長澤まさみらを輩出 「東宝シンデレラ」が新時代へ
長澤まさみらを輩出した、東宝芸能主催の「東宝シンデレラオーディション」。オスカープロモーションの「全日本国民的美少女コンテスト」、ホリプロの「ホリプロタレントスカウトキャラバン」に並ぶ"3大女優オーディション"で、1984年に第1回が開催、以降不定期で行われてきた。第8回となる今回は、2011年以来の実施となる。
対象は満9~18歳(16年7月10日時点)の女性。応募はホームページやスマホから必要事項を入力。全国10カ所で予選(第1、2次審査)を開催中(募集は終了)。11月にシンデレラ決定。賞金はグランプリ300万円ほか。アニソンを掲げているのも今回の大きな変化。グランプリ受賞者は、TOHOレコーズより、東宝制作のアニメの主題歌デビューが約束されている。http://www.toho-star2016.com/
王道かつ老舗ともいえる同オーディションだが、今回大きな変化があるという。事務局の中心メンバーである東宝芸能・城充雄マネジャーによると、その特徴は大きく3つ。まずは、「女優だけでなく、モデル、アニソンアーティストと3つのジャンルを立てた」こと。その理由は、「映画製作・配給の東宝が親会社のため、本来は最も女優色が強かった。しかし今は女優も、モデルやミュージシャンなど"マルチな才能"が求められている」(城氏)から。
次は、他企業とのコラボだ。流通王手のイオンモール、ティーン向けアパレルブランドのレピピアルマリオ(アダストリア)などが参画。なかでも強力なのは、「集英社との全面タッグ」だ。グランプリは、集英社の原作による東宝製作の映画でデビューを確約。さらに、「人気媒体にモデルとして出演できるのは大きい」と城氏。
一方で、各媒体と事務局をつなぐ役割を担った集英社のライツ事業部の小玉慶太係長も、「ひとつのオーディションにこれだけ全社的に協力するのは、集英社としても初めての試み」と話す。
「総合出版社として、今回の企画を全方位で協力・展開していこうと考えている。具体的には、『Seventeen』『週刊少年ジャンプ』など主要6誌で告知と、(受賞者の)露出機会を用意。『りぼん』では"『りぼん』ガール"を復活、『別マ』ではマスコットガールを新設した。また、グランプリの原作となる作品はまだ決まっていないが、選ばれる方の年代に合ったものにしたい」(小玉氏)
最後に「全員面接を行う」点。エントリー後、全国10カ所の会場に出向けば、もれなく東宝芸能の社員が直接面接。これは「シンデレラを待つのではなく、こちらから"迎えに行く"というコンセプトによるもの」(城氏)だ。
少ない金の卵が取り合いに
参加者から見て、これだけ豪華な特典が付くオーディションは、かつてなかった。なぜ、これだけ豪華なのか。それには、大きく2つの背景がある。まずはオーディションの数が増え続けている点。15年以上オーディション雑誌を手がけ、現在はウェブサービス「オーディション&デビュー」を運営している高橋治氏は、「雑誌を編集していた3~4年前までは、毎月開催される数は100~120ぐらいでしたが、今では150~200はあるのではないか」と見る。「ウェブやスマホのほうが告知も応募もしやすいため、従来の事務所系から小劇団の出演者まで、把握しきれない数になっている」のだとか。
もうひとつが、原石の取り合いになっていること。アイドルブームが続くなか、「街でスカウトしても、"○○○の研究生"と答えられてしまうケースが格段に増えた」とは、ある芸能関係者。地方でさえも、「これぞという子は他社の手がついていると感じる」。
そんななか、オーディション主催者は、「スピード」や「細分化」など、様々な工夫を凝らして原石の獲得に取り組んでいる。
「エイベックスやソニー系、スターダストプロモーションでは、いろいろなテーマで女優・俳優やアイドル、モデル等の発掘を行っています。ホリプロでは独自にオーディションサービスをスタートさせました。ライブ動画配信サービスを審査に取り入れる主催者も増えています」(高橋氏)
「長澤まさみは、幼なじみのお母さんの応募がきっかけだった。関心がなかった子にも応募の機会や興味を持ってもらいたい」(城氏)。アイドルブームが継続し、声優アーティストが躍進するなど、5年前とは様変わりしたエンタテインメント界。そんななか、大きく間口を広げた東宝シンデレラの変化は、新人発掘競争が激化する一方の業界状況を反映したものといえる。まずは、10月の最終選考約40人の顔ぶれに注目したい。
(日経エンタテインメント! 平島綾子)
[日経エンタテインメント! 2016年7月号の記事を再構成]
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