大人のダンス市場、「太陽の下」が主流に
品田英雄・日経BPヒット総研上席研究員
「深夜に薄暗いクラブで踊るのとは違う楽しみがあった」と語るのはDJ OSSHY(オッシー)こと押阪雅彦氏(50)だ。
このところ人気が拡大しているのが1980年代のディスコ音楽に合わせ、40代50代が踊る大人のダンス市場だ。その広がりの特徴は(1)東京から地方へ(2)夜から昼へ(3)ディスコからイベントへ、形を変えて数百人規模のパーティーが広がりつつある。
DJオッシーは、フリーアナウンサーの草分け押阪忍氏が創設した芸能プロ「SOプロモーション」の2代目社長。経営者として手腕を奮う一方、学生時代からDJを始め一貫してディスコ音楽の伝道者として活動してきた。
風向きが変わったのはここ数年のこと。東京のインターFMで2012年春から平日午後に「レディオ・ディスコ」がスタート、昼間にディスコというミスマッチ、曲間にバースデーコールを入れる、さらにチークタイムありといった懐かしいスタイルが「予想外の人気」となってラジオ局や音楽業界に衝撃を与えた(現在は土曜午後の放送)。
その流れがテレビに波及し、13年春からは東京のMXテレビで日曜正午に早見優さんとともにダンス音楽を語る「ディスコ・トレイン」が始まり、人気は一気に一般化した。
この夏は東京だけでなく、地方でも多くのイベントが開かれる。しかも場所はクラブではなく、大阪では水族館、名古屋は一流ホテル、逗子はビーチハウスなど、ミラーボールではなく太陽の下で踊るイベントに変化している。
流れる曲も80年代だけでなく、「サンバ・デ・ジャネイロ」やブルーノ・マーズの楽曲など90年代から最新ナンバーまで広がり、客層も成人した娘や息子の世代まで集まるようになってきている。「クラブにはないみんなで盛り上がる明るさや楽しさがあるから」だと言う。
衣装の派手さでは80年代と通じるが、流れる空気は昔のギラギラさはなくかなり健全。昔の不良たちには物足りないとの声もあるが、「安心・安全・健康的だからこそ現代に合っている。まだまだ広がりそう」というのが押阪氏の見立てだ。
[日本経済新聞夕刊2016年7月9日付]
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