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3階建て、4階建て 複雑な投信のリスクを知る QUICK資産運用研究所 清家 武

2016/7/20

「カバードコール戦略」や「高金利通貨戦略」などのデリバティブ(金融派生商品)取引を活用した、いわゆる3階建て、4階建て収益構造の投資信託がネット証券を中心に活発に売買されている。高い分配金が人気の一因で、こうした3階建て、4階建てファンドの6月末の純資産総額は1兆4000億円に達する(グラフA)。

商品内容が難しいため、金融当局の規制を意識して一部の証券会社や銀行では積極的な販売を控えているが、仕組みをよく理解せずに分配金の高さだけに魅力を感じて投資している投資家も多いとみられる。今回は、3階建て、4階建てファンドの収益構造について解説する。

■高めの分配金に期待

「カバードコール戦略」では、デリバティブの一つであるオプション取引を活用する。株式や通貨などを保有しつつ、同時にその資産のコールオプション(あらかじめ決められた価格で買う権利)を売る。株式や通貨で一定水準以上の値上がり益をあきらめる代わりに、オプション料を受け取るという投資戦略である。

オプション料の収入が保有資産の配当収益などに加わることで比較的高めのインカムゲインが期待できる。半面、市場で株価などが大きく上げても、運用成績の改善余地は小さくなる。カバードコール戦略を使ったファンドに投資家の人気が集まる背景には、オプション料を原資の一部とした高めの分配金への期待がある。

また「2013年以降のアベノミクス相場は終焉(しゅうえん)し、今後の株式や米ドル円相場の上値は限定的」といった見通しを持つ投資家には向いている面もある。

■短期金利差が収益に

「高金利通貨戦略」は株式や不動産投資信託(REIT)などに投資しつつ、同時に、高金利通貨の為替先物取引を活用して為替ヘッジプレミアム(為替取引国間の短期金利差に相当する収益)の獲得を目指す戦略。

為替ヘッジプレミアムが為替取引国間の短期金利差相当になる仕組みは以下の通りだ。

為替先物取引をする両国に金利差がある場合、金利が高い通貨で運用していた人が得になるので、現在の為替で1年後に交換する約束をすると有利、不利が生じる。そこで、多くの投資家が取引に参加することで裁定が働き、1年後に両国で運用した人に有利、不利が生じない状況に収束し、両国の短期金利差が為替ヘッジプレミアムになる。

例えば、現在の米国の短期金利が0%、ブラジルが10%とすると、為替先物予約レートは現在より10%米ドル高・ブラジルレアル安の水準になり、為替ヘッジプレミアムは10%になる。

「高金利通貨戦略」を単独で使うファンドは「通貨選択型ファンド」といわれて、リーマン・ショック以降の相場反転の時にブラジルレアル・コースを中心にブームとなり、純資産が大幅に増加した。

高金利通貨戦略は米ドルと高金利通貨の金利差に左右される傾向がある。

こうしたファンドの値下がり要因の一つは為替ヘッジプレミアムの縮小、もう一つは高金利通貨の下落だ。

つまり、金利差が縮小すると短期金利差相当の為替ヘッジプレミアムが小さくなることに加えて、高金利獲得を目的に買われてきた高金利通貨の魅力が低下して売られてしまい、ダブルショックになる。そのため、ブラジルなどの利下げはもちろん、米国の利上げもリスクといえる。

■リスクが大きい3階建て、4階建て

4階建てファンドの収益の要素は、株式やREITなどの投資資産そのものの値動きと、「高金利通貨戦略」「投資資産のカバードコール戦略」「通貨のカバードコール戦略」の3つのデリバティブ取引の値動きに大別できる。

3階建てファンドの場合は、これら3つのデリバティブ取引のうち、2つを活用している。

4つの収益の要素が全てプラスに影響すると、4階建てファンドは大きく値上がりするが、反対に、この4つの収益の要素がそろってマイナスに働いた場合、下落幅が大きくなる可能性がある。

3階建て、4階建てファンドの価格変動リスクを示す指標の「標準偏差」をみると、平均で約30%と大きい。標準偏差30%とは、平均リターンを0%とした場合、年間リターンが30%の上昇から30%の下落の範囲に収まる確率が約68%であることを示す。日経平均株価の標準偏差26%と比較してもリスクは大きめのファンドといえる。

また3階建て、4階建てファンドは信託報酬などのコストが相対的に高いため、コストを考慮した収益を考えることも大切だ。

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