
「ゴミ箱にゴミを投げ入れる時、遠くより近くの箱の方が入る確率は高いですよね。投資も同じ。短期の方がもうけを狙いやすい」と話すメガヴィンさん(ハンドルネーム・40歳)は10年間のデイトレードで4億円の資産を築いてきた。「自分には数カ月先の経済状況なんて見通せません。翌朝前場までの予測が精一杯」と言う。
メガヴィンさんの取引は、大抵は数分間。持ち越す場合でも1泊2日で決着をつける。企業研究などは一切しない。とにかく勢いのある銘柄に飛び乗り、動きがあるうちに損益を確定する。
株式投資を始めたのは10年前、元手100万円のスタートだった。もちろん初めは負け続き。だが、株取引交流サイトの集まりに参加し、投資仲間からの助言を参考に取引を続けているうち、自分なりの勝ちパターンが出来てきた。この後、折よくアベノミクス相場が到来。2013年には年間利益が3億円を突破。14年には資産が4億円まで拡大した。
特に13年は、前年末から外国人投資家の買い越しが目立つ月が続いていたことから、「今年は大チャンスの年」と強気に攻めたことが功を奏したという。
メガヴィンさんのデイトレ手法は至ってシンプルだ。勝負をかける時間帯は引け間際の14時30分から15時まで、そして翌日寄り付き後の9時から10時手前。この時間帯に、ギャップダウン(GD)[注1]した銘柄、ギャップアップ(GU)[注2]しそうな銘柄の値動きに乗るのだ。
[注2]ギャップアップ(GU):当日の始値が、前日の終値に比べてかなり高い水準で寄り付く
GD銘柄の反転を狙う
GD銘柄ではどう攻めるのか。日本株は前日の米国株市場の動きに連動しやすい。米国株が大きく下げると翌日の東京市場も全体として下げて始まり、多くの銘柄が前日終値から大きくGDした状態で寄り付く。だが、本来上昇の勢いがある銘柄は、一時的に米国株に連れ安しても、前日終値付近まではすぐに値を戻すことが多い。
そこで、GDして寄った有力銘柄を拾い、前日の終値に達したところで売って利益を確定するのだ。
寄った後に下げた場合はナンピンで買い下がる。追加で買った分は少しでも利益が出たら利確しつつ、9時50分まで上昇狙いでトレードを続け、10時前には後追いせず損切りする(下図)。これは10時頃には上昇の勢いが消えてしまうことが多いためだ。
狙い目は株価が右肩上がりで出来高が多く、勢いのある新興銘柄。最近ではアカツキ(東マ・3932)や、アキュセラ・インク(東マ・4589)などで勝負している。勢いのない銘柄や、右肩下がりの銘柄はGD後、そのまま下がり続けることが多いので相手にしない。
GU狙いの戦略は1泊2日の持ち越しの取引というスタイル。勢いがあり、14時30分頃から引けにかけて急上昇したもの、チャートに大きな上ひげを付けた陽線が出ているなどの銘柄を、引け間際に仕込む。勢いは翌日まで続くと読み、翌朝、GUで寄ったところで上昇分を取るのだ。予想通りならすぐ利確。下がった場合も戦略(1)と同様、9時50分までは勝負する(下図)。
信用売り銘柄は使わず
10時以降は基本的に取引しない。日中ザラ場は機関投資家などプロの主戦場。素人の自分が出て行ってもカモになるだけだと考えている。銘柄選びに際しては、信用売りができる貸借銘柄も避けている。貸借銘柄は、信用売りの買い戻しで株価が上がることがあるので、純粋な買い需要と見分けが付かないからだ。
投資を始めてすぐにリーマン・ショックに巻き込まれ、相場急落の怖さも痛感している。どんなに有望と思える銘柄でも、資産の1割以上を集中させないなど自分なりのリスク管理をしながら利益を積み上げてきた。もちろん1日で1000万円以上の損を出すような失敗もしてきているが、「勝って驕(おご)らず、負けて怯(ひる)まず」を座右の銘とし、いかなる状況でも平常心を保つように努力している。
(ライター 福島由恵)