マネー研究所

もうかる家計のつくり方

貯蓄はあっても油断禁物 年の差夫婦の老後リスク 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/7/27

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 「マイホームを買うなら、頭金をできるだけたくさん入れてローンを少なくし、早く返すべきですよね!」。こう言いながら威勢よく相談にこられたのは会社員のKさん(51)と専業主婦の奥さん(40)ご夫婦です。

 定年まで10年を切ったので、今のうちにマイホームが欲しいとのこと。貯蓄3000万円のうち2500万円ほどを頭金にし、借入額を少なくして早期返済を目指したいとおっしゃいます。貯蓄3000万円の大半は独身時代からためていたお金で、退職金も出る(推測1600万円ほど)ので、老後資金も問題ないだろうと見込んでいるようです。

 家族はご夫婦と2歳の娘の3人暮らしです。おふたりは結婚9年目ですが、ようやくお子さんに恵まれたということで、子どもと暮らす生活環境を整えたいという気持ちが強いようです。奥さんはできればもうひとり、お子さんをつくりたいとも考えています。

 住宅購入の際に頭金をたくさん入れ、ローン負担を減らすという考え方は正論です。でもKさん夫婦の家計にとっては、中長期的にかなりバランスを悪化させる行動だといえます。

 小さなお子さんがいて、さらにもうひとりと考えているのであれば、いくら収入が高く貯蓄があるといっても、老後貧乏まっしぐらの可能性があります。なぜならKさんが定年退職を迎えるころ、お子さんは小学生。その後、どんどん教育費がかかるからです。

 私がライフプラン表を作成したところ、特に不安に感じたのはお子さんの教育費のことでした。この予定でいくと教育資金はショートしてしまう見込みなのです。

 しかも、奥さんはKさんより10歳以上若いので、老後期間は通常の家庭よりも長くなることが予想され、資金もその分多く必要になります。退職金は1600万円の見込みでKさん夫婦は楽観しているようですが、非常に不安が残りました。

 Kさん夫婦には理想と現実の違いを意識していただき、頭金の額を減らす、つまり貯蓄をある程度手元に残しておくことを検討しました。そして貯蓄にいそしみ、教育資金と老後資金のバランスをみながら繰り上げ返済で住宅ローンの早期完済を目指すという方針です。

 そのためには家計状況を整えることが必須です。56万円もの収入がある3人暮らしのご家庭なので、黒字ではありましたが、支出は膨らんでいて節約はまだまだ可能な家計です。

 まずは楽に削減できるところから支出を見直しました。生命保険は様々な保障が入った主契約に多くの特約がついた総合保障のアカウント型保険でしたので、必要な保障について再考しました。保険の3要素である医療・死亡・貯蓄のうち「医療」と「死亡」に重点をおく内容のものに入り直し、支出を減らしました。通信費は迷わず格安スマホを取り入れ、削減しました。

 Kさんは年下の奥さんがとてもかわいいようで、洋服代や化粧品代などが高いことを容認していました。ここも抑え、奥さんが毎月もらっている小遣いのなかでやりくりすることにし、被服費、美容費、日用品費等を削減しました。

 食費は財布の中身の減り具合で使いすぎかどうか判断しているそうで、比較的抑えられています。それでももう少し節約を心がけたいという奥さんの努力で、減らしました。

 おふたりとも病気はないと話していましたが、医療費が高額です。聞けば、ふたりめのお子さんを望んでいるので不妊治療中とのこと。今までは自治体の助成金を利用しながら治療を受けていましたが、40歳を過ぎると助成金を受けられる回数が減り、43歳になると助成金を受けることすらできなくなるため、治療を継続するか否か考えているというお話でした。

 時間をかけてご夫婦で話し合い、後々後悔しないように最低限の治療のみ続け、あとは自然に任せることにしました。

 最後に住居費です。今まで18万5000円の賃貸に住んでいましたが、マイホーム購入にあたり頭金を約1500万円いれ、ボーナス返済なしでローンを組むと、毎月の返済は11万3000円になりました。ローンを抱えるリスクはありますが、支出削減できたことで貯蓄はしやすくなりました。支出削減額は合計16万1000円。今までの黒字分と合わせ、19万7000円を貯蓄に回せる家計に変わりました。

 現状は非常に良好な状態ですが、将来的な収入については不安が残ります。そこで、奥さんの発案で子どもが幼稚園に入るまでに資格を取り、いずれは仕事に就くという計画を立てました。実現するとKさんが定年後再就職などして収入が下がっても、貯蓄を保ちながら生活していけるかもしれません。老後の見通しはかなり明るくなります。

 Kさんご夫婦のように年齢差のあるご夫婦によく出会います。お伝えしたいのは、経済的に安定しているからと子どもや住宅にお金をかけすぎると、将来、自分たちの首が締まってしまうということ。そして、教育費がかかるころに収入が途絶える可能性が高いということ。

 今はよくても、将来的にどうなるかを見越し、夫婦で力を合わせていってほしいと思います。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は8月10日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


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