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衛星で「圏外」を解消 ソフトバンクがテスト中

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都市部のインフラ整備に注目が集まりがちな携帯電話のネットワーク。しかし、全国でくまなく利用できるようにするには、山間部などのエリアの整備も欠かせない。とはいえ、そうしたエリアは人口が少ないため、投資効率が悪いという課題を抱えている。キャリアは地方の山間部などを効率良くカバーするため、どのような施策を展開しているのか。ソフトバンクの取り組みを追った。

「青い池」周辺のLTE化を進める

LTEの黎明(れいめい)期はインフラ整備で激しい競争を繰り広げた大手3キャリア。だが、各社が急速に広域エリアのLTE化を進め、世界屈指のLTEネットワークが整備されたことで、ユーザーの不満の声も減った。今なお都市部のトラフィック対処に向けたインフラ整備は積極的に進められているものの、各キャリアともインフラへの投資は減少傾向にある。

しかしながら、ネットワーク整備が進んでいない地域も残っている。人があまり訪れない山間部や離島だ。そうした地域は居住者や滞在者が少ないため、キャリアの取り組みが積極的とはいえない。

とはいえ、携帯電話がこれだけ広く利用されている昨今、山間部などでも携帯電話が重要なインフラであることに変わりはない。観光で訪れた人たちなどが携帯電話を利用できないとなると不満に思ってしまう。それに対し、キャリアはどのような手法で対処しているのだろうか。今回はソフトバンクの取り組みを追ってみた。

まずは、ソフトバンクの北海道における電波環境改善に向けた取り組みを確認したい。2016年6月8日、同社は北海道の美瑛町にある「青い池」の電波改善策を報道陣に公開した。青い池は平成元年に造られた人造池で、水酸化アルミニウムなどの微粒子がコロイド粒子となって太陽光を拡散することで青く見えるといわれる美しい場所だ。その幻想的な風景が写真家などの間でも人気となり、現在では観光スポットとして、国内外から多くの観光客が訪れる。

青い池周辺は森林が生い茂る自然豊かな地域だが、ソフトバンクは青い池のエリアカバーを強化するため、周辺にLTE対応の基地局を新設。7月の開局を目指し工事を進めている。

では、なぜソフトバンクはこの場所に基地局を設置することにしたのか。

ビッグデータと900MHz帯で効率的にエリアをカバー

その主な理由は、やはり観光客の増加だ。ソフトバンクはこれまで、青い池周辺のエリアは近くの温泉にある基地局を用いて3Gでエリアカバーしてきた。LTEに対応していなかったのはもちろん、遠方の基地局からカバーしている関係で、電波も不安定な状況が続いていたという。

一方でここ数年、多くの観光客が訪れるようになり、スマートフォン(スマホ)で青い池の写真を撮影してすぐSNSに投稿するため、通信を利用するユーザーが急増した。

ソフトバンクでは、グループ会社などが提供するアプリを用いて、通信状況のログを収集。得られたビッグデータを解析して、エリア改善に役立てている。そのデータの解析結果をチェックしていたところ、青い池周辺の電波環境があまり良くないために、通信に失敗するケースが顕著に増えていることが判明した。そこでソフトバンクは、青い池周辺の基地局整備を優先して進めることにしたという。

このことから分かるのは、同社が、ビッグデータの活用により、通信の利用が高まっている場所をピンポイントで検知することで、投資を抑えながら、満足度を高めるインフラ整備を進めていることだ。

また、今回設置される基地局は、電波が遠くに飛びやすいとされる900MHz帯のみを用いてエリアカバーを実現している。ソフトバンクでは900MHz帯を活用することで北海道のエリアカバーを急拡大しているという。2014年10月からの比較で、LTEが利用できるエリアは約4.6倍に拡大したとのことだ。900MHz帯の活用が本格化したことも、山間部が多く広大なエリアをカバーする必要がある、北海道のエリア整備には役立っているようだ。

ちなみに自然が多いエリアに基地局を設置する上では、いくつかの課題が発生する場合がある。例えば、青い池周辺の電波を改善する際には、美瑛町側が豊かな自然を重視した観光施策を展開していることから、基地局が目立たないように設置する必要があった。そのため、基地局の設置場所が何度か変更されるなど美瑛町側との協議が難航。場所が決定するまで2年近くを要したほか、周囲の景観に可能な限り違和感を与えないよう、支柱の色も茶色く塗るなど配慮した。

