MONO TRENDY

デジタル・フラッシュ

すぐ分かる「ポケモンGO」 何がすごい? 問題は?

日経トレンディネット

2016/7/20

ポケモンGOは一大センセーションを巻き起こしている
日経トレンディネット

 任天堂のスマートフォン(スマホ)用アプリ「ポケモンGO」(Pokemon GO)が世界を騒がせている。ひと足早くアプリがリリースされた米国では、早くも「スマホで使われているナンバーワンのアプリ」の称号を手にするなど、一大センセーションを巻き起こしている。

先行リリースされた米国を中心に、任天堂のスマホ用アプリ「ポケモンGO」が話題を呼んでいる。日本での提供開始も間近とみられ、リリースされれば大きなブームを巻き起こしそうだ

 一方で、プレーヤーが「歩きスマホ」をしたり、スマホを持った人々が公園や道路を占拠する事例が各地で報告されるなど、社会問題化の兆しも見え隠れする。日本でのサービス開始も間近と言われるなか、ポケモンGOがなぜそんなに人気なのか、ベースとなった「イングレス」(Ingress)との違い、そして大ブームゆえの問題点をまとめてみたい。

■現実世界にポケモンがやってくる

 ポケモンGOは、iOS/Androidスマホ用の無料アプリ。現実世界を歩き回りながら、ポケモンをゲットして強化・対戦するゲームだ。最大の特徴は、AR(Augmented Reality、拡張現実)の技術を採用し、カメラで捕らえた画像にポケモンのキャラクターを合成表示して、あたかもポケモンが現実世界に出てきたような楽しさが味わえることにある。

 プレーヤーは実際に街中を歩きまわり、Googleマップをもとにした地図でポケモンを探していく。ポケモンを発見すると、現実のカメラ映像にキャラクターが投影されるので、それをゲットしていくのが基本的な遊び方だ。シンプルな内容のゲームだが、「現実世界とスマホゲームをARで融合したこと」と「世界的に人気のあるポケモンを採用したこと」により、スマホゲーム史上最大のブームになろうとしている。

ポケモンGOは現実世界が舞台となる。プレーヤーの周囲に表示されているのは現在地の周囲の地図で、さまざまな場所にポケモンやアイテムを取得できる場所が散在している
ポケモンをタップすると実写画像に切り替わり、ARによりポケモンが合成されて登場する。下にある赤白のモンスターボールを投げて的中すればポケモンを「獲得できる

獲得できたポケモンは一覧画面で表示する
さまざまなアイテムを使うと、ポケモンをパワーアップできる

 冒頭で述べたように、米国では2016年7月7日にリリースされて以来、「ポケモンGO狂騒曲」と呼ぶべき大ブームが巻き起こっている。街中をスマホを持った老若男女が歩き回り、「ポケモンゲットだぜ!」と叫んでいる状態だ。サンフランシスコ近郊に在住のジャーナリスト・松村太郎氏は「公園は目を疑うような光景」になっているとTwitterで述べている。

 松村太郎氏がヤフー!ニュースで公開した記事によれば、サンフランシスコの公園は「スマホの画面を見ながら回遊している人々だらけ」とのことで、子どもから老夫婦までポケモンGOに熱中している様子がうかがえる。

 ニューヨークのセントラルパークも同様で、ポケストップ(アイテムなどを補給できるポイント)やジム(ポケモンの強化・対戦などのポイント)がある場所は、プレーヤーが集まりすぎて騒ぎになっているという。

 「ポケモンGOに夢中になりすぎて池に落ちた」「プロレスラーが試合後のインタビューそっちのけでポケモンGOをやっていた」「テレビのアナウンサーが生放送中にポケモンを探してカメラを横切った」などのエピソードも、日本のテレビで笑えるネタとして連日報道されている。

■基本的な部分は「Ingress」と共通

 ポケモンGOは、任天堂、ポケットモンスターのライセンス運用会社である株式会社ポケモン(任天堂が32%を出資)、ナイアンティック(Niantic)の3社が共同開発した。2015年9月に開発を発表し、2016年3月下旬から一部ユーザーによるフィールドテストを実施してきた。

