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ロック気分のスタイルをエレガントに着こなす

宮田理江のファッションラボ

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NIKKEI STYLE

夏のうちから早めの秋支度を始めるのは、賢いおしゃれ上手のたしなみ。夏が終わってからあわててトレンドを追いかけるのではなく、流行を先取りして夏のうちから着こなしを練り上げていくわけです。2016-17年秋冬のファッションでは、ロック音楽のムードが色濃くなりそう。70年代ブームを追い風に、当時のグラマラスなロックスター気分を乗せたような装いが提案されています。フランスのビッグメゾン「SAINT LAURENT(サンローラン)」が発表した2016年プレフォールコレクションでは、ロックテイストを大人っぽく上品にまとう着こなしが披露されました。

「ロック」と聞くと、ヘビーメタルやパンクのハードな雰囲気を思い浮かべる人も多いでしょうが、今のロックテイストはもっとエレガント寄りです。シックな色使いのドレスにたっぷりしたファーをあしらったジレ(ベスト)が華やぎを添えています。極太のレザーベルトが程よい主張をプラス。太ベルトは注目アイテムとして秋冬に復活しそうです。大ぶりのバックルがアクセサリーのような役目を果たしてくれます。デコラティブ(装飾的)なロングブーツも足元をゴージャスに彩っていて、ドレス、ファー、ブーツのコンビネーションが上質感を印象づけています。

「強さ」を押し出しすぎない点も今のロックスタイルの傾向です。つややかな黒のボウタイ・ブラウスが品のよさを薫らせています。その上からシルバーラメを配した羽織り物を重ねて、まばゆさを上乗せ。ブラウンレザーのキュロットは革特有の質感がクールなムードを呼び込みました。黒革のロングブーツも光沢感を足元に帯びさせ、格上のロックルックに導いています。ほとんど肌を見せていないのに、抑制の利いた女性らしさが漂うのは、つやめきを巧みにまとっているから。シャイニーな演出を生かせば、穏やかなリッチ感も出せます。

せっかくのロックトレンドだけに、思い切り濃度を上げたスタイリングも試してみたくなります。もともとはバイク乗りが着たライダースジャケットはロッカー気分満点。アニマル柄を利かせたブロンズ色ドレスと引き合わせて、艶美なたたずまいに仕上げています。黒とブロンズは相性がよいので、グラマラスな雰囲気に整えたいときに意識したい色合わせです。首に巻いたストールを長く垂らして動きを加えました。真正面から少し横にずらして垂らすと、リズミカルな見栄えに。太ベルトとブーツにもきらめきを帯びさせて、全体をなじませています。ストールやドレス、ロングブーツで縦に長いシルエットを強調して、着姿をシャープにまとめ上げました。

この秋冬シーズンに向けて注目度が高まってきた素材にベルベットがあります。おしゃれの風向きがロマンチックで華やかなムードを強めるのを受け、所作に合わせて表情を変えるベルベットがリバイバルしそう。ゴールドのブラウスは大きめのボウタイを添えて、レディーライクな雰囲気に。ベルベットのロング丈ボトムスはたっぷりの量感が生きて、静かな光沢をまといました。トップスとボトムスのシンプルな2アイテム構成なのに、ドラマチックに映るのは、それぞれが宿すつやめきのおかげ。押し出しの利いた太ベルトも全体を落ち着かせています。めかし込みすぎないパーティールックのお手本にもできそうなスタイリングです。

「モードの帝王」と呼ばれた創業デザイナーのイヴ・サンローラン氏(1936~2008年)が立ち上げた「イヴ・サンローラン」はパリ・モードを代表するブランドとして知られてきました。2016-17年秋冬シーズンまでクリエーティブディレクターを務めたエディ・スリマン氏は新ブランド名「サンローラン」を掲げ、ブランドの哲学を継承しながらも、持ち前の音楽愛をデザインに注ぎ込み、新たなテイストをもたらしました。

世界的なトレンドの方向性としてはオーバーサイズやファーなどが相次いで打ち出され、この秋冬の装いはこれまでよりも意外性やアッパー感が高まる気配です。レトロやロマンチックなどの雰囲気も濃くなりそうで、こういった新トレンドにロックムードはしっくりなじみます。やりすぎを慎重に避けながらも、レザーやきらめき素材を迎え入れれば、重たく映りがちな秋冬ルックにもスタイリッシュな風情を漂わせることができます。ボウタイ、太ベルトなどのアイテムは夏のうちから試せるので、早めに「予習」しておけば、秋口からロック気分の着こなしが楽しみやすくなるでしょう。

[画像協力]

SAINT LAURENT  http://www.ysl.com/jp

宮田理江(みやた・りえ)
 ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。
公式サイト:http://riemiyata.com/

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