「男性には言わないけど…私は仕事がものすごく大切」
キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論
こんにちは。ライターの大宮です。関西地方の私立大学を卒業し、単身上京して働き続けている桑原章子さん(仮名、37歳)のラブストーリーをお届けしています(前回記事はこちら)。
現在は外資系メーカーに在籍している章子さんですが、新卒で入ったのは全国から秀才が集まることでも知られる大手の日本企業です。上京して最初の3年間は精神的に「すごくしんどかった」と振り返ります。その頃に地元で出会ったのが理容師の貴彦さんです。彼の支えもあって元気になった章子さんは、「地元での結婚生活」よりも「東京での仕事生活」を選びました。貴彦さんと別れた後は、ますます仕事に没頭するようになります。
「法人営業は男の世界です。だからこそ、女の私がちょっとでもがんばると、『ギャップ萌え』して評価してくれるおじさんたちが少なくありません。難しい仕事もどんどん任せてくれます。20代後半は死ぬほど仕事しましたね。朝8時から終電まで働いても事務仕事が間に合わず、週末も出勤していました」
生活のほとんどを仕事に捧げる日々ですね。プロフェッショナルとして活躍し続けるためには、若いうちの10年間ぐらいは「死ぬほど働く」時期が必要なのだと思います。ただし、その期間は結婚や出産の適齢期とも重なってしまっているのです。
男性の場合は、章子さんと同じぐらい激務で「夜8時から1時間半だけ合コンに参加して会社に戻る」ような生活をしていても逆にモテたりしますよね。しかし、女性は厳しい立場に置かれます。自分よりも忙しく働いて稼いでいる同世代の女性を好きになる20代の男性はほとんどいないからです。若者特有の比較意識と劣等感が恋愛感情をしぼませてしまうのでしょう。30代の後半にもなると、自分よりも働き者の女性を頼もしく好ましく感じたりするんですけどね。
大切な仕事の場に恋愛感情は持ち込みたくない
女性のほうから見ても、自分はようやく仕事が面白くなってきて無我夢中で働いているのに、相手の男性が「まったり」していたら恋心は持ちにくいでしょう。貴彦さんのことが忘れられないという章子さんですが、20代後半の時点で貴彦さんと再会していたら、地元至上主義の彼を物足りなく感じていたかもしれません。
当時の章子さんが恋愛をするならば社内しかないと僕は思います。実際、同じ職場で気になる先輩がいたそうです。
「何を聞いてもスマートな回答をしてくれる人でした。私が納得するまでお話をしてくれる人が好きなんです」
ただし、章子さんはその先輩にアプローチをすることはありませんでした。それどころか現在に至るまで社内恋愛には慎重な姿勢を保っています。
「結婚して地元で暮らしている弟から『男には絶対に言うな。ドン引きされるから』と言われていることがあります。それは、私にとって仕事がとても大切だということです。寝ても覚めても仕事のことを考えています。やればやった分だけ充実感と生活の糧を与えてくれて、知らないこともどんどん経験させてくれるのは仕事ですよね。そんな大切な場所に恋愛感情を持ち込みたくはありません」
この感覚は、年齢を重ねて社歴が長くなるにつれて強まっていきますよね。会社内・業界内の知り合いが多くなり、自分の責任も増していくので、「下手なこと」がしにくくなるのです。
自分が社外でも通用するのか知りたい
仕事優先で走り続けてきた章子さんは、29歳ごろになると複数の会社や社内の他部署から「うちに来てくれないか」と勧誘を受けるようになります。いつの間にか優秀な人材に育っていたのです。章子さんは、業務内容には満足しつつも「自分にはどれぐらいの価値があるのか。社外でも通用するのか」を知りたい気持ちが高まりました。
「迷いに迷いましたが、今の会社で最初に上司になった人から『転職するにあたって不安なことは全部言ってくれ。何でも正直に答える。もしうちに来てくれたら、成長する機会を与えてあげられる自信がある』と言ってもらったのが転職の決め手になりました。不安よりも好奇心が勝った、とも言えます」
章子さんは30歳前後をキャリアの過渡期だと語ります。実際、新卒入社後の8年間のほぼすべてを捧げた大手企業から、老舗とはいえ外資系のメーカーに転じる決断をした時期でした。しかも、「同業他社には行かない」という矜持を持つ章子さんは、前職とはまったく異なる分野の会社を選択。同じ営業職とはいえ、またゼロから学び直すことになります。社会人としての基礎力は身についたという自信に加え、新しいことに挑戦できる若さが必要ですよね。
この時期は大卒総合職層の男女が恋愛して結婚する「最後のピーク」でもあります。超えてしまうと、周囲から同世代の独身者が急に減ります。特に女性は苦戦を強いられますよね。30歳前後は、キャリアだけでなく生活においても大きな過渡期だと言えるのです。続きはまた来週。
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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