ポケモンGOのベースとなったといえる、ナイアンティックの「Ingress」

 ポケモンGOのベースとなったのは、ナイアンティックのIngressだ。Ingressは単純にいうと「現実のマップを使った陣地取りゲーム」である。青と緑の2チームに分かれ、公園、街中の銅像、神社やお地蔵さん、橋や建物など「ポータル」として登録された場所を奪い、陣地を広げていく。位置情報を使った新機軸のゲームとして注目され、同種のスマホゲームでは大きなヒットとなった。筆者もIngressに一時期夢中になったが、外を歩きまわることでダイエットにもなるとして、エクササイズ代わりに楽しむ人も多い。

 ポケモンGOは、Ingressと同じデータを使っており、Ingressでの「ポータル」の一部が、ポケモンGOでの「ポケストップ」や「ジム」になっている。ポケストップとは、ポケモンGOで使うモンスターボール(ポケモンをキャッチするためのボール)やアイテムなどをゲットできる場所のこと。一方、「ジム」では、ポケモンを強化したり対戦できる。

 さらに、ポケモンGOは一定レベル(レベル5)になるとプレーヤーが赤・青・黄の3チームに分けられる仕組みになっている(Ingressでは青と緑の2チームのみ)。このチームの戦いでジムを取り合う対戦要素も用意されている。このあたりは、Ingressのポータルや陣地の奪い合いとそっくりだ。

 いち早くポケモンGOをプレーした筆者の友人によれば、「ジムで戦わせてポケモンを強くしていくのがコツ。レベルが上がると、ポケモンボールなどで強力なアイテムが入手できるようになるので、さらに強くなっていく」とのこと。ゲームボーイやニンテンドーDSなどの本家ポケモンの世界観がそのまま再現されているようだ。チャットなどのソーシャル要素は現時点ではないため、チームのコミュニケーションには各種チャットアプリなどが使われている。

 友人は「ARでポケモンをゲットしていくのは確かに面白いが、ゲームの内容は比較的単純で、どうしてもルーチンワークになりがち。最初は大いに熱中するが、すぐに飽きてしまう人も多いのではないか?」と指摘している。Twitterでも「ゲーム的な要素を増やさないと飽きるだろう」という声が上がっている。

 ちなみに、Ingressでもその傾向があった。当初は、初めての位置情報ゲームとして多くの人が面白がってプレーしたが、一定レベル以上になるとルーチンワークを強いられて飽きる人が増え、現在は一部のマニアだけが続けている状態だ。

■早くも「スマホでもっとも使われているアプリ」に

 リリースされてわずか1週間のうちに、ポケモンGOはスマホアプリの記録を次々に塗り替えた。デイリーユーザー数(1日のうちにアプリを起動した人の数)は北米で2100万人を超え、スマホゲームでは歴代トップになった(調査会社SurveyMonkeyによる)。スマホへのインストール数でも、誰もが入れているであろう「Google Maps」(グーグルマップ)を超えるのが時間の問題と分析されている(Androidでの調査データ、SurveyMonkeyによる)。

 SimilarWebの調査によれば、デイリーユーザー数はTwitterよりも多く、利用時間でもあのFacebookを超えた。ゲームでナンバーワンになっただけでなく、スマホアプリ全体でも米国でもっともメジャーなアプリになりつつあるのだ。

 この一大ブームにより、任天堂は大きく潤いそうだ。ポケモンGO自体は無料アプリだが、有料アイテムなどの課金要素が用意されている。米国の調査会社は、わずか4日間で1400万ドル(約14億円)もの売上げがあったのではと推測している(調査会社SUPERDATAによる)。

ポケモンGOには、ゲームを有利に進めるためのさまざまなアイテムが用意されており、ゲーム内通貨「ポケコイン」で入手する
ポケコインはゲーム内で手に入れられるほか、有料でも購入できる

 その結果、日本の任天堂の株価も急騰した。16年7月7日のポケモンGOリリース前の株価は1万5000円前後で推移していたが、同月15日には一時2万7800円を突破。わずか1週間で80%もの「爆上げ」となった。これにより、任天堂の時価総額は約3兆9000億円にまで大きく伸びた。リリース前日の時価総額は約2兆1000億円だったから、わずか8日で1兆8000億円も増えた計算だ。ポケモンGOによって、任天堂は一時的ながら1兆8000億円も企業価値がアップしたことになる。