LTEを用いてスマホで衛星と通信する新技術

ソフトバンクがビッグデータと900MHz帯を効果的に活用することで、地方でも投資を抑えつつ、効率よくエリア拡大を進めていることは分かった。だがそうした取り組みでもなお日本全土をカバーするのは難しい。そこでソフトバンクは、従来とは大きく異なる方法で、より広大なエリアをカバーできる技術開発も進めている。

それが衛星を使った方法だ。同社は6月9日に、LTE-Advancedに対応した衛星通信システムを試作していることを発表した。われわれが使用しているスマホなどの端末で、一般に利用されているLTE方式を用いて衛星通信を利用できる仕組みの実現に向けて実証実験を進めているという。

具体的には、衛星にLTEに対応した基地局を搭載し、そこから「Sバンド」と呼ばれる2G~4GHzの帯域を用いて、地上の端末と通信する。地上のLTE対応基地局と通信するのと、仕組みに大きな違いはないが、衛星と地上とでは3万6000kmもの距離がある。そのため、実際に通信する上ではいくつかの問題が発生するという。

1つ目の問題は、距離が遠いため大幅な遅延が発生してしまうこと。通常のLTE方式で許容されている遅延は往復200kmで約0.00066秒だ。しかし、衛星と通信するとなると、往復で7万2000kmもの距離となり、約0.5秒もの遅延が発生してしまう。そのため、従来のLTE方式のままでは、遅延が大きすぎて通信自体ができなくなってしまうのだ。

そこでソフトバンクでは、接続時の待ち時間を衛星に合わせて0.5秒に変更することにより、LTEによる通信を可能にした。ただしこの変更を加えると、LTEの標準仕様から外れ、独自の仕組みとなってしまう。そこで同社では、LTEの標準化を進めている標準化団体の3GPPに働きかけ、この仕様自体を標準化に取り入れてもらう取り組みを進めるとのことだ。

もう1つの問題は、距離が遠いため、端末に電波が届くまでの間の電波損失が大きくなることだ。将来的にはスマホなどに搭載したいとしているが、現状のスマホの電波出力では足りないことから、専用の端末を開発して実験を進めているという。

また電波損失が大きいことから、スマホサイズの端末で高速通信を実現するのは難しく、通信速度は100kbps~1Mbps程度になる。高速通信を実現するには大型のアンテナが必要になるという。

場所を選ばず通信できる日は来るのか

ソフトバンクが衛星を用いたLTEによる通信システムを開発した背景には、2011年の東日本大震災の発生があった。大規模災害発生時、被災地域では地上のインフラが被害を受け、復旧するまで通信できなくなることが多い。だが衛星通信であれば、地上の被災状況と関係なく、電波さえ入れば通信できる。そうしたことからソフトバンクでは、災害発生時に最も早く通信を確保する手段として、普段の端末で衛星通信ができる仕組みを考えたのだそうだ。

しかしソフトバンクでは、このLTEによる衛星通信を災害時以外にも活用できないかと考えている。つまり平常時も衛星通信を用いることで、地上の基地局だけではカバーできない山間部などのエリアカバーに役立てようとしているのだ。

人が多く訪れる場所は、通信速度や容量が求められることから、地上の基地局が必要だ。だがあまり人が訪れない場所であれば、衛星による低速なLTEによる通信であっても、広いエリアがカバーされていることのメリットが大きい。それだけに、ソフトバンクはより広大なエリアカバーを実現するためにも、衛星を活用する必要性を感じているようだ。

しかしながら、地上の基地局と衛星の基地局とで、同じ周波数帯を使うとなると干渉の問題が発生してしまう。そこで、LTE-Advancedの要素技術である「eICIC(enhanced Inter-Cell Interference Coordination)」と、基地局同士を高精度で同期させる技術を採用。それにより、双方の基地局同士を協調させ、時間によって電波を分割して組み合わせ、干渉を防ぎ地上と衛星の電波を共用する仕組みを実現したとのことだ。

現在、ソフトバンクでは衛星LTE通信の実用化に向けた実証実験を進めているが、実現のためには技術以外にもいくつかの大きな課題がある。最大の課題は、このシステムに対応した衛星が存在しないため、新たに衛星を打ち上げる必要があることだ。衛星の打ち上げにはコストがかかるだけでなく、国家間での調整が必要となるなど、非常に多くのハードルが待ち構えている。

それだけに、このシステムがいつ、どのような形で実現するかは分からない。だが地上だけのカバーでは限界があった、人口が少ない場所のエリアカバーに新しい可能性が示されたことは確かだ。僻地であっても場所を選ばずスマホで通信できる日が来ることも夢ではなくなりつつある。

佐野正弘(さの・まさひろ)
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

[日経トレンディネット 2016年6月15日付の記事を再構成]

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