仕事はもっと頑張れる 結婚で守りに入りたくない
キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論
こんにちは。ライターの大宮です。人と人の関係には相性が大事ですよね。ただし、相性を言語化することはできません。憧れの職場で働いてみたら周囲の人とのソリがまったく合わなかったり、好きなタイプの人とお付き合いしてみたら3日目には別れたくなったり。ちょっと手痛い体験を重ねてこそ、「どんな人が自分に合うのか。お互いを支え合い高め合うことができる人は誰なのか」というテーマに対する答えを体で知ることができます。
僕の親しい女友だちによれば、相性を言葉にすることは確かに難しいけれど、年齢をある程度重ねたら「どんな分野の相性を重視するのか」はわかるのだそうです。ちなみに彼女は、交際相手の男性とは食・笑い・体の相性が大事とのこと。一緒に笑って、おいしいものを楽しめて、仲良く寝ることができる人、ですね。デートを重ねてこの3つの相性が良いことを確かめたら、お付き合いに発展するそうです。
外資系メーカーに勤務する桑原章子さん(仮名、37歳)は、恋愛や結婚よりも仕事を優先してきた女性です(前回記事はこちら)。だからといって、いわゆるカタブツではありません。飲み食い好きで社交的な性格の持ち主です。僕とも都内のある酒場で知り合いました。
「食」の相性から意気投合
章子さんは30歳のときに大企業から転職して現在の仕事をつかみ取りました。気ままな一人暮らしも愛しています。一方では、出産年齢を意識して結婚に焦りを感じ始めています。ただし、会話のキャッチボールができない人とは恋愛できません。章子さんは「会話の相性」を重視しているのですね。
今年、そんな章子さんに久しぶりの恋人ができました。きっかけは、僕との出会いの場でもある酒場で知り合った女性が開いてくれた合コンです。お相手の慎吾さん(仮名、37歳)は、その場で連絡先を交換した章子さんにすぐにアプローチを開始しました。
「何を食べたい? どんな店に行きたい? と私の希望を聞いてくれて、何軒もお店リストを挙げてくれました。飲み食いが大好きな人なので、『これはおいしいね』とか言いながら楽しく過ごせます。部屋は汚いけれど、食べ方はキレイなのも好印象でした」
章子さんは、会話の次ぐらいに食の相性を重視しているのだと思います。ならば、職場や合コン、結婚相談所ではなく、酒場で相手を見つけるのもありですね。良い店ならば、遊び目的の既婚者などからはスタッフがそれとなく守ってくれます。章子さんの場合は、男性よりも女性のお客さんと仲良くなり、その「飲み食い好き」人脈で慎吾さんと出会うことができました。
「親にはまだ話していません。結婚を期待されると困るので……。彼は稼ぎの悪い会社員ですよ。私と付き合い始めたのがうれしすぎて会社で言いふらしているらしいです。ホント、バカな男ですよね!」
照れ隠しもあるのだとは思いますが、章子さんは慎吾さんにあれこれ不満があるようです。可愛げがあるのはいいけれど、仕事や社会的な面でもっと尊敬したいのだと思います。
章子さんの自己評価は決して高くはありませんが、客観的に見ると明らかに「バリキャリ」です。超大手企業の総合職として鍛えられ、30歳のときに現在の外資系メーカーに引き抜かれた章子さん。35歳のときに管理職に昇進し、営業のスペシャリストとしてのキャリアをばく進しています。
「中途の女性社員でも差別されることはない職場です。地方転勤も含めて、男性社員と同じ経験をさせてもらっています。でも、外資系の日本支社なので(担当分野である)日本市場しか見られないのはちょっと不安材料ですね。将来のことを考えると、もう一度ぐらいは転職するかもしれません」
結婚して守りに入りたくない
これほどキャリア志向の人は、有名大卒の男性でも多くはありません。現在の生活を優先して、地方転勤や海外駐在を断る人もいるぐらいです。好奇心旺盛で根性もある章子さんは「グローバルエリート」を目指すのにふさわしいと思いますが、相手の男性にも同じぐらいの意識を求める必要はありません。相手もキャリア志向の場合、住む場所などで利害が衝突してしまう可能性もあります。
「私はまだ苦労ができる年齢です。もっともっといろんなことを経験したい。遊びからでも吸収できますが、様々なことを一番効率よく与えてくれるのが仕事だと思うんです。結婚して守りに入りたくはありません」
章子さん、その不安と展望を慎吾さんにも率直に話してみたらどうでしょうか。僕の予想では、慎吾さんは喜んで受け入れてくれる気がします。仕事を通じて貪欲に人生を楽しもうとする章子さんを尊敬し、「オレもオレなりにがんばろう」と奮起するかもしれません。案ずるより産むがやすし、ですよ!(来週は新たなキャリア女子のラブストーリーをお届けします)
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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