差別なき世界へ何ができるマセソン美季さんのパラフレーズ

国連人権理事会で先月末、「オリンピック理念を通じたスポーツと人権」に関するパネルディスカッションが行われ、私もパネリストとして登壇した。

人権を促進するにあたってのスポーツの役割とは何か、より差別のない社会に向けてスポーツができることとは何か。スポーツイベントがどのように世界人権宣言への注意を喚起し、理解を深め、適用を促せるのか。そんなことが話し合われた。

ザイド・フセイン人権高等弁務官は、障害のある女性の93%はスポーツに関与していないと述べた。インフラの未整備や社会の無理解で、スポーツに参加するどころか、自宅から一歩も外に出られない障害者が世界中に大勢いることを私もよく知っている。

車いすマラソンのタチアナ・マクファーデン選手(米国)は以前、「障害のある人たちには、やりたいと思ったことを何でもやる権利がある。それが世界を変える」と言っていた。私はかつて彼女と同じイリノイ大学に留学し、様々な競技の大会に出場した経験がある。自分の置かれた境遇を言い訳にせず、やりたいと思う気持ちを貫くことの大切さを痛感したことを思い出した。

リオデジャネイロ五輪では初めて「難民選手団」が結成され、国や文化は違っても似たような境遇の下でスポーツをする権利を求め、同じ目標に向かう選手たちに競い合う場が与えられる。これをきっかけに東京大会に向け、今までスポーツに縁がなかった人たちが、気軽にスポーツに参加できる環境が整ってくれるといい。

また東京大会に様々な形で関わる皆さんには、スポーツと人権を結びつけた視点での行動も期待したい。大会施設の工事の現場、グッズの製作、サービスの提供などで働く人の人権は守られているのか。性別、年齢、障害の有無など自分たちの意思ではなく、置かれた環境によって人権を侵害するような言動がまかり通っていないか。

そして、出場する選手たちには、競技成績だけでなく、そうした問題意識を発信できる機会を最大限に生かすことも期待したい。

ませそん・みき 1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。今年1月から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日経朝刊2016年7月14日付]