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加藤登紀子、シャンソンの女王ピアフに挑む

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シャンソンの女王、エディット・ピアフの生誕100年を記念して、シンガー・ソングライターの加藤登紀子がコンサート「ピアフ物語」を開いた。東京大学在学中の1965年、第2回日本アマチュアシャンソンコンクールの優勝を機にデビューした加藤が1人で語り、歌うモノオペラ風のステージだ。全曲の訳詞、脚本、演出、歌唱まで、すべて自ら手がけ、周到に構成された見ごたえのあるコンサートだった。

サブタイトルは「ディートリヒとピアフの生きた時代を語り歌う」。1901年にドイツで生まれた大女優、マレーネ・ディートリヒが案内役となり、観客にピアフを紹介するという趣向で、加藤が2人を演じ分ける。全2幕の「ピアフ物語」で披露された19曲は、すべて時代と共に歌われ、愛されてきた歌ばかりであった。

まず1幕の後半に歌った3曲が強い印象を与えた。「メア・キュルパ」はキリスト教の「七つの大罪」をモチーフに「恋をした女はどんな罪でも犯してしまう」と歌うシャンソンだ。加藤にとっては若き日に登竜門となったコンクールで覚えたてのフランス語で挑戦した思い出の楽曲だそうだ。

続く2曲はピアフへのオマージュとして、加藤が自ら作詞、作曲したオリジナルだ。ピアフが2歳の娘を病気で死なせてしまった夜のことを歌った「名前も知らないあの人へ」とピアフの墓がある墓地の名をタイトルにした「ペール・ラシェーズ」。後者は精魂を込めたピアフ賛歌で、歌唱も見事だった。

2幕目は第2次大戦中、戦場放送のラジオから流れるディートリヒの歌声に兵隊たちが聴き入ったという「リリー・マルレーン」で幕を開け、2曲目「バラ色の人生」、3曲目「愛の讃歌(さんか)」でピアフの世界へと浸っていった。

ピアフが自ら作詞した名曲「愛の讃歌」について、加藤は発表したばかりの著書「愛の讃歌 エディット・ピアフの生きた時代」(東京ニュース通信社)で深い思い入れを明かしている。63年、ピアフの葬儀は世界中に報道され、繰り返し「愛の讃歌」が流れた。加藤はそれでピアフを知り、歌手になると決めたという。

2002年に夫の藤本敏夫さんが他界した後、加藤は「愛の讃歌」を歌えなくなったそうだ。「もしもあなたが死んで、私を捨てる時も、私はかまわない、あなたと行くから」――。この歌を歌おうとすると「体の底から何かが逆流するように、嗚咽(おえつ)がこみ上げて、歌えなくなってしまうのです」と同書で語っている。

ピアフは恋人のマルセル・セルダンを航空機事故で失った直後、気丈にもこの曲を歌ったという。夫の死から数年後、加藤も「愛の讃歌」に本気で向き合うようになった。死んだ夫と向き合って歌ってみると、不思議な力がわき起こるのを感じたそうだ。「どうしてピアフの歌が強いのか? それは、悲しみに向き合うときに全身の力が沸く! あの感じなんだって、わかったのです」(同書)と振り返る。こうした経験を重ねてきているから、加藤にとってピアフの歌は特別な存在なのである。

圧巻だったのは、加藤が「いつ歌っても気持ちの良いお気に入りの歌」と明かす「私は後悔しない」。この曲は「水に流して」という邦題で知られているが、1989年に加藤が初めてパリで公演した際に、自らの日本語訳で歌った。「私は後悔しない」というタイトルは原題を忠実に訳したものだ。

続く「響け太鼓」もまさに胸に響いた1曲だった。ピアフが作詞し、フランシス・レイが作曲した作品で、晩年のピアフが62年にパリのオランピア劇場で歌って喝采を浴びている。加藤は今年2月、パリまで足を運んでレイに会ってきたという。「ヒロシマ」「パール・ハーバー」といった歌詞が出てくる反戦歌で、加藤は「必死に日本語訳を作った」と語っていた。平和を希求する彼女ならではの力強い歌唱だった。

ラストソングは「花はどこへ行った」。米フォークソングの父、故ピ-ト・シーガーの有名な反戦歌だ。ディートリヒがバート・バカラックのアレンジでカバーしてヒットさせている。ここまで2時間余。壮大かつ劇的な人間ドラマで、観客は深い感動に包まれた。

こうした立体的で奥行きのあるオリジナルの音楽劇が少なくなった昨今の状況の中で、今回の公演が実現したのは、加藤登紀子の情熱と、時代と共に生き、歌い継がれてきた楽曲の力のたまものであろう。7月3日、東京・オーチャードホール。

なお加藤は今年11月3日、パリのコンサートホール「サル・ガヴォー」でも公演する。1部では51年にわたる歌手生活を彩ったヒットソングを歌い、2部はピアフの生きた時代を歌い、語るステージにするという。

(音楽評論家 反畑 誠一)

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