外貨投資

為替にチャレンジ

円だけで暮らす私に、今なぜ外貨運用が必要なの? SMBC信託銀行 商品企画部長 阿部豊憲

2016/7/21

 「普通の日本人も外貨での運用が必要」。最近よく聞くようになった説明です。「そういうけど、私はずっと国内で日本円を使って暮らしている。生活する上で外貨なんて使わないから、私には関係ない話なのでは?」と思う人もいるでしょう。

 しかし、世界中に経済活動を広げる近年の日本人にとって、経済活動も生活に必要な商品サービスも、今や日本国内だけで完結することはできません。日本のごく普通の生活者にとっても外貨について考えることは、経済活動を行ううえで、そして生活するうえでとても重要なテーマなのです。

 為替レートの変動によって日本企業の業績や株価が上下するニュースは皆さんもおなじみでしょうが、世界的な規模で経済活動を行っている企業やビジネスマンだけでなく、個人の生活にも為替レートは影響を及ぼします。一番身近なところでいえば、海外旅行や海外留学には外貨が必要になりますね。

 海外旅行の直前に為替レートが気になり、その時に円安が進んでいると「元手は同じ額なのに少ない外貨にしか換えられなかった……」となるのは多くの人が経験していることだと思います。同じ10万円の両替でも、1ドル=80円のときには1250ドル受け取れますが、1ドル=120円の円安なら833ドルしか受け取れません(為替手数料は考慮せず)。

 ただ、こうした為替リスクは「あらかじめ外貨を保有しておく」ことで和らげることができます。特に留学や海外赴任ともなるとまとまった額の外貨が必要になりますが、そのときの為替レートが不利だからといって、留学や赴任を止めるわけにはいきません。また「海外に移住する」という、より大きな選択をする方もいらっしゃるでしょう。つまりあらかじめ外貨を準備しておくことは、将来の生活スタイルの変化への準備をすることでもあるのです。

■円安で減っていくあなたの購買力

 また外貨の必要性は、海外で外貨を使うときだけ感じられるものではありません。ずっと日本に住んでいたとしても、資産をすべて円で持つことにはリスクがある、という考え方もあります。

 どういうことかといいますと、我々は日本に住んでいても直接的・間接的に外国の製品や資源を消費しており、その時には必ず為替レートを含んだお金のやり取りがなされています。

 日本国内では製品やサービスの対価として外貨を支払うことはなく、円しか使わないので実感しにくいと思いますが、例えばドライブで給油したと考えてみましょう。ガソリンは外国から輸入した資源ですから、輸入する際には為替レートを含んだ計算がされており、従ってドライバーは国内に住んでいても為替変動の影響を受けている、といえるわけです。こういう生活の中で、すべての資金を円で持つということは、円の価値・円の購買力という点でやはり「為替リスクにさらされている」といえます。

 仮に、長期で円安が進んだと仮定します。すると原料やエネルギーを輸入に依存する商品やサービスの価格は高騰しますから、同じ額の円で買える商品やサービスは減少していくのです。こうした影響は、預金だけでなく有価証券や不動産も含めて円建て資産全体の価値に及びます。しかし、資産の一部を外貨建てで保有しておけば、円の購買力が相対的に減少した場合にも資産全体の購買力を維持することにつながるのです。

 さて、では円の価値はどの程度変動するのでしょうか。時期によって変動の大きさは変わってきますが、例えば2016年1月から7月までで各国通貨に対する円の相対的な実力を示す「実効レート」を見てみると、日次の年率換算変動率は約14%です。これは、円の対外的な購買力が年間で14%程度上下変動する可能性がある、ということです。

 もちろん、この変動を逆に利用して円高の時にうまく外貨を購入しておければいいのですが、為替の動きを予想することはとても難しく、将来円高になるのか円安になるのかを正確に予想したり、そもそも今が円高なのか円安なのかを判断したりすることは難しいものなのです。

 そのため「外貨を準備する」と決めたら、資産をすべて一度に外貨にするのではなく、年単位の時間をかけて分散して外貨を購入するのが重要です。時間分散すれば、高値づかみをしてしまうタイミングリスクを和らげられるからです。金融機関が提供している「外貨の定時定額購入サービス」を利用するのもよいアイデアだと思います。

■通貨種類も分散したいが、まずは米ドル

 いま時間分散の話をしましたが、通貨の分散も重要です。一般的には資産を一つの投資対象に集中させるよりも、分散投資によっていろいろなリスクを少しずつ取るほうが効率のよい運用だといえます。

 この考え方からも、外貨の保有は大切な分散投資の一環であり、また通貨の種類もある程度分散するのがよいといえます。値動きの異なる複数の通貨に分散させれば、全体として変動リスクを低減させることも期待できます。

 とはいえ、通貨の種類を数多くそろえればいいというものでもありません。よくわからない国の通貨にいきなり投資するのではなく、まずは情報量も多く、実際に使う機会も多い米ドルから始めるのが一般的です。次いで利回りの比較的高い豪ドルやニュージーランドドル、さらには地域を大きく変えて英ポンドやユーロなどといったように、少しずつ時間をかけて通貨分散をしてゆくとよいと思います。

 日々のニュースを見ていると、予想を超える事象が次々に起こり、世界の政治・経済の動きがとてもめまぐるしいものだと感じます。その動きの早いグローバル社会の中で、日本円「だけ」を頼りに将来を乗り切ろうとするのは怖いことのように感じないでしょうか。マイナス金利政策により、円預金だけでは資産がほとんど増えないということもあります。ずっと日本国内で暮らす人も、海外での生活を考えている人も、やはり時間をかけてグローバルな通貨分散にチャレンジすべき時期だと思います。

 外貨に強い銀行などでは、今後の市場や為替の見通しをウェブサイト上の情報や電話窓口、店頭でも教えてくれます。例えば当行でもさまざまな役立つ情報をご提供しています。外貨預金のきっかけとして、プロの持っている情報を上手に使いこなすこともよい方法だと思います。

 次回は外貨預金や外貨決済サービス、さらに外貨預金以外の外貨建て運用商品などについて、詳しく解説していきます。

阿部 豊憲(あべ・とよのり) SMBC信託銀行 商品企画部長。シティバンク入行後、金融商品仲介業務や投資信託の企画・開発業務に従事。その後、銀行全般の事務マニュアル作成・管理業務を経て、現在はSMBC信託銀行の個人金融部門で総合的な商品企画・開発業務を担当。経営学修士、日本証券アナリスト協会検定会員。

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