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国内航空3位、スカイマークの経営再建に取り組む会長の佐山展生氏。同時に投資ファンドのインテグラル社長、そして一橋大学大学院などの教授としても活躍。経営者、投資家、大学教授と3足の草鞋(わらじ)を履く。睡眠時間は1日わずか3~4時間。しかもフルマラソンにも挑戦する。疲れを知らぬ佐山氏に聞いた。

めざすは「定時発着率日本一」

――民事再生法の適用を申請したスカイマーク再建に名乗りを上げたのが2015年1月。16年3月期は営業黒字に転換、3月には民事再生手続きを終結しました。再建は順調ですか。

「円高や燃料安の効果もありますが、最近の搭乗率は80%を超えており、順調ですね。飛行機は安全性と定時発着が第一だけど、昔はよく遅延していました。ここを『カイゼン』して、その効果が出ていますが、さらに『定時発着日本一』を目指します」

――プロ野球の阪神タイガースと組み、球団ロゴなどをあしらった「タイガースジェット」の運航をスタートしました。これは佐山さんの趣味ですか。

「違いますよ。確かに私は阪神ファンだけど、もともとの発案はパイロットなんです。これなんて、全日本空輸や日本航空ではできないでしょう。日本全国をみれば巨人ファンの方が多いですからね。スカイマーク独自のサービスです。サービスのスタートの日にはお客さん全員に『ありがとうございます』と頭を下げて回りました。営業とか、接客サービス業は経験がありませんが、自然と感謝の気持ちが沸いて頭が下がるのです。私は結構、営業向きかもしれませんね(笑)」

社員との飲み会なら女子会にも出ますよ

――経営者として従業員との対話を重視していると聞きます。このサービスもその成果ですか。

「実は私は今回、初めて事業会社のトップになったのですが、経営者というのは常に何を考え、どう行動をしているかを、全社員に伝える必要があると思います。だからスカイマークの約1900人の社員に毎週月曜にネットなどで私のメッセージを発信しています。そのページの上に私のメールアドレスと携帯電話の番号も入れています。最近、一般の社員からメールが色々届きます。社員からの飲み会の誘いがあれば、たとえ女子会でも参加しますよ」

スカイマーク会長 佐山展生氏

スカイマーク会長 佐山展生氏

――スカイマークを再建するうえでの今後の課題は何ですか。

「やはり国際化ですね。2020年に羽田空港の発着枠が拡大しますが、スカイマークも何とか参戦したい。確かに政治的な要素が強い話ですが、まあ、何があるかわかりませんから、あきらめません。ちょっと前まで私が航空会社の経営者になるなんて思いもよりませんでしたし。とにかく公約どおり4年内には上場したいですからね」

公私混同ならぬ「公私一体」

――経営者として忙殺されているうえ、投資家と大学教授もやっている。そんな時間があるのですか

「公私混同という言葉がありますが、私の場合は『公私一体』です。ずっとスカイマークのことも考えているし、投資案件や大学の講義のことも手を抜きません。投資会社の重要な会議には必ず出ますが、大半が早朝か夜9時以降ですね。大学は一橋が週1~2回の講義は必須、京都大学の講義にも行きます」

「イベントもある。書き物も多いし、睡眠時間は3~4時間ですかね。夜は色々付き合いもあるので、午前0時ごろに帰宅して、3時間ぐらい寝て、また起きて、仕事をして、うまくすればまた1時間寝る。1日2度寝です。そうすると全然OK、まあ疲れはとれますね」

――佐山さんは62歳なのに、相当のハードワーカーですね。

「いや、『今が一番面白い、充実しているわ』と息子に話したら、『昔もそう言っていた』と笑われました。いつでも『今おもろい』と私の場合、自然に感じるタイプなんです」

――しかし、投資ファンドとしてずいぶん修羅場を経験してきたと思いますが、ストレスは感じないのですか。

「1年前のスカイマーク再建問題をめぐるANAホールディングスとのやりとりのときなんかは、人生で初めて『胃が痛いな』とストレスを感じましたよ。投資ファンドとして戦ってきたけど、旧阪神電鉄と旧阪急ホールディングスの統合問題のときもつらかったかな。ボディーガードがついていた時もありましたし。でも筋トレではなく、メンタルトレーニングを積んできたので、精神的に乗り切れますね。そして必死でやっていくうちに、段々『おもろいな』と感じるようになります」

野球が原点

――どこでその強い精神力を養ったのですか。

「やはり野球ですね。(京都の進学校)洛星の野球部時代に鍛えられました。それが私の原点です。中学2年のとき、バッターボックスに入ったら、相手のキャッチャーに『足が震えているで』と言われましてね。そこから毎日練習、体力と精神力を鍛え上げました。主将もやったし、絶対、勝負には負けられんと。高校時代はベスト8まで行きました。おかげで今もフルマラソンにも出場しています。先日も2週間ぐらい間をあけて走りましたが、まあ5時間ぐらいかけるから何とかやれます」

――経営者と投資家、大学教授の3足の草鞋を履いているメリット、相乗効果はありますか。

「いやあ、あまりないですね。あえて言えば、人脈が広がることですかね。私のゼミ学生が投資先に関与したりとか。まあ、面白いからいいんですよ」

佐山展生氏(さやま・のぶお)
1976年京大工学部卒、帝人入社。87年三井銀行(現・三井住友銀行)入行、M&A(買収・合併)アドバイザリー業務を担当する。98年ユニゾン・キャピタル共同代表取締役、04年GCA(現GCAサヴィアン)共同代表取締役。07年に投資ファンド、インテグラルを設立し、15年スカイマーク会長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、京大経営管理大学院客員教授。62歳。

(代慶達也)

「キャリアコラム」は随時掲載です。

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