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若手リーダーに贈る教科書

経営学で「人生をマネジメント」キャリア設計を考える 平井孝志 著 「売れる『じぶん』を作る」

2016/7/23

日本国内で1日に刊行される新刊書籍は約300冊にのぼる。書籍の洪水の中で、「読む価値がある本」は何か。書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介する。今回は平井孝志さんの「売れる『じぶん』を作る 経営学の視点で考えるあなたのキャリア」。経営を学ぶことは、自分の人生のマネジメントにも生かせると教えてくれる一冊だ。
平井孝志さん

本書の著者、平井孝志さんは東京大学大学院を修了後、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールMBA(経営学修士)を取得。米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー、米デル、米スターバックスなどを経て、現在はドイツを拠点とするコンサルティング会社、ローランド・ベルガーの執行役員シニアパートナーとして活躍しています。

■企業の経営は、人生を考えることにつながる

「経営学」と聞いた時に、それを自分のキャリアに直接結び付ける人は、少ないのではないでしょうか。著者の平井さんは数々の企業を仕事で見ていく中で、「企業の経営と人生の経営はよく似ているな」と思うようになりました。「経営戦略やマーケティング戦略の考えを活用しながら、自分のキャリア設計を考えられる本を作りたい」という思いで書いたのが本書です。

経営学では、よく企業のビジョンやミッションの重要性について議論をします。特にエクセレント・カンパニーは、必ずといっていいほどBHAG(Big Hairy Audacious Goal)という社運を賭けた大胆な目標を持っているといわれています。経営学でいうビジョンやミッションには、「正しい」「間違っている」という判断軸は存在しません。(略)経営者自らが強く打ち立てるものです。
個人にもきっと同じことがいえるでしょう。人生の主役は自分自身なのだから、自分自身を見つめ直し、自ら「あるべき姿」を決める覚悟と勇気が必要なのです。

(15ページ 第1章 「君は何をしたいのか」より)

■夢を「なかったこと」にしないために

小学生や中学生のころ、「ノーベル賞をもらいたい」「総理大臣になりたい」といった大きな夢を持っていませんでしたか。しかし、大人になって現実の世界でもまれるうちに、そうした夢はいつのまにかどこかへいってしまったのではないでしょうか。平井さんは、「青春時代に比べ、世の中のことがよくわかっている今だからこそ、より大きな夢、より本質的な夢をもう一度描けると考えたほうがよい」と指摘します。

確かに企業に比べると、個人の「あるべき姿」は日常の忙しさの中で流されてしまっています。何のために働いているのか、自分がどこに向かっているのか、分からなくなることはありませんか。そんなときは、立ち止まって、自分の人生における戦略(ビジョン)を練り直してみてもよいかもしれません。

「とはいえ、どう戦略を練ったらよいのかわからない」という方にお勧めするのが「経営学」です。

経営学は時々、新しいものを何も生み出していないと批判されることがある。新しいなにかを生み出しているのは、経営の現場、経営者であり、経営学は「後付け」の理屈であるというような批判である。もしそうだとしても経営学には価値があると言えるだろう。なぜならその新しいものを「形」(フレームワークや実践のためのプロセスやヒント)に落とし込んで、世の中の富の拡大再生産に貢献しているからである。「形」は知の集大成と言ってもよいだろう。
(192ページ 第5章 「行動を続けるためのヒント」より)

■「形」を使うことで時間を短縮

自分でゼロから考えるのではなく、既に多くの先人が議論し、考え抜いてきた「形」を使用することで、時間の短縮をはかることができます。例えば、「バランス・スコアカード」という考え方が経営学にあります。

バランス・スコアカードとは、企業の戦略や、その戦略の実行状況を総合的に測定する手法として開発されました。そこでは大きく「財務」「顧客」「社内ビジネス・プロセス」「学習と成長」という四つのバランスの取れた視点を大切にします。(44ページ 第1章「君は何をしたいのか」より)

この考え方を、例えば恋愛に当てはめてみましょう。「パートナーに振られた」といった現象があったときに、その背景に実は「経済力の不安視」「パートナーのことを考えた行動ができていなかった」「度重なる遅刻などの素行の問題」「努力をしないことに対し、成長性を感じられない」などの理由があるかもしれません。どれも、視点を1つに固定していては、得られなかったものです。

平井さんは「様々な現象に対する見方や解釈の切り口を豊富に提供してくれること」が経営学を学ぶ魅力であると語ります。結果として、それは同じ過ちを繰り返さずに、新たなチャンスを発見するためのヒントになってくれます。「経営」のおもしろさを身近に感じることができるようになる一冊です。

◇   ◇   ◇

◆担当編集者からひとこと 細谷和彦
自分のキャリア設計を考えるのと同時に、経営戦略やマーケティングの知識を学ぼう――。そんな「欲張り」な考えから本書は生まれました。
自己分析をするとき、「自分は何をしたいのか」「自分の強みは何か」って考えますよね。一方、会社の経営者は「うちの会社は何を中心にやっていくのか」「うちの会社の強みは」と考えます。そう、個人の人生設計と、会社経営は相当似たところがあるのです。
著者自身、現在コンサルタントにして、複数の会社で働いてきた経験の持ち主です。ビジネススキルについてはエキスパートであるのはもちろん、他の人以上にキャリアについて考えてきたのです。
経営の知識まで知っているとなると、会社で一目置かれること間違いなし。さあ、あなたも「一挙両得」を目指しましょう。

(雨宮百子)

「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。

売れる「じぶん」を作る

著者 : 平井 孝志
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)

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