ヘルスUP

病気・医療

強くたたく、もむのはご法度 首の痛みのセルフケア

日経ヘルス

2016/8/28

PIXTA
日経ヘルス

 首の痛みの原因となる椎間板や筋肉のズレやこわばりといった不具合は、セルフケアで改善が可能だ。しかし自己流では逆効果になることもあると専門家は指摘する。

 例えば、凝った場所を「たたく、もむ」は常套(じょうとう)手段だが、根本的な改善策にはならないと、東京医科大学整形外科の遠藤健司講師は話す。血行を促し一時的に不快感を和らげるのには良い方法としながらも「血流が良くなるのは体表に近い場所のみで深部には及ばない。かといって強い力を局所にかけると筋肉組織を損傷する恐れも。損傷した組織は自然修復されるが、質が硬くなりやすい。そのためかえって凝りや痛みが増す可能性がある」(遠藤講師)

 首を回してコキッといわせるのも「音が鳴ること自体、良くない状態の現れ。その瞬間は気持ちが良くても、改善することはない」(お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニックの銅冶英雄院長)。市販の鎮痛薬も常用は良くない。痛みをごまかしているうちに病状が悪化する恐れがあるからだ。

■短時間の体操やストレッチで改善

 銅冶院長が提唱するのは、あごが突き出て前傾気味になっている首を本来の位置に戻す「首引き体操」。「痛みのもとになっていると考えられる髄核のズレを直すのに有効。首に痛みのある人の8割以上がこの体操で改善が期待できる」(銅冶院長)。

(イラスト:sino)

 一方、遠藤講師は背中からのアプローチも重視。「肩甲骨とそこに付いている僧帽筋の動きを良くする体操で、前かがみなどの首に負担がかかる姿勢を正す。血行促進や良い姿勢を保つ筋力の強化に加え、胸を張るので明るく前向きになれる等の精神面でのメリットもある」(遠藤講師)

(イラスト:sino)

 いずれも短時間ですみ、1日の中で細切れに行ってOK。特別な道具も不要と手軽だが、毎日続けることが肝要だ。なお手指や腕のしびれや麻痺、高熱、関節リウマチ、事故の直後で骨折や亜脱臼の恐れがある場合は行わず、医療機関を受診しよう。

 こうした体操とともに「深呼吸」も効果的と両医師は言う。「深呼吸は胸郭を開くので胸を張った良い姿勢に」(銅冶院長)、「自律神経のバランスが整うことで心身の緊張がゆるみ、凝りを改善」(遠藤講師)

 普段から「首にやさしい生活」を心がけることも重要だ。パソコンやスマートフォン(スマホ)、テレビ、運転……と、あごを突き出しやすい動作は日常的にあり、思い当たる人も多いのでは。「特にスマホは体の前で、両手で操作するため、前かがみになりあごも突き出しやすい」(遠藤講師)ので注意が必要だ。

(イラスト:sino)
(イラスト:sino)

(イラスト:sino)

 集中すればするほど、よく見ようとして体が前のめりになる。視力が良くなかったり眼鏡やコンタクトレンズが合っていなかったりするとなおさらだ。思い当たる人は「眼鏡を作り替えるなどの、視力の調整をすることも一計」(銅冶院長)

 見る対象との位置も見直したい。パソコンのモニターの文字を大きくしたり、机上での読書なら本の下にクッションを置くなど、「あごを引いた状態が維持できる環境にすることが大事」(銅冶院長)だという。

 常時、良い姿勢でいるのは難しくても、作業の合間に意識して姿勢を正し、体操をするだけでも違ってくるはずだ。

■この人たちに聞きました

 
銅冶英雄院長
お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック(東京都・千代田区)。日本整形外科学会専門医、認定脊椎脊髄病医。日本医科大学卒業後、千葉大学附属病院・国立がんセンター中央病院等での研修、米国留学等を経て2010年より現職。著書に『頸椎症を自分で治す!』(主婦の友社)
 
遠藤健司講師
東京医科大学整形外科(東京都・新宿区)。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京医科大学整形外科大学院修了後、米国留学、東京医科大学整形外科医局長等を経て2007年より現職。『本当は怖い肩こり』(祥伝社新書)などの著書、メディア出演多数

(ライター 渡邉真由美、構成:日経ヘルス 太田留奈)

[日経ヘルス2016年8月号の記事を再構成]

ヘルスUP新着記事

ALL CHANNEL