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初めてのREIT投資 物件・地域で値動きに差

2016/7/17

 不動産投資信託(REIT)が個人投資家の注目を集めている。日銀のマイナス金利政策の導入以降、預貯金や債券の金利が軒並み低下する中、比較的高い利回りを維持しているためだ。一口にREITといっても銘柄によって運用する内容は様々で、景気動向などの影響や値動きなども異なる。自分に合った銘柄の探し方についてまとめた。

 「分配金は株式の配当に比べて多いし、実物不動産より多くの物件に分散投資できる」。京都府に住む50代の男性はREITの魅力をこう話す。現在9銘柄、600万円相当を保有し、値上がりによる含み益もあるという。投資目的は株の配当にあたる分配金収入のため「基本的に売るつもりはない」という。

 REITは投資家から集めた資金を複数の不動産に投資し、賃貸収入などから得た利益を投資家に分配金として払う仕組みだ。1つの銘柄を購入すれば複数の不動産を小口で購入するのと同様の運用成果が得られる。上場株のように売買でき、値上がり益も狙える。

■堅調な値動き

 東京証券取引所には現在54銘柄が上場しており、時価総額は約11兆円にのぼる。上場REITの値動きを示す東証REIT指数は今年に入り6%上昇。同時期に15%下落した日経平均株価に比べ堅調だ。予想分配金利回りは平均で約3%と「他の金融商品にはない利回りの高さ」(SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリスト)から投資家の資金が流れ込む。

 東証REIT指数は2012年から上昇基調が続き07年以来の高値圏にある。ただ、専門家には「指標面で割高感はない」(みずほ証券の石沢卓志上級研究員)との見方が優勢だ。根拠の1つが新発10年物国債とREITの平均予想分配金利回りの差。3%を割ると割高とされるが、現在は4%弱でまだ余裕がある。

 REITの保有資産の価値に対し、時価総額が何倍かを示す「NAV倍率」の平均も足元は1.2倍ほど。割安とされる1倍は上回るが、13年~15年に比べて低い水準にある。

 もっとも11年以前のように多くの銘柄が割安とされた時期とは異なる。個別にはNAV倍率が1.5倍に達するなど割高感が指摘される銘柄もある。野村証券の荒木智浩氏は「これから投資をする際には銘柄の選択が重要」と指摘する。

 その手掛かりとなるのがREITが運用する「中身」だ。ポイントは大きく、投資する不動産の種類、地域、そしてスポンサー企業の3つ。この3点から利回りや値動きの傾向をある程度把握できる。

 例えば投資する不動産にはオフィスビルやマンション、商業施設などがある。最近はホテルや物流施設、高齢者向け施設などに投資するケースも増えている。いずれかの分野に絞った「特化型」もあれば、2種類の「複合型」、3つ以上の「総合型」もある。

 SMBC日興の鳥井氏は「景気変動の影響はオフィスが比較的高く、マンションが低い」と指摘する。今後の景気が良ければオフィスビルに投資するREITの分配金が大きくなりやすく、悪化すればマンションのほうが安定した分配金が見込めるといえる。

 投資先の地域も収益性を左右する。運用先は東京都心の6区や23区のその他の地域、大阪、名古屋などに分けられる。一般に都心の方が物件価値が高いため、値下がりリスクは他の地域より少ないといわれる。一方で地方都市の物件は利回りが相対的に高い場合が多い。

 REITの運営を支援するスポンサーによっても違いがある。みずほ証券の石沢氏は「不動産会社がスポンサーなら魅力的な物件を発掘しやすい」という。商社や金融機関は高い利回りの物件を探すなどして、安定した分配金を出そうとする傾向が強いという。外資系不動産会社は海外投資家が売買することが多いため値動きが大きくなりやすいともされる。

 あとは3つの要素と自分の投資目的から銘柄を絞り込む。例えば手堅い運用を狙うなら不動産会社が都心部のマンションで運用する銘柄、高い利回りを狙うなら金融機関が地方のオフィスビルを多く組み入れる銘柄などを中心に検討すれば良い。

 商業施設なら実際に組み入れ物件を下見してみるのも一つの選択肢だ。知っている企業がスポンサーを務める銘柄や、住んでいる地域に近い物件を組み入れている銘柄を探すのも投資のきっかけになる。

■財務面も確認

 銘柄選びでは運用の中身だけでなく、財務面などの指標も確認したい。例えば簡単に経営不振にならないといった安定性を求めるなら、格付け会社から高い格付けを取得している銘柄や時価総額が大きい銘柄を選ぶ方法もある。例えば「日本ビルファンド投資法人」は格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)からダブルA格以上を取得している。

 割安感をみるにはNAV倍率が有効だ。目先の分配金の利回りを求めるなら、予想分配利回りを確認しよう。足元で5%を超える銘柄もある。値上がり益を狙うなら時価総額が小さく価格が変動しやすい銘柄を買う手もある。

 投資指標はREITの専門サイトなどで簡単に確認できる。REIT投資は分配金狙いが基本だが、購入後に価格の低迷が続くこともある。あらかじめ銘柄の特徴を理解しておけば、値下がり時の不安を減らすことができる。(野口和弘)

[日本経済新聞朝刊2016年7月13日付]

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