どうなってるの?民泊解禁 旅館との線引き難しく稼働日数の制限で対応へ

2016/7/15

オリパラSelect

マンションの一室を利用して観光客を泊める(大阪市)
マンションの一室を利用して観光客を泊める(大阪市)

一般家庭が外国人観光客などを有料で宿泊させる「民泊」。東京五輪・パラリンピックで必要性が高まるとみられています。半面、「日数制限」や「自治体が独自に禁止」などがニュースになるなど、行方がはっきりしません。何が問題なのか。解禁されたらどんな影響があるのか、石鍋仁美編集委員に聞きました。

■官邸は解禁したいが旅館業界が抵抗

消費太郎 食品メーカーの新入社員。22歳

消費太郎さん そもそも民泊ってどういうものですか。

石鍋さん 自宅の空き部屋や使っていない別荘などに旅行者を泊める行為です。インターネットで仲介するサイトが誕生し、まず欧米で普及した後、日本にも上陸しました。無料で泊まるなら「カウチサーフィン」、有料なら「エアビーアンドビー」が大手ですね。

無料なら旅行好きの人たち同士の助け合いであり、本来の意味でのシェア(共有)行為で、特に問題はなかったのです。しかし有料宿泊の仲介が上陸し、稼働率が伸びない既存の旅館業界が反発を強めました。お金を取って未知の人を泊めるのは営業行為であり、旅館業法に違反すると声を上げたのです。


太郎さん 違法行為なのに普及しているのですか。

石鍋さん 本屋さんには民泊でのもうけ方を指南する本が並び、ネットには体験記があふれています。民泊の規制緩和論議の難しさもそこにあります。すでに存在する数万件の民泊の宿をどううまく位置づけるか。それとも全部摘発するのか。頭の痛い問題です。

現在政府は民泊に関する新法の準備をしています。「民泊で使う施設は旅館ではなく一般の住居。だから旅館業法の対象外」という論理で民泊を認める方針のようですね。旅館業界からの反対に対しては、海外の例のように、年間の稼働日数を制限することで対応しようとしています。

外国人との交流を生かし街づくりも

太郎さん 日数を制限する意味は何ですか。

石鍋さん 現在、外国人観光客の増加で、新規に建設したマンションでも、賃貸するより民泊で回した方がもうかることも多いんです。個人宅のホームステイ型民泊ではなく、純然たるビジネス目的での民泊に歯止めをかけたいんですね。

ただし海外の例では、年間稼働日数の監視は難しいようです。個人住宅を活用した海外交流なのか、投資目的かという線引きも、現実にはなかなかはっきりさせづらいでしょう。

多国間の旅行客勧誘合戦との認識で対応を

太郎さん 民泊の出発点からだんだん離れて、ギスギスしていくようですね。

石鍋さん そこが残念なんです。民泊の一番の価値は新ビジネスの興隆ではないんです。子供が巣立った空き部屋を利用し、老夫婦が外国人と交流しながら生活費の一部を稼いだり、泊まった外国人が地域の子供と交流したり。廃校の校舎やさびれた旅館を地域のNPOなどと協力して復活させることもできます。エアビー社の例で、受け入れ側にクリエーターが多いのも「安さ」より「面白さ」が肝だからでしょう。

外国人だけではありません。関西のある街では、入院患者の家族が泊まるために空き部屋を民泊として提供している人がいます。周辺に病院は多いのにホテルが少なく、困っている人が多かったので、感謝されているそうです。

太郎さん この問題はどう落ち着くのでしょうか。

石鍋さん 設備や管理システムなどで使い勝手のよくないルールができ、安全を理由にしゃくし定規な摘発が行われれば、志のある個人は撤退し、ビジネスとしても成立しなくなる。一方でアジアの人が不動産を取得、仲介システムを運営し、同国人をこっそり泊める完全なヤミ民泊は残る。これが最悪の予想です。

また、規制緩和論議に時間を費やす間に「日本は旅をしづらい国だ」という評判が定着、インバウンドブームが去るかもしれません。国際観光市場では、多くの国が勧誘合戦を展開し、サービスを競っているのですから。政府や自治体の人たちには、そうした認識を持ってほしいですね。

「役所任せ」脱する契機に

分譲マンションで、管理規約に「民泊禁止」をうたう物件が増えているそうです。一方で、一定数の部屋やゲストルームを民泊に回し、修繕費に充てるマンションがあってもいいと提案する不動産業の専門家もいます。

外国人が共同住宅なり住宅街なりに出入りすることを徹底排除するか、おカネのためと我慢するか、積極的に交流し楽しみや教育効果など付加価値として生かすか。コミュニティーの自治や運営にも、民泊問題は一石を投じているといえます。

もう一つ、民泊が提起する問題は「安全は誰が保障するか」という点です。役所が許認可権で一元的に根元からコントロールするのか。現在の民泊仲介サイトのように、ネット上の相互評価でよしとするのか。

民泊問題は、単に既存業界と新興勢力のパイの奪い合いということではなく、何事も「お上」任せという日本の社会風土が大きく変わる契機になるかもしれません。

[日経MJ2016年7月15日付]