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夜の会食を伴う接待は残業になる? ならない? 大和ハウス工業 長時間労働削減への取り組み

日経ウーマンオンライン

2016/7/18

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日経ウーマンオンライン

2016年6月9日(木)、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で「ヒューマンキャピタル2016内 日経DUAL特別セミナー」が3つ開催されました。テーマは「女性活躍推進」、「長時間労働削減」、「イクボス」。企業の人事部門に所属する方を中心に、累計300人を超える方々にご参加いただきました。今回は、日経DUALの羽生祥子編集長と日経DUAL編集部の小田舞子記者がモデレーターを務めたセミナー「10年がかりの長時間労働削減プロジェクト~大和ハウス工業の本気~」のダイジェストリポートをお送りします。

国内住宅業界トップの大和ハウス工業は、実は10年以上、会社を挙げて長時間労働削減プロジェクトに取り組んできた。一連の取り組みの中で最初に行ったのは2000年からの「22時ロックアウト」。文字通り22時に事業所を閉鎖する仕組みで、これは後に21時に早められた。

2007年にはさらに思い切った施策を取る。それは外勤者(営業・工事担当者)の「みなし労働時間制」[注]の廃止だ。2014年の厚生労働省調査によると、みなし労働時間制を採用している企業の割合は13.3%だが、セミナー会場で「職場でみなし労働時間制を採用している人」と聞いたところ、3分の1程度の手が挙がった。

[注]みなし労働時間制とは、労働時間を正確に把握するのが難しい社員について、実際の労働時間にかかわらず、決めた時間を労働時間とみなす制度。

大和ハウス工業 東京本社 人事部長 佐伯佳夫さん

「みなし労働時間制の廃止には様々な考え方があると思います。私たちの最大の目的は社員の労働時間の正確な把握でした。そのために廃止という道を選んだのです」(大和ハウス工業 東京本社 人事部長 佐伯佳夫さん)

その際、社員から質問が挙がったのは労働時間の定義の仕方。それに回答するため、人事部は分厚い労働法関係の専門書を手分けして読み、何が労働で、何が労働に当たらないかという定義を集めた独自の『タイムマネジメント・ガイドブック』を作成。就業時間前、就業時間中、研修中、休日などでジャンル分けした、この具体的なQ&A集を社内イントラネットで全社員に公開した。その中身を少しだけ紹介する。

Q.お客様との飲食を伴う接待も残業になるのでしょうか?
A.飲食や親睦を主な目的とした接待や会合は残業労時間にはなりません。

「明確に一部が会議や商談で、その後で『軽く行きますか?』となった場合はきちんと分けることができるので、その一部は残業として申請できます」(佐伯さん)

Q.私はヘビースモーカーのため、喫煙で頻繁に席を外します。後ろめたい気持ちもあるので喫煙時間は残業から差し引いて申告したほうがよいでしょうか?
A.リフレッシュは節度ある時間にとどめたうえで、堂々と残業を申告しましょう。

「残業を申告しない人が『私は残業手当てをもらっていないから……』と変な言い訳ができてしまいます。ある程度の休憩というのは就業時間に含まれているので、むしろ手当ては支払う代わりにしっかりと仕事をしてほしい。人間、一日8時間集中して仕事をしたら相当疲れると思うのです。12時間など働いている人は、絶対どこかで息抜きをしているはずです」(佐伯さん)

Q.通勤中や帰宅途中などちょっとした時間を活用してチラシなどのポスティングを行いました。労働時間として認められますか?
A.上司が指揮命令して行った場合には労働時間として認められますが、自分の判断だけで行った場合は労働時間としては認められません。
【大和ハウス工業『タイムマネジメント・ガイドブック』より】

「この『タイムマネジメント・ガイドブック』の内容は100%正しいものだとは限らないと考えています。ある程度、信ぴょう性の高い専門書を参考にしつつ、あくまでガイドラインとして提示。個々の事例においては運用でカバーするというスタンスを取っています」(佐伯さん)

さらに、出退社時刻のリアルタイム登録の徹底化、パソコンの「ロックアウトシステム」導入、「サプライズコール作戦」(決められた退社時刻を過ぎてから人事部が各事業所に抜き打ちで電話をする)などの対策を実施。

特にパソコンのロックアウトシステムを導入した結果、「残業時間を控えめに申告する」「出社登録をする前にパソコンで仕事を始める」「退社登録をした後に仕事を続ける」といった行為が減ったという。

「これらの取り組みの効果は高い。正式な統計は取っていませんが、長時間働くことへの誇りも含めて“不夜城”という言葉もあった10数年前と比べると、社員の長時間残業は肌感覚で約7割は減っています」(佐伯さん)

人事部 人事・厚生グループ グループ長 松本由香子さん

「ロックアウトがなかった時代は夜も仕事ができてしまうので、『仕事があったら当然遅くまでやるんでしょう?』という雰囲気がなかったといえば嘘になります。以前であれば、私もそういった働き方をしていたかもしれません」(人事部 人事・厚生グループ グループ長 松本由香子さん)

右から日経DUAL編集長・羽生祥子、編集部・小田舞子

「早く帰らないといけないからといって、業績を落としていいよという甘い会社ではありません。それはそれ、これはこれ。高い目標を持ってそれを達成するために社員が一丸となっています」(松本さん)という言葉通り、2016年3月期の連結売上高、営業利益、経常利益が過去最高となった。

長い時間をかけて「長時間労働の削減」を徐々に社内に浸透させ、結果につなげてきた。その姿から学ぶことは多い。

会場には、企業人事部を中心とした参加者が集まった

(取材・文 日経DUAL編集部、小田舞子 写真 鈴木愛子)

[nikkei WOMAN Online 2016年7月5日付記事を再構成]

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