ペンギン繁殖地、今世紀中に最大60%が不適に

日経ナショナル ジオグラフィック社

2016/7/16
ナショナルジオグラフィック日本版

気候変動の脅威に直面している南極大陸のアデリーペンギン。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA MITTERMEIER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

アデリーペンギン(学名Pygoscelis adeliae)は、気候変動による氷河の拡大や海氷の増減に適応しながら、4万5000年近く南極大陸で生き続けてきた。だが、米デラウェア大学が発表した最新の研究で、21世紀の気候環境下では、繁殖コロニーの存続が危うくなってきていることがわかった。

2016年6月29日付「Scientific Reports」に発表された研究論文によれば、南極大陸に暮らすアデリーペンギンの繁殖コロニーの最大60%が、21世紀末までに生息に適さない場所になる可能性があるという。

南極大陸で繁殖するペンギンは、アデリーペンギンとコウテイペンギン(学名Aptenodytes forsteri)の2種がいる。アデリーペンギンは大陸沿岸の多くの地域に生息し、南半球の夏に陸地に巣をつくり、冬になると海で食料を得るため、海氷の端まで移動する。

海洋学者のミーガン・チミノ氏率いる研究チームは、現地調査のデータと衛星の画像から、1981~2010年の南極大陸とその周辺に分布するコロニーのデータを年ごとに比較、各コロニーの30年間にわたる生息数の傾向を割り出した。

結果は、地域によって傾向が異なっていた。緯度の低い南極半島にある米国のパーマー基地付近では、80%以上も生息数が減少していた。一方、生息数が安定しているコロニーや、むしろ増加しているコロニーもあった。

さらに詳しく見ていくと、生息数が減少したコロニーの多くは、観測史上例のない気候に見舞われていたことが判明した。

研究チームは、コロニーにおける生息数の傾向と、海面温度や海氷の塩分濃度を用いて、統計的にコロニーと気候の関係を導き出した。そして、この関係を21世紀末の気候予測に組み込むことで、将来のコロニーの状態を予測した。

食料が魚からオキアミに

南極大陸を専門とする研究者の多くが、気候変動によってペンギンの「食料の質と量」「巣づくりを行う環境」が主に影響を受けると考えている。海水温が上昇すると、獲物となる生き物の数が減り、その結果、食事の内容が変化するのだ。

チミノ氏は「海氷と水温の変化によって、まず食料の構成が変わります」と説明する。「通常は栄養価の高い魚の方を食べるのですが、一部の地域ではすでに、魚の数が大幅に減ったことで、オキアミが主食になっています」

気候変動によって降水条件が変わると、営巣地の環境が劣化する可能性もある。南極大陸は一般的に寒くて乾燥した過酷な気候だが、温暖化により、前例のない量の雨が降ったり、雪解けが早まったりすると、地面に水たまりができるのだ。

「陸地で産卵するペンギンたちにとって、雨や水たまりは厄介な存在です。卵は水につかるとだめになってしまいます。また、ひなは水をはじく羽毛をもたないため、体が濡れて低体温症で命を落とす危険があります」と、チミノ氏は話す。

希望の兆し

チミノ氏らはこれほど悲観的な予測を導き出しながら、一方で、希望の兆しも見つけ出している。南極大陸の北部に暮らすペンギンたちにとっては厳しい予測に見えるが、ペンギンたちがこれからも生息できる「退避地」がいくつか特定されているのだ。

「退避地」とは、生物が絶滅するような環境下で、命を支えてくれる安全な避難地域を指している。

アデリーペンギンの場合、ロス海とアムンゼン海が退避地になるかもしれない。これらの海の周辺は、過去にも退避地になっていたと考えられており、未来の気候予測では、再び退避地になる可能性を示している。

南極大陸には30カ国の調査基地があり、7つの国が領有権を主張しているため、一貫した管理体制をとるのが難しい。チミノ氏は、海洋保護区の設置、漁業の規制など、アデリーペンギンを気候変動から守ることができる退避地の保全を優先的に行うべきだと訴えている。

(文 Aaron Sidder、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年7月4日付]

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