大人の街履きサンダル、完売続出のグルカとは?大人に似合う逸品サンダルを探して1

完売モデルも数多いという大人気のグルカサンダル
完売モデルも数多いという大人気のグルカサンダル

夏本番を迎え、休日のコーディネートがよりラフになってきた。短パンを着用する機会が増え、それに伴い足元にサンダルを合わせるという人も多いだろう。そこで、今夏の注目サンダルを3回にわたって紹介していく。第1回となる今回は、大人が街で履くのにふさわしいレザーサンダル「グルカサンダル」にフォーカスした。

革靴のような見た目と履き心地、なのに涼しい

いくら暑いからといって、いい大人が街を出歩くのに短パン+ビーサンというラフすぎる格好はいただけない。レジャーならまだしも、ショッピングしたりレストランに入ったりすることを考えると、それなりに節度のある着こなしが求められる。とはいえ30度を超える最中、できるだけ涼しい格好をしたいもの。そこで活躍するのが「グルカサンダル」だ。

グルカサンダルとは、「19世紀、英国東インド会社の利権を守るために英国陸軍が編成した部隊、複数のネパール山岳民族から構成されたグルカ兵に支給された軍靴」を起源とする革製サンダル。甲部分がレザーテープを編み込んだようなオープン構造になっていて、逆にトゥとヒールカップはクローズ構造になっているのが特徴。サンダルの通気性と革靴の見た目とフィット感を備えた、両者のいいとこ取りをしたようなフットウェアだ。

グルカサンダルは以前から流通していたが、“大人の短パン”がファッションとして広がるにつれて注目されるようになった。シューズセレクトショップ「ワールド フットウェア ギャラリー」のディレクターを務めるドレスシューズ界の御意見番、日高竜介氏は、「年々厳しくなる暑さ、ビジネスウエアのカジュアル化、ショートパンツの一般化などの要因によって、あらゆる方面から需要が増えている」と話す。

昨年から人気が高まりつつあったが、今年はより一層注目を集めている。ワールド フットウェア ギャラリーでは、「今年は5月発売のグルカを2月後半から店頭で予約を取ったところ、予定数量は3月中旬で早くも完売。急きょ追加発注するも、5月発売時にはさらに予約も増え、店頭での通常販売可能分は数足しかなく、それも6月には完売した」(日高氏)という。昨年も数多く売れたが、完売まではしなかったそうだ。今年の注目度の高さがうかがえる。

一般的なサンダルは涼しくてラクだが、簡素な作りのため歩行という機能面では不十分。それに対してグルカは靴と同じ製法が用いられていて履き心地が抜群。見た目も革靴のような品格があり、大人が街で履くサンダルとして打ってつけ。

「去年までドライビングシューズやスニーカーを履いていたおしゃれな40代の中には、ショーツなどカジュアルな装いに合わせて履く方が多いですね」と日高氏。スーツにも合わせて履く年配のビジネスマンもいるという。

そこで今回は、人気絶頂のグルカサンダルの注目作を見ていこう。いずれもシューズメーカーとして名をはせるブランドなだけに、機能面もデザイン面もクオリティーが非常に高い。

グルカサンダルの火付け役「フラテッリ ジャコメッティ」

フラテッリ ジャコメッティの「FG166」(7万6000円)

グルカサンダルといえば、このブランドをイメージする人も少なくない。1890年代に創業され、ハンドメイドシューズを起源とするフラテッリ ジャコメッティは、イタリア北部のベネト地方に残る職人メーカー。名だたるメゾンブランドのシューズを手がけていることでも知られる。2006年、このファクトリーの自社ブランドから、春夏向け商品としてグルカサンダルが発表され、それ以降さまざまなブランドが採用して、今日のグルカサンダルブームに至る。

フラテッリ ジャコメッティのグルカサンダルは、先芯(爪先の芯地)が入っているため、よりシューズに近い仕上がりになっているのが特徴。先芯があることで「捨て寸」(つま先と靴の空間)も生まれ、履き心地が向上するとともに、靴下を合わせても窮屈に感じることがない。夏場は気温や湿度で足がむくむため、ウィズ(足囲)も広く締め付けのない設計を取り入れ、少し緩めなフィッティングで足首のベルトで履くことをイメージして作られている。

また、切り口の多いデザインを美しく見せるため、ライニングと甲革に使用している革の間に、伸び止め効果のあるカンガルー革を挟んで縫製しているなど、配慮の行き届いたディテールも魅力だ。

フランスのタンナーが手がけた美しい型押しカーフレザーが雰囲気良し
ソールは本格革靴と同じレザーソール。縫い目が見えない“伏せ縫い”のためドレッシーな印象
甲革の切り口からのぞく高級感のあるカンガルー革がアクセントに。ヒールカップが一枚革なのも見逃せない。また、履き口のトップラインが高くフィット感に優れている

