由な和服の着こなしを展開する気鋭ショップだ。
「世間を見回すと、私どもが履いてみたいな、と思う雪駄はさほど多くはありません。であれば“作るしかない!”と、見た目のかっこよさにこだわって製作しました」(やまと Y.&SONS担当)
この雪駄はショップオープン以来の定番商品として、30~50代の幅広い層から好評を博しているという。和服にも洋服にも合うので夏の間ずっと履ける。しかも雪駄というところが、また粋に感じる。
草履をモダナイズした新感覚ビーチサンダル
1897年創業、京都・祇園の老舗履物匠「ない藤」が手がけるJoJo(ジョジョ)のサンダルは革新的。日本伝統の草履を原点に、見た目もフォルムも新感覚のビーチサンダルとして誕生した。
特に注目したいのは素材へのこだわり。ゴム底にはSRBという強度と弾力性に優れた日本製のゴムを使用し、足裏の当たるフットベッドには独自開発のコルクを採用している。そして鼻緒には水着などにも用いられる伸縮性のある柔らかなファブリックを取り入れ、長時間履いても疲れにくいフィット感を実現。
また、足の親指と人さし指が当たる前つぼには、ほ乳瓶の乳首にも使われる特殊ゴムを使用。柔らかな感触で、足先の角度に合わせて変形するため足の指が痛くなりにくい。素材を吟味することで、草履やビーチサンダルの悩みのタネである“足の痛み”を徹底的に排除しているのが魅力だ。
京都の老舗が作ったビーチサンダルは、デザインと履き心地の両面で高く評価され、伊勢丹をはじめとする国内の人気セレクトショップから、海外の有名店でも展開されている。
「JoJoはデザインが個性的というのもありますが、和の雰囲気を洋のスタイルにうまく変身させている点が評価されているように思います」(三越伊勢丹 田畑氏)
三越伊勢丹では、このサンダルの売り上げは前年比200パーセントで推移しているという。このことからも和テイストのサンダルが今年ブレイクしていることがうかがえる。
着物専門店も取り扱う最高峰のレザーサンダル
“サンダル界のロールスロイス”と称賛される、履き心地もデザインもハイレベルなユッタ・ニューマンのレザーサンダル。1994年、ドイツ人女性のユッタ・ニューマンがニューヨークで創業。ハンドメイドによるサンダルやバッグなどの革製品は世界中に多くのファンを持つ。
最大の特徴は、アーチサポートと呼ばれる土踏まずの盛り上がり。熟練職人の高度な技術によって形成されているため、長期間履いてもアーチが沈むことがないという。レザーサンダルは履けば履くほど革が足に馴染み、フィットしていくのが持ち味だが、アーチは周囲の革に影響されることなく形を保つのだとか。
このアーチサポートにより足が痛くなりにくく、また抜群のフィッティングを実現する。フラットな形状のサンダルと比べて、足を上げた際にサンダルが離れないので非常に歩きやすい。
そして天然皮革によるクラシカルなデザインは、和服に合わせてもなんら違和感がない。前述の着物専門店、Y.&SONSでも取り扱いがあるといえば、和服との相性のよさがわかるだろう。
「ユッタ・ニューマンのサンダルは、足袋を履けばまるで雪駄を履いているかのようです。夏は浴衣にも合わせられます。弊店デザイナーが自らニューヨークに出向き、ユッタさんに取り扱わせていただけないか交渉しました」(やまと Y.&SONS担当)
和装のプロがほれ込んだレザーサンダル。Y.&SONSでは購入者は30代の男性が多いとのことから、和服にも洋服にも合わせて用いられていることが予想できる。
履き心地にも優れた名品は流行に左右されない
以上、人気が高い和テイストのサンダル3足を紹介した。Y.&SONSとJoJoは、いずれも日本の老舗和装店が手がける逸品。雪駄や草履といった日本伝統の履物をモチーフとしながら、機能を追求することで生まれた洋服にも合うデザインだ。またユッタ・ニューマンのレザーサンダルも、機能美から漂う和の雰囲気が魅力。いずれも見た目だけを和洋折衷にしたわけではなく、機能を高めることで幅広いスタイルに合うデザインに仕上がったものと思われる。
これらのサンダルは履き心地も抜群。そして和服にも洋服にもマッチするため汎用性が高い。はやり廃りがなく、普段履きから夏祭りまで網羅できる和テイストのサンダルは買って損なし!
前編 大人の街履きサンダル、完売続出のグルカとは?
中編 浴衣にもジャケットにも合う和サンダルが人気上昇中
後編 コスパ抜群の大本命 秋まで履ける“スポサン”を狙え
(ライター 津田昌宏)