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旗竿地、傾斜地…相続税を左右する「路線価補正」

2016/7/9

 国税庁が毎年7月初めに発表する路線価は土地を相続したり、贈与したりするときの税務上の評価額のもとになる。路線価に土地の面積をかければ評価額が出るが、これはあくまで目安。土地と道路との位置関係などに応じて路線価を補正する仕組みがあり、相続税額も左右する。住宅地によくある補正のパターンを知っておこう。

 路線価は都市部の道路ごとに付けられ、道路に面する標準的な土地1平方メートル当たりの評価を示す。2016年分は1日に公表された。国税庁ホームページや税務署で地図形式で見られるため、自分で土地の評価額を計算できる。例えば自宅の土地が180平方メートルで、面する道路に「300」の表示がある場合。路線価は千円単位なので1平方メートル当たり30万円になり、自宅土地の評価額は5400万円だ。

 この土地が路線価「200」の道路にも面する角地なら、2本の道路に出入りできる利便性の高い土地とみなされ、補正で評価が上がる。土地の正面の路線価に、側面の路線価である20万円の3%を足して計算するため、補正後の路線価は30万6000円、土地の評価額は5508万円に上がる。もう一方の側面や裏面にも道路があれば、評価額はさらに上乗せされる。

■更正請求し還付

 一方、路線価の評価を下げる補正もある。埼玉県の50歳代の男性は昨年、多く納め過ぎていた相続税を返してもらう更正という手続きで約400万円を手にした。道路から約1.6メートルの高さにあり階段で出入りする宅地の評価額を路線価より10%下げることができたからだ。男性は「思い切って更正を請求してよかった」と振り返る。

 周りの宅地に比べ道路との高低差が大きい土地は評価額が10%下がるが、具体的にどの程度の高低差なのか国税庁は明確にしていない。更正に詳しい税理士の岡野雄志氏は「2メートル以上の高低差があれば評価減が認められる可能性が大きい」と話す。ただし高低差があらかじめ路線価に反映されていないことが条件だ。

 例えば山の傾斜地に開発された住宅地では、同じ1本の道路をはさんで谷側の土地は道路と同じ標高にあるのが一般的だが、山側の土地は道路より高くなる。路線価に玄関まで階段を上る必要がある山側のデメリットが反映されていなければ、評価を下げられる可能性が大きい。

 都心部に多い「旗竿(はたざお)地」は、路線価をそのまま当てはめると評価が割高になるので注意が必要だ。旗竿地は「間口がせまく奥行きが長い土地」なので、路線価より評価が下がる。例えば間口が3メートル、奥行きが30メートルの旗竿地なら路線価から約20%減額できる。「四角形に比べて形がいびつな土地」として評価する方法もあり、相続税の申告ではどちらか評価が低い方を選べる。

 一戸建ての広大な宅地などだったところを小分けにする「ミニ開発」の奥にある土地は、直接面している行き止まりの道路に路線価が付いていないことが多い。税務署に申請して「特定路線価」を付けてもらう選択肢があるが、アンカー税理士法人の今田隆幸・代表社員税理士は「評価がやや高めに出る傾向があり、節税上は勧められない」と助言する。

 実はこうしたミニ開発の土地も最寄りの路線価のある道路との距離が遠すぎなければ、いったん旗竿地に見立てて評価できる。この方法なら路線価から20~30%くらい評価が下がり、ほとんどの場合、特定路線価を下回るという。「路線価のある道路から土地の入り口までの距離がおおむね30メートルくらいまでなら、旗竿地の方法が認められる」(今田税理士)とされる。

■地方自治体に照会

 幅4メートル未満の道路に面している土地は、原則として建物を建て替えるときに道路との境界線を後退させる「セットバック」をしなければならない。道路幅を広げ消防車などが入れるようにするためだ。セットバックする部分は路線価から評価を70%下げられるので、地価の高いエリアでは影響が大きい。セットバックが必要かどうかは地方自治体の建築担当部署に問い合わせれば分かる。

 昨年から相続税の基礎控除が4割縮小された。このため大都市の駅近くに一戸建てのマイホームがあり、さらに数千万円の預貯金がある人が亡くなると、自宅土地の評価を8割減にできる「小規模宅地等の特例」を適用しても相続税がかかる例が増えている。

 土地評価の補正を税理士に相談するなら、相続税申告の実績のほか書類を専用ソフトで作成しているか聞くといい。書類作成は複雑で手間がかかるため、申告件数の多い税理士は専用ソフトを使うのが一般的という。更正を手掛けるフジ相続税理士法人の高原誠・代表社員税理士は「申告書が手書きの場合は実績件数が少ない可能性があり、更正で相続税が戻る確率が高い」と話している。(表悟志)

■都心部の角地は分割相続も一案
 都心の商業地区などの路線価は、表通りと脇道の価格差が大きいことがある。このため税理士法人レガシィの田川嘉朗・代表社員税理士は「大きな角地を複数の相続人が分割して相続すれば、節税につながりやすい」と話す。土地の評価はそれぞれの相続人ごとにするため、分割の仕方によっては表通りの高い路線価の影響を少なくできる。
 ただし表通りに面する部分だけ極端に細長く分割したりすると、税務署に「著しく不合理な分割」とみなされ、残りの部分と一体で評価されることがある。分割後の土地それぞれが単独で宅地として使えるかが判断の目安。細長い部分を生前贈与していた場合も同じだ。

[日本経済新聞朝刊2016年7月6日付]

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