「温暖化とファッショントレンドの変化とともに、サンダルにも靴下を合わせることが受け入れられたことによって、弊社のグルカサンダルは1年のうち6カ月以上もの着用期間があることがわかりました」(フラテッリ ジャコメッティ PR担当)

高級素材を使い、現代ファッションに合うバランス設計、そして細かい気遣いと手作業による高いクオリティーで、今日のグルカサンダルブームをけん引している。

ソールが張り替えられる「クロケット&ジョーンズ」

クロケット&ジョーンズの「フィッシャーマン」(7万9000円)

1879年、多くの靴メーカーが集まる英国ノーサンプトンで創業したクロケット&ジョーンズ。英国の名門シューズメーカーとして知られるこのブランドからも、グルカサンダルが展開されている。

気品あふれるたたずまいもさることながら、革靴と同様にグッドイヤーウェルト製法で仕立てている点が最大の魅力。他社製品とは違い、ソールの張り替えができるため、サンダルなのにメンテナンス次第で一生使えるところがうれしい。

アッパーには上質なカーフレザーを採用し、細身のラストでまるでドレスシューズを思わせる流麗なシルエットを見せる。サンダルとは思えないフィット感があり、長時間履いていても足の裏が痛くなるようなことはない。本来はショーツ+ジャケットといったカジュアル履きやリゾート履きを狙った商品だが、革靴感覚で履くことが可能なため、クールビズスタイルやドレススタイルにも合わせられる。

「昨年は2色展開で完売状態でした。今年は6色展開と多色展開し好調に売り上げを推移しています。主に30代~50代のファッションにこだわりを持ったビジネスパーソンの方に支持されています」(トレーディングポスト青山店 広報担当)

革靴をくり抜いたようなデザインで、ドレスシューズ感覚で履くことができる。グラデーションのかかったカーフレザーのアッパーが上品。赤いライニングもラグジュアリーな雰囲気
高級革靴と同様にレザーソールを採用している。グッドイヤーウェルト製法のためソールの張り替えも可能。シルエットから足にジャストフィットする形状になっていることもわかるだろう

スニーカーのような履き心地の「パラブーツ」

パラブーツの「パシフィック」(3万4000円)

パラブーツは1908年に創業したフランスのシューズメーカー。1926年にゴム底靴を発表し、フランス海軍に採用されたことで一躍有名に。世界で唯一ソールまで自社開発を行うメーカーとしても知られ、素材やデザイン、製法などのすべてに実用性を追求したシューズは世界各国で支持されている。

パラブーツのグルカサンダルも、もちろんラバーソールを採用している。そのため、スニーカーのようなクッション性と屈曲性を持つ。さすがはゴム底の革靴を世界に広めたブランドだけあって、履き心地にこだわって作られている。

パラブーツのラバーソールには天然ラテックスが使用されており、合成ゴムと比べて軟らかく、クッション性とグリップ力が非常に高い。さらに、かかと部分にも芯材が入っているため長時間歩いても疲れにくいのが特徴だ。

同社のローファーやデッキシューズと同様に、ボリューム感のあるシルエットのため、サンダルといえども存在感がある。また、ややゆったりとした作りのためリラックスした履き味なのも見逃せない。

「昨年より1.5倍ほど売り上げは伸びています。卸売りでも6月から追加オーダーが増えました。かつては50代以上の男性に支持されていましたが、今は30代~40代のファッション好きなお客様が多いです」(パラブーツ 日本総代理店)

耐久性の高い肉厚なカーフレザーを使用。ボリュームのあるフォルムで存在感がある
クッション性に優れた天然ラテックス製のラバーソールが最大の特徴。スニーカー感覚の履き心地が味わえる。滑りにくい底面の形状にも注目
ストラップのバックル裏にゴムパーツを採用しているため脱ぎ履きがしやすい。実用性にこだわるパラブーツならではのディテールだ

一流シューズメーカーならではのクオリティーを楽しむ

以上、注目のグルカサンダル3足を紹介した。どれも一流シューズメーカーが手がけているだけあって、サンダルといえども履き心地は抜群。また、各メーカー&ショップのコメントから、この夏グルカサンダルが人気だということもわかったはずだ。

ジャコメッティやクロケット&ジョーンズなど、ドレスシューズに匹敵する品格を備えたモデルもある。これらは革靴と同様の使い方ができ、素足はもちろん靴下と合わせてクールビズやスーツスタイルにも用いることができるだろう。パラブーツもスニーカー感覚の履き味を備え、通常のサンダルよりも実用性が非常に高い。グルカサンダルは、ラフな短パンスタイルを品よく格上げしてくれる優れモノ。まさに大人が履くにふさわしいサンダルなのだ。

■特集 大人に似合う逸品サンダルを探して
 前編 大人の街履きサンダル、完売続出のグルカとは?
 中編 浴衣にもジャケットにも合う和サンダルが人気上昇中
 後編 コスパ抜群の大本命 秋まで履ける“スポサン”を狙え

(ライター 津田昌宏)