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池上彰のやさしい経済学

インフレ・デフレは、どのようにして起こるのか? 著者が解説~池上彰(8)

2016/7/9

 日本は戦後長い間、インフレに悩まされてきました。高度経済成長によって国は急速に豊かになり、給料もどんどん増えました。給料が増えると、みんながいろいろなものを買いたくなります。つまり需要が非常に多かったため、ものの値段がじりじりと上がっていったのです。

みんなが同じ行動をとることによって生じる「合成の誤謬」
~個人が合理的な行動をとっても、全体としては悪い事態になる~

 それでは、インフレとデフレについて、もう少し具体的に考えてみます。たとえば、欲しいものがあったとします。価格は100万円です。この値段が来月は110万円、その翌月は120万円に上がるとわかっていたら、みんな安い今月のうちに買おうとしますよね。そうやってものがたくさん売れると、生産が追いつかなくなります。値段を上げても売れるから、ものの値段はどんどん上がっていく。値段が上がっていくほど、みんな早く買おうとします。

 インフレでものの値段が上がっているときに本来やるべきことは、みんなが買うのをぐっと我慢することなんです。そうすれば需要がおさまりますから、物価の値上がりがおさまる、あるいは穏やかになります。でも、安いうちに買うことを我慢するなんて、なかなかできませんよね。結局みんな一人ひとりが早く買おうとする。自分だけが早く買えば得をするかもしれませんが、みんなが同じ行動をとります。

 みんなが同じ行動をとると何が起きるでしょうか。たとえば、サッカー観戦でみんなが座っているときに、1人だけ立ち上がるとよく見えますよね。でもみんなが同じことを考えて一斉に立ってしまうと、結局みんなが前より見えなくなってしまいます。これを「合成の誤謬(ごびゅう)」と言います。誤謬というのは誤りという意味です。

 デフレはその逆です。売れないから、どんどん商品の値段が下がっていく。100万円のものが来月90万円に値下がりするとわかっていたら、翌月まで待ちますよね。またその翌月に「85万円になりそうだ」ということになれば、さらに待つ。みんなが買うことを待つと、ものの値段はどんどん下がっていきます。これも合成の誤謬ですね。

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