オリパラ

オリパラSelect

絵文字で案内スマートに 訪日客にもわかりやすく 日本サインデザイン協会の定村俊満会長に聞く

2016/7/17 日経産業新聞

病院や商業施設が独自のピクトグラムを掲示することもある

 2020年に開催される東京五輪・パラリンピックでは海外から多くの観光客が訪れる。日本語になじみのない外国人客を手助けするのが文字の代わりに絵で意味を伝えるピクトグラム(絵文字)だ。公共施設だけでなく、小売店や飲食店などでの活用も広がるとみられる。日本サインデザイン協会の定村俊満会長に適切な使い方を聞いた。

 ――ピクトグラムとはどのようなものですか。

 「言語や文化、習慣などの違いを超えて、誰もがすぐに情報を理解できるようにデザインされた絵文字をピクトグラムと呼ぶ。言葉の壁がある海外からの観光客はもちろんのこと、視力が低下した高齢者などが理解しやすい利点がある。公共施設や交通機関、観光施設など、不特定多数の人が集まる場所を中心に世界中で広く使われている」

 ――いつごろから活用が始まったのですか。

 「1900年代に多国籍の住民が多く集まるスイスで発達したといわれている。日本では64年の東京五輪の際に『陸上』や『バレーボール』といった競技種目を表すピクトグラムを作製して注目が集まった」

 「その後、2002年にサッカーの日韓ワールドカップが開催された際に、交通エコロジー・モビリティ財団が中心になってより身近なピクトグラムが策定された。現在は約140種類のピクトグラムが日本工業規格(JIS)で規定されており、自由に使うことができる。企業が独自に作製することもある」

 ――東京五輪・パラリンピックに向けた新たな動きはあるのでしょうか。

 「外国人観光客に役立つ新たなピクトグラムの作製を有識者が集まって検討している。17年夏にもJIS規定が改定される見込みだ。外国人への調査によると、無線LANスポットを示すピクトグラムへの要望が強かった。海外で発行されたクレジットカードが使えるATMをピクトグラムで見分けられるようにしてほしいとの要望もある」

 「このほかレンタサイクルやボランティアガイド、充電コーナー、自動体外式除細動器(AED)といったピクトグラムが必要になりそうだ。企業からはイスラム教の礼拝などに使う祈祷(きとう)室を新設するので最適なピクトグラムを作ってほしいとの要望も出ている。JISに登録済みのピクトグラムでも、理解度が低く普及していないものは更新が必要だ」

 ――日本と海外でピクトグラムは統一されているのですか。

 「国際標準化機構(ISO)が定めるピクトグラムと日本のJISでは絵柄や意味がやや異なる場合がある。例えば日本のJISでは有人の案内所を示すピクトグラムは『?』、無人の案内所は『i』と分けている。ISOでは有人と無人どちらの意味も『i』に含んでいる」

 「『?』マークのように日本で広く使われているピクトグラムを、すぐにISOにそろえるのは簡単ではないだろう。それでも、例えば韓国では数年前にISOに一本化する決断を下した。日本での議論はこれから始まる見込みだ」

 ――企業がピクトグラムを独自に作製する際の注意点を教えてください。

 「誰が見ても理解できる絵柄にすることは言うまでもない。そのうえで海外の人がどのように感じるか気を付けなければならない。日本では問題にならない絵柄が、ある地域や宗教の人にとっては不快に感じる場合もあるだろう。そうした可能性を極力排除することが欠かせない」

 「JISで標準化したピクトグラムは世界の各地域の人に見てもらって違和感がないか、意味が理解できるかを調査した。企業が独自にピクトグラムを作製する際は、広範囲の調査をする手間やコストをかけられないだろう。経験豊富なデザイナーと一緒に作業を進めるのが現実的だ」

 「一度作製したピクトグラムも時代とともに絵柄の見直しが欠かせない。例えば携帯電話の利用を禁止するピクトグラムでは、携帯電話機の絵柄をスマートフォン(スマホ)に変えるといった変更が必要になるだろう」

 ――ピクトグラムの効果を高めるコツはありますか。

 「どれだけ離れた場所から情報を読み取らせたいかを考えてピクトグラムの大きさを決める必要がある。また、ピクトグラムと文字を組み合わせて表示する場合には、それぞれのバランスにも注意が必要となる。例えば、鉄道のピクトグラムと路線名の文字を組み合わせる場合、どちらも同じ距離から認知できなければ意味がない」

 「文字の部分に日本語と英語を併記する際は、それぞれに適した大きさがある。アルファベットは漢字より構造が単純で遠くから認識しやすい。英語は日本語の4分の3ほどの大きさで十分だ」

 ――運用上の注意点は。

 「巨大なターミナルなど複数の企業の施設が混在する場所では、各施設で異なるピクトグラムを使うと利用者が混乱してしまう。企業間で連携し、情報を違和感なく同じように伝えるように配慮してほしい」

 「一方、企業の単独の施設では、周囲の空間に合わせてピクトグラムのデザインに個性を出してもいいのではないか。ピクトグラムは空間デザインの一部でもある。ピクトグラムを認識しやすくするために周囲と色を変えたり、異なる素材を使ったりすると効果的だ」

(聞き手は河合基伸)

日本サインデザイン協会会長 定村 俊満氏
 さだむら・としみつ ソーシャルデザインネットワークス代表。代表作は福岡市営地下鉄七隈線のトータルデザイン。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた案内用図記号(ピクトグラム)作成検討委員会の委員を務める。

[日経産業新聞2016年7月7日付]

オリパラ新着記事

ALL CHANNEL