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「将来はVRがディスプレーを代替」 HTCの戦略

日経トレンディネット

2016/7/11

HTCのブース。可動式マシンとVRヘッドセットを組み合わせることで、より臨場感の高いVRを実現していた
日経トレンディネット

2016年5月31日から6月4日まで台湾・台北で開催されたComputex Taipei 2016には、20カ国から1600を超える企業が出展した。一般消費者向け、法人向け、さまざまな技術や製品がずらりと並ぶ中、目についたのはやはりVR(Virtual Reality、仮想現実)にかかわる展示だった。

VRヘッドセットを製造、販売しているHTCやサムスン電子は、視覚だけでなく体全体でVRの世界を体感できるように大がかりなマシンを使った体験スペースを用意。MSIは背中に背負って使用するVR用のパソコン(PC)を、ZOTACはVR対応のPCを出品した。いずれも体験スペースには人だかりができる人気ぶりだった。

サムスン電子のブース
ZOTACのVRデモコーナー。お立ち台のようなところで、かなり目立つ

VRを展示していたのは、VR関連機器メーカーだけではない。PCケースや電源ユニットなどのPCパーツを製造するクーラーモンスターは、自社製品の性能をアピールするためにパラシュートで降下する体験ができるVRコンテンツのデモを実施。自動車メーカーのアウディは、VRを使うことで、自動車に乗り込んだ気分でインテリアを360度見られるコーナーを設けていた。

クーラーモンスターのブースでは、同社のパーツを使って組み立てたパソコンVRシステムを動かしていた
アウディのブースでは、自動車の展示よりもVRでのプレゼンテーションに長蛇の行列が

あちこちのブースが自社製品のアピールにVRを取り入れている様子は、VRが本格的に普及してきたことの象徴のようだった。そして、それらのブースでも最もよく使われていたのがHTCのVRシステム「Vive」。そこで、HTCのVR New Technology部門でAVPを務めるレイモンド・パオ氏にVRの現状と今後について話を聞いた。

■まずはゲームから、将来は医療や教育も

――米国時間2016年2月29日(日本時間3月1日)に予約が始まったViveは好調のようですね。

レイモンド・パオ氏(以下、パオ氏): 一時はオーダーをストップすることもありましたが、工場を拡張し、6月以降はすぐに出荷できる準備ができました。今はまだ米国が最も大きい市場ですが、カナダ、中国、台湾、日本、オーストラリア、ニュージーランドなど24カ国で販売します。

――VRは今、次世代のテクノロジーとして注目を集めています。今後、普及するうえで、キラーコンテンツになるのはどんなコンテンツでしょう?

パオ氏: VRはまだ始まったばかりの技術ですが、波は2つあると思っています。最初の波は、すでに立ち上がっているゲームです。でも、その影響はゲームだけではないでしょう。その後に、2つめの波が来ると思います。エンターテインメント業界や映画業界などもVRには興味を持っています。さらに、医療分野、教育分野、アートデザイン、自動車などの製品開発、ショールームなどにも広がるでしょう。VRは、想像する過程でとても便利なデバイスです。このような古い分野でも、大きなチャンスがあります。

HTCでVRを担当するレイモンド・パオ氏

将来的に、あらゆるディスプレーはVRに置き換わる可能性があります。VRがあれば、目の前にはあなたが普段見ているのと同じような3次元の場所が広がります。どんな産業にも、時間や場所の制限があります。その限界を超えるには、VRが必要なのです。

――VRが今後普及する上での課題は何でしょう。

パオ氏: 新しい技術ですからいろいろありますね。VRシステムは、上手にデザインできていないと楽しめません。VR空間で心地よくいられるような新しい技術が重要です。初めてVRを体験するユーザーは心地よく感じられないと、二度とやらないでしょうから。

例えば、あるユーザーは「ワイヤーがなきゃダメなのか?」といいます。今のVRヘッドセットにはケーブルがついていますからね。そこで、多くの企業がワイヤレスにする技術に取り組んでいます。

将来的にはもっと高解像度になるのかとか、今のコントローラーとは別のタイプでインタラクティブなものは出てこないのかといった話もあります。ジェスチャーとかね。これも多くの企業が取り組んでいます。これからの2~5年で、新しいイノベーションが見られるはずです。

――今回のComputexでも、MSIが背中に背負うVR用のパソコン「Backpack PC」を出していました。

パオ氏: Backpack PCは最初のイノベーションの一つでしょうね。VRをプレーしながら、自由に動くことができます。

MSIが発表した「Backpack PC」

■VR普及には体験が必要

――Computexの基調講演では、マイクロソフトが自社で開発したMixed Reality(MR、複合現実)のプラットフォーム技術「Windows Holographic」を他社に公開すると発表しました。その企業には御社も含まれています。

パオ氏: MRとVRは違うテクノロジーであり、いずれも新しいものですが、相互に作用するものだと思っています。将来的には、MRはVRやAR(Augmented Reality、拡張現実)と一緒になるかもしれません。現状は様々な技術がありますから、ともに進むことで、様々なチャンスにつながればと思っています。Windows Holographicについてはまだコンセプトを聞いただけですが、非常に面白いですね。

マイクロソフトが開発したMR用のヘッドマウントディスプレー「HoloLens」

――今後、日本でVRを広げるための戦略を教えてください。

パオ氏: VRはテレビなどで見てもイメージしにくい技術です。VRの世界に入って体験してみないと。そこで、まずは体験できる場所を作ることが大切ですね。VRを体験した人たちは、きっとそのことを友人などに話してくれます。口コミで広がっていくでしょう。

もう一つは、コンテンツサイドへのサポートです。日本は1、2を争うクリエーティブな国。クリエーティブなコンテンツ・ディベロッパーがたくさんあります。我々は、それらの企業とともに利益を上げられるエコシステムを実現し、VRのコンテンツを作るサポートをしていきたいと思います。地域に合わせたコンテンツも必要です。それがまた、ユーザーがVRを体験する機会を増やすことにもつながるでしょう。

――日本ではバンダイナムコが期間限定で、VRを使ったゲームを体験できるエンターテインメント施設「VR ZONE Project i Can」をオープンしました。動き回るようなVRゲームをやるには自宅は狭すぎますが、その点、専用施設は安心。アーケードゲームはVRを体験する最初のステップとしていいのではと思いました。

パオ氏: VR Zoneには私もいきました。クリエーティブで素晴らしかったですね。アーケードゲームもサポートしていきたいと思います。日本だけでなく、中国、台湾、香港のような場所に制限がある国では、VR Zoneのような施設は適していると思います。ただ、VRには歩き回るだけでなく、座って楽しんだり、ビデオを見るような使い方もあります。その両方の楽しみ方を重視していきます。

HTCのVRシステム「Vive」。ヘッドセットと2つのワイヤレスコントローラー、2つのベースステーションで構成する。価格は9万9815円

(日経トレンディネット 平野亜矢)

[日経トレンディネット 2016年6月13日付の記事を再構成]

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