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5000億円超えのライブエンタ市場 急成長の舞台裏

日経エンタテインメント!

2016/8/25

 音楽コンサートや舞台など、演者と観客が同じ空間で生の体験を共有できる「ライブ・エンタテインメント」が、日本で今、活況を呈している。2000年からライブ・エンタテインメントの市場規模調査を行うぴあ総研の発表によると、15年の市場規模は速報値で過去最高の5000億円を突破。4年連続で記録を更新すると共に、調査開始から16年で市場が約2倍に拡大していることが分かった。

ぴあ総研調べ「2015ライブ・エンタテインメント白書」より(15年のグラフまで。16年はイメージ)。国内で開催されるライブ・エンタテインメント=音楽・ステージの合計のうち、一般に告知、かつチケット販売を行う興行を対象に集計

 好調を支える一番の要因は「音楽」。なかでも、ジャニーズや女性アイドルを中心とする国内のポップス市場のにぎわいが大きな役割を果たしている。ぴあ総研の主任研究員・笹井裕子氏によると「顔ぶれはあまり変わりませんが、大きな会場での開催が増え、チケット単価も上がり、1公演あたりの売り上げや動員が拡大している」と言う。さらに「ツアーの規模も大きくなり、そこにファンが付いてきている。特に11年の震災以降上昇しており、ファン同士が共感したい、リアルを共有したいという傾向が見て取れる」と分析する。

 このほか、音楽関連のフェスやイベントのジャンルの増加も、底上げに一役買っている。特に目立つのが「アニメ・声優関連のライブ」。ベテランアーティストの周年記念コンサートも盛況だ。一方、来日アーティストのシェアは大きくないというが、「依然K‐POPは強いですね。コアファンに支えられ、大型公演を展開できるアーティストが複数いるので、市場的に存在感があります」と続けた。

 近年ささやかれる首都圏の会場不足については、意外な見解が。「会場問題は先手を打っていたので、動員に関しては懸念されていたほどの影響はなさそう」とのこと。公演が集中する休日以外の開催や、東京都郊外の立川、多摩近辺の会場、東京都新木場の若洲公園、いきものがかりがライブをする神奈川県厚木の荻野運動公園など、これまで使われていなかったホールや土地を活用することで、数千人~数万人規模の動員をカバーできているという。

 パッケージ売り上げが不振の今、「ライブが音楽産業の中心的ビジネスモデルへと移行しつつある」(笹井氏)とされ、アーティストにもライブに重点を置く動きが見られることから、音楽市場はさらなる発展が見込まれる。

■芸能事務所も注力する舞台

 ライブ・エンタテインメントのもうひとつの市場である「舞台」は、ミュージカルと演劇、歌舞伎の3ジャンルで市場の7割強を占め、こちらも市場は広がっている。なかでも目立つのは、劇団四季、宝塚歌劇、東宝ミュージカルという、ミュージカル界の3強だ。

 3者共に国内有数の広さと設備の専用劇場を持ち、定期的に作品を供給できること、長期公演が可能であることが強み。さらに、近年の動きについて東宝ミュージカルの企画を担当する東宝演劇部の遠藤学企画室長は、「12年の映画『レ・ミゼラブル』のヒットにより、それまで女性が大半を占めていた客席に、男性が増えたことが大きな変化。また今年は、『1789 ‐バスティーユの恋人たち‐』の大ヒットで若者層への裾野の広がりが実感できた」と、ファン層の拡大を口にする。さらに、作り手や出演者についても「ジャニーズ事務所と強力なタッグを組む作品が、帝劇の柱のひとつ。また、舞台制作に力を入れる芸能事務所が増え、共催などによりジャンルの活性化が進んでいます。その流れのなか、テレビや映画の俳優さんやクリエイターさんで舞台に興味を持つ方が増えていると感じています」(遠藤氏)と言う。

『ドラゴンクエストライブスペクタクルツアー』8月26~31日に横浜アリーナで開催。(c)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

 その言葉を裏付けるかのようにアミューズでは2016年4月、「舞台制作部」を正式に立ち上げた。部長の小見太佳子氏は、「舞台制作と俳優マネジメントの両方をやっているアミューズとしては、演劇の人口を増やしたい。役者兼演出の岸谷五朗率いる地球ゴージャス()をはじめ、エンタテインメントをキーワードに、キャスティングも含めて“演劇の入門”たりうる舞台作りを意識しています」と、舞台制作に対する強い意欲を示す。

 ほか舞台では、オリジナル作品で数万人規模の動員が見込める劇団☆新感線の奮闘も目立つ。増えているのは「2.5次元ミュージカル関連作品」(前出、笹井氏)で、今後どのように市場に影響を及ぼしていくのか注視したい。

 また、ぴあ総研の調査外では、参加型のイベントも勢いを見せる。海外発のイベントや、アニメの「応援上映」、プロスポーツでもファンイベントにより集客を伸ばしている。

※岸谷五朗・寺脇康文が主催する演劇ユニット。1995年VOL.1を上演。岸谷が全ての作品の演出を担当。三浦春馬はVol.10「星の大地に降る涙」(09年)で初舞台を踏んだ。

(ライター 山内涼子)

[日経エンタテインメント! 2016年8月号の記事を再構成]

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