中古マンション、東京23区内の価格はまだら模様不動産コンサルタント 田中歩

立ち並ぶ高層マンション(東京都港区)
立ち並ぶ高層マンション(東京都港区)

東京23区内の中古マンション価格はここ数年、上昇を続けているといわれています。東日本不動産流通機構が発表している「市況データ」から23区内の中古マンションの価格推移を調べてみると、次のグラフのようになりました(グラフA)。

金利低下が影響か

折れ線グラフは23区内の中古マンション平均成約単価(6カ月移動平均)の推移です。2012年11月の1平方メートル当たり54.01万円を底に、16年6月の同70.11万円まで上昇しています。実に約30%の上昇です。

棒グラフは23区内の中古マンションの在庫件数です。在庫と平均成約単価の動きを見てみると、08年から15年夏ころまでは在庫水準が底に近くなると平均成約単価が上昇し始め、在庫水準が高まり始めると平均成約単価は下がり始めるという動きになっています。

しかし、15年夏以降は在庫が急増し2万件を超えても価格は下がらず、価格上昇の勢いがわずかに減衰している程度にとどまっていることがわかります。おそらく、13年以降の価格上昇は金融緩和による金利低下(住宅ローンによる調達額の上昇)の影響が大きく、15年夏以降の在庫水準の増加による価格下落を打ち消していたのではないかと筆者は考えています。

ところで、23区内の地区別に見るとどのような動きをしてきたのでしょうか?

まずは、城西地区(新宿区・渋谷区・杉並区・中野区)を見てみましょう(グラフB)。

12年末以降、価格は上昇傾向で、15年3月ごろから在庫が急増したことに伴い価格は横ばい傾向を示していましたが、15年秋から16年年初にかけて再上昇し、16年3月以降は横ばい傾向となっています。

次に城東地区(台東区・江東区・江戸川区・墨田区・葛飾区・足立区・荒川区)です(グラフC)。

23区全体の傾向と同じように、平均成約単価は安定的に上昇傾向を継続しています。在庫上昇が23区や城西地区ほど急激でないことが影響していそうです。

次に、城南地区(品川区・大田区・目黒区・世田谷区)です(グラフD)。

平均成約単価も在庫も、動きは23区全体と同様に見えますが、15年3月ころからの在庫上昇を受け、価格上昇トレンドが大きく減衰していることがよくわかります。

そして城北地区(文京区・豊島区・北区・板橋区・練馬区)です(グラフE)。

15年7月ごろから在庫が上昇し、それに伴い価格は横ばいになっています。上昇が完全に止まっていることがわかります。

そして最後は都心3区(千代田区・中央区・港区)です(グラフF)。

一見してお分かりの通り、昨年11月に価格はピークを迎え、今年の6月まで価格は下落傾向となっています。在庫は15年の初めころから23区の中で最も急激に上昇しましたが、その後も価格は上昇し続け、15年11月まで上昇していました。

緩やかに価格は低下か

各地区とも在庫はおおむね天井に達しているように見えます。在庫の増減と平均成約単価に一定の相関があるとすれば、また、今後しばらくの間、在庫が高止まりするとすれば、これまでの上昇トレンドを継続することはなく、緩やかに価格が下がる可能性があると思っています。

23区における在庫動向をみると、在庫件数2万件を超えていた在庫高止まり期間は11年7月から13年2月の1年8カ月ですから、今後、在庫が高止まりする期間は少なくとも1年半程度続く可能性があり、その期間は価格が調整される期間となりそうです。

しかし、今年2月以降のマイナス金利の影響によって住宅ローン金利がさらに低下していることから、ローン調達額はさらに高まる(購入できる価格はさらに高まる)ことが予想されます。

以上から、各地区とも金利が今後さらに低下していくとすれば、価格は横ばい傾向を、金利がこれ以上下がらない状態になれば、横ばいからやや下落傾向を示す可能性があるのではないかと考えています。

なお、筆者は今後の金利低下余力はそれほどないと考えていますので、全体としては、ある程度の下落トレンドとなる可能性が高いと考えています。

ここまで見てきたのは、各地区の大きな傾向です。不動産は個別性が高いものですから、必ずしもすべての物件が筆者の予想する通りの価格トレンドなるというわけではありません。

人口動態は区によって異なる

マンションは、何といっても「駅からの距離」「駅の商業集積度」「その地域の人口動態」が個別の価格に強く影響を及ぼすと考えられています。

ダウントレンドが予想される中では、駅からの距離は徒歩7分以内(できれば5分以内)がよいでしょう。駅からの距離が遠くなればなるほど競合するマンションが増えると考えられることから、駅からの距離はやはり重要です。

最寄り駅は急行停車駅かどうかや駅前の繁華性など、利便性の高さが重要になると思います。

23区の人口は20年にピークを迎え、その後徐々に減少していくと予想されていますが、各区によってその動きは異なっています。東京都が発表した「東京都区市町村別人口の予測(12年3月)」の中の「区市町村及び男女別将来人口増減数」によると、15年から35年の20年間で人口増加数が多い区は以下の通りとなっています(表G)。

価格調整局面を迎える可能性がある中においては、これらの要素を加味しながら、価格が下がりにくい中古マンション選びをする必要が従来以上に重要になってきたかもしれませんね。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。