クールビズ、私のルール 「快適さときちんと感」両立
暑い夏、快適さときちんと感を両立できる仕事服選びに頭を悩ませる女性は少なくない。アパレル業界や百貨店で活躍する女性たちに、クールビズのマイルールを聞いた。
ユナイテッドアローズ 佐島裕子さん
「きちんと感はもちろん、優しい印象も意識する」と話すのは、ユナイテッドアローズの執行役員、佐島裕子さん(45)。財務やコンプライアンスなどを統括する管理本部長として、金融機関や会計士との打ち合わせが多い。「仕事相手はきちんとしたスーツを着ている男性が多いので、真夏でもジャケットは必須。スカートは膝丈で、しわになりにくい素材を選ぶ」。仕事相手を意識しつつ、パールやゴールドのアクセサリーで顔回りを明るく見せるなど、柔らかな印象を与える工夫も欠かさない。
クールビズで愛用するのはノースリーブのインナー。光沢感ある素材で華やかさと上品さを出す。「通勤中はジャケットを脱いで、会社についたら着る」
こだわりは足元にも。ヒールのないバレエシューズが定番だ。「黒やネイビーのジャケットが多く堅い印象になりがちなので、足元で抜け感を出している」。エナメル素材で、黒やベージュなどの定番色を選ぶ。
20代の頃は、「外部の相手に失礼にならないように」とピンストライプのパンツスーツを着ていたことも。「今思うとパンツスーツは好きではなかった」。今ではフォーマルな場以外ではセットアップのスーツは着ない。「パキッとしつつ女性らしさのある服」が、40代でたどりついた自分らしいスタイルだ。
三越伊勢丹 田中理香さん
「ジャケット着用はお客様への礼儀」と語るのは、伊勢丹新宿本店で婦人服の販売責任者を務める三越伊勢丹の田中理香さん(49)だ。2年前の部長昇格時、パンツスーツを2着、真っ先に購入した。ジャケットはテーラードとノーカラー。店頭を歩くこともあり「ストレッチが効いて動きやすく名刺がすぐに出せるポケット付きの服しか買わない」。
学生時代はワンレンボディコンでピンヒールを履き、入社後も「流行最先端の服で自分をアピールしていた」という。だが、キャリアを積むに従い、「洋服で自己主張するのは格好悪い」と思うようになった。
夏場の仕事着で心がけているのは「ジャケットを脱いでも決まるスタイル」。二の腕が気になるノースリーブではなく、フレンチスリーブを愛用する。厚みのある生地のTシャツをインナーに使うことも。「下着の線が出ず、シルエットもきれい」だからだ。
パンツスタイルなので生足だが「スカートならストッキングを履いた方が、足は格段にきれいに見える」と助言する。「仕事の場で足の指を見せるのはダメと思っている」ため、つま先が見える靴は履かない。
いろんな価値観を持つ顧客に接する立場なので「快く思わない人がいるかで迷うファッションは、やめた方がよい」。田中さんの仕事着への哲学は明快だ。
バーニーズ ジャパン 佐崎由記子さん
バーニーズニューヨーク新宿店のサブマネージャー、佐崎由記子さん(30)は店頭で年上の女性を接客することも多いことから「失礼にならないよう、清潔感のある着こなしをいつも心がけている」という。
ポイントは「色をワントーンにまとめて落ち着いた印象を出す」ことだ。この日は明るい青色のセットアップ。流行のゆったりした形のパンツは、体にまとわりつかないことから、真夏にも良い。ジャケットはファッション性の高いノーカラーのタイプだ。
「ノーカラーは丸襟のものが多いが、フェミニンになりがち。この形ならスタイリッシュに見えて、仕事にも向く」。インナーはVネックでも丸首でも合わせやすく、襟のあるシャツを着ても良い。着丈が長めで、きりっとした雰囲気を演出できる。
インナーはシルクサテン素材のカットソー。Tシャツよりカジュアルにならずに、ビジネスの場面にふさわしい。セットアップもインナーも全部洗える素材にし、自宅でも手入れしやすい。
靴もセットアップに合わせて同色を選んだ。「一通りの靴を持っているが、ヒールを履くと洋服がきれいに見えるし、きちんとした場に合う」。夏場は、パンプスの後ろがストラップになっているものなら、涼やかになってお勧めという。
仕事で着る服、清潔感や信頼感が重要
国が提唱する「クールビズ」は、室温28度でも快適に過ごせるオフィス環境や軽装を働きかけるもの。上着とネクタイなしで過ごすのが一般的な男性と違い、女性は仕事服の選択肢がそもそも多いうえ、業種や職種、立場によって服装のマナーが異なる。仕事に適した「軽装」の判断は難しい。
「クールビズだからカジュアルでいい、ということではない。仕事で着る服である以上、清潔感や信頼感は重要」と指摘するのは働く女性のファッションに詳しいイメージングディレクターの高橋みどりさん。露出の多い服や極端に薄い生地のものを選ぶのではなく、吸水速乾性の高い下着やムレにくいストッキングなど「素材や機能に注目し、暑さを軽減して快適に働ける服を選ぶといい」。
ジャケットが必要かなど求められる水準は、その日の予定や会う人によっても変わる。「朝、服を選ぶ前に一日のスケジュールの確認を。仕事内容にふさわしい服装かどうかを客観的に判断することが大切」だ。
(女性面編集長・佐藤珠希、南優子、関優子)
〔日本経済新聞朝刊2016年7月9日付〕
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