 米国での大ブームは日本のテレビやTwitterでも大きな話題となっており、日本の株式市場全体を押し上げる原動力として「ポケモノミクス相場」や「ポケモノミクス現象」なる言葉まで誕生している。景気浮揚に効果があるのではという声まで出ている。

 関連ビジネスにも注目が集まる。まず「スポンサード・ロケーション」の導入が発表されている。これは、ポケモンGOで欠かせない「ポケストップ」や「ジム」を実在の店舗などに置くことで、集客や広告宣伝に使ってもらう仕組みだ。ポケモンGOの前身にあたるIngressでも企業のスポンサードが実施されていたから、ポケモンGOでも大きなビジネスになりそうだ。ポケモンGOは、GPS機能や通信機能を常に利用することからバッテリーの消耗が激しく、モバイルバッテリーや充電サービスの特需が起きるという予想もある。

■さまざまな問題や騒動が発生、犯罪の懸念も

ポケモンGOでまず懸念されるのが、歩きスマホの爆発的な増加だ

 米国でのポケモンGOブームを受け、早くもさまざまな問題が浮かび上がっている。まずは歩きスマホの問題だ。Ingressと同様に、ポケモンGOは外を歩き回ることで成果を得られるゲームだけに、どうしても歩きスマホを誘発する。「立ち止まってプレーするように」と呼びかけられてはいるものの、実際には歩きスマホは避けられないだろう。日本でも、駅などでの歩きスマホがすでに問題となっているが、ポケモンGOの登場でさらなる事故やトラブルの増加が懸念される。

 もう1つは、私有地への侵入や好ましくない場所でのプレーだ。ポケモンを入手したいと考えるユーザーが、スマホを手に私有地や各種施設に入り込んでしまう問題が起きている。ポータルやポケストップ、ジムが私有地に存在するケースがあるため、そのようなトラブルが発生するのだ。それらを公道からアクセスできない場所に配置するのは本来はあり得ないのだが、GPSデータの誤差や登録時のミスなどにより私有地に登録されてしまうことがある。米国では、なんとペンタゴン(米国防総省)内にポケモンGOのジムが存在するとのことだ。

 ポケモンGOのユーザーが昼夜を問わず歩きスマホで静かな住宅街をさまよったり、駐車場や民家の庭などの私有地に侵入するケースが発見されれば、日本でも大きな問題になるだろう。ワシントンにあるホロコースト博物館では、館内でポケモンGOをプレーする人がいたため、「館内ではプレーをしないように」と通達を出した。

 ポケモンGOユーザーを狙った犯罪も登場しているようだ。アイテムを使って特定の場所にポケモンを多く集め、それを目当てにやってきたユーザーをターゲットにするという具合だ。スマホや金品の強奪、性犯罪や誘拐などの危険性が指摘されている。

■日本でのリリースは間近とみられる

 16年7月15日の時点では、日本ではまだアプリがリリースされていない。米国のアカウントを利用すれば日本でもダウンロードできるが、地図上にはポケモンがまったくおらず、ポケストップやジムもなく、事実上プレーできない状態だ。開発者の公式ブログには「もうしばらくお待ちください」との案内があるだけで、日本のユーザーは首を長くして待つほかない。ただ、「日本でのリリースは間近」という話もあり、7月中には遊べるようになるだろう。

iOS版の場合、米国のアカウントでログインしたApp Storeではダウンロードできる
日本のアカウントでログインした場合はアプリ自体が表示されない

 ナイアンティックのジョン・ハンケCEOは、7月15日にロイターのインタビューで「日本への投入時期は近い。世界200カ国の国と地域に広げていきたい」と述べている。米国での爆発的ブームを受けてサーバーへのアクセスが急激に増えており、増強する必要があれば日本への導入が遅れるかもしれない。

 日本でのリリースが夏休みに入るタイミングと重なると、ポケモンに興味のある学生が休みを生かして朝から晩までポケモンGOに熱中する可能性が高い。歩きスマホをできるだけ避けること、周囲の人に迷惑をかけないこと、私有地には入らないこと、土地勘のない場所には不用意に足を運ばないこと、犯罪に遭わないよう常に周囲に注意すること、といったマナーや心がけを頭に入れておく必要があるだろう。

(ITジャーナリスト 三上洋)

[日経トレンディネット 2016年7月16日付の記事を再構成]

MONO TRENDY新着記事

ALL CHANNEL