夫が私を名前で呼んでくれません

夫が私を名前で呼んでくれません。子どもが生まれてからママと呼ばれるようになり、その後は「おーい」とか「あのさ」に。子が自立したこともあり、名前で呼んでほしいのですが「今さら」ととりあってくれません。（長野県・女性・40代）

よくあるみたいですね。友達にも同じ悩みを抱える人がいました。女性は結婚すると「○○さんの奥さん」と呼ばれ、子を産むと「ママ」に。そして子育てが一段落すると、呼び名さえなくなっていることに気づく。「いったい私は誰」と……。

男性はこの悩みに無頓着です。久しぶりに名前で呼ぶことに照れもあるでしょう。でも、そういう男性に限って昔の彼女に偶然会ったりすると、「やあ、○美」なんて下の名を呼ぶんですよ。許せませんよね。ここは強く出るべきです。

まず確認ですが、あなたは旦那さんを名前で呼びますか。呼んでいないなら今から改めましょう。それが一歩目です。

次に進めるのは「居酒屋の大将作戦」。私が何度か行った居酒屋の主人は客が「大将、ビール」などと注文をすると、「おれはビールじゃねえ」とそっぽをむく。そのため、多くの客は「○○さん、ビールお願い」と注文し直す経験をします。変わった店ですが人気があるところを見ると、彼の対応は正当と認められているのでしょう。

あなたも習えばいい。「おーいビール」と言われたら「私はビールじゃない」、「風呂」といわれたら「風呂じゃない」と突っぱねる。失礼だと訴え、名前を呼ばせることが大切です。

問題はそれでも変わらない場合。そのときは離婚する覚悟で名前で呼ぶよう迫りましょう。名前は人に命を宿すもの。保健所に収容された犬も引き取り手が見つかり、名づけられると途端に元気になると聞きます。妻の名を呼べない夫は妻の人生を軽く見ているといえるのです。

以前、柴門ふみさん原作の「Age,35～恋しくて」という不倫を巡るドラマの脚本を書いたとき、こだわったのも呼び名でした。主人公夫婦は破綻に向かいつつも互いを「英志さん」「朱美」と呼び合う。恋愛の熱が残っていることを示したかったのです。あなたは互いを名前で呼べない間柄に、恋心や愛情があると思えますか。

この際、世の旦那さんにも忠告しておきます。妻の多くは夫の姓を名のる。つまりあなたたちは妻の名の一部を既に奪いました。その上、下の名も呼べないとはどういうことですか。

どうしても呼べない方には、奥様の誕生日にネームプレート入りのケーキを贈ることを勧めます。「○子、誕生日おめでとう」。ろうそくに火をともし、プレートを読み上げましょう。その時、奥様は久しく見せなかった笑顔を浮かべているはず。あなたの心も変わるはずです。奥様の笑顔が絶えない夫婦関係を取り戻してください。

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［日経プラスワン2016年7月30日付］