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たった1人の女性が挑戦 「ふるさと納税」の立役者に 「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」大賞の須永珠代さんに聞く

須永珠代さん(トラストバンク代表取締役)

2016/7/6

1人で悩むより、まず何かを始めてみる

 地域を元気にしたいと考える自治体の首長・職員と、それを応援したいと思う寄付者――。両者が出会って、寄付の申し込みから決済までできるのが、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」だ。企画・運営するトラストバンクは2012年4月の設立で、まだ4年あまり。ふるさと納税が注目を浴びるにつれ、ふるさとチョイスの知名度も上がってきているが、元は、須永珠代さんのたった1人の挑戦から始まった。

氷河期に運よく就職、満足せず1年後退職

 私は大学を卒業後、地元群馬の企業に就職しました。就職氷河期といわれていた時期で、運よく入社できましたが、1年でやめました。女性社員は補助的な役割にとどまり、何か仕事を任せてもらえるような雰囲気ではなかったからです。

 その後は派遣社員やアルバイトとして、営業や経理の仕事をしていました。しかし、それでキャリアを積んでいくのは難しく、正社員になる道も限られていることがだんだん分かってきました。結局、自分で起業するしかないと考えるようになりました。

 会社設立の知識はまったくなく、インターネットで検索して、会社登記などをパッケージ化したサービスを使ったくらいです。会社ができても、どんな事業を始めたらいいのか、なかなか決められませんでした。

 そんなとき、友人から「自治体関連の仕事にしたらいいのではないか」というアドバイスをもらいました。ネットで調べてみると、どの自治体も観光客の誘致や地場産業の振興といった経済の活性化策に取り組んでおり、歳入増大の方策としてふるさと納税も取り上げられていました。

 当時、ふるさと納税については、制度を使って寄付する人はいましたが、件数はまだ少ない状況でした。情報発信や手続きも自治体によってバラバラでした。興味深かったのは、ふるさと納税を一度利用した人は、翌年以降も寄付を継続するのに対し、利用しない人はまったく使わないという二極化の傾向がみられたことです。

「データベース化」と「マッチング」に工夫

 当時は公共データの活用を可能にするオープンデータ化が進められ、自治体の持つデータもその対象でした。自治体のふるさと納税を「データベース化」するとともに、寄付する人をそこにつなげる「マッチング」ができれば、人が集まるサイトになるのではないか、ふるさと納税がもっと利用されるきっかけになるのではないかと考えました。このアイデアがふるさとチョイスにつながりました。

 とはいえ、初めからうまくいったわけではありません。ふるさとチョイスを開設した当初は、自分でチラシを作って、関係する行政組織やメディアに配って回りましたが、まったく手応えは得られませんでした。

 注目されるきっかけになったのは、マネー雑誌に掲載された小さな記事です。これをみて別の雑誌がその直後にふるさと納税の特集を組んでくれて、そのおかげで知名度は上がりました。その後は今に至るまで、新聞やテレビ、雑誌など様々なメディアの取材を受けています。

 ふるさとチョイスでは、寄付者がサイト上で専用の申し込みフォーマットに入力するだけで、クレジットカード決済までを完了するワンストップサービスを提供しています。さらに、寄付を納めた人がその使い道を選べるようになっています。サイトには全国1788自治体すべてを掲載していますが、このうち1027の自治体ではこのワンストップサービスが利用できます。

 ふるさと納税を通じ、全国のいろいろな自治体の首長さんや職員さんと知り合えて、各自治体が直面する課題が分かってきました。私たちは、こうした課題にどう取り組めばいいのか、解決策の提示も行っています。

 ふるさと納税では、寄付した人に贈るお礼の品の製造を地場産業に発注した結果、地域経済に好影響をもたらした例が多数あります。さらに、移住定住や企業誘致、災害時即時資金調達支援などでも具体的な提案をしています。また、プロジェクトに特化した資金調達である「ガバメントクラウドファンディング」のプラットフォームを提供しており、累計8億6000万円以上を集めました。

有楽町に実店舗開く、自治体が使い道説明

 人と人との交流を深めることを狙いとして、7月1日、東京・有楽町に実店舗を開きます。ふるさと納税の仕組みをもっと多くの人に知ってもらう場として活用するのはもちろん、自治体の職員の方にも参加してもらい、寄付金の使途について語ってもらいます。使い道を知ることで、寄付した人の関心がさらに高まると期待しています。

 私自身も地方出身で、衰退していく地元の商店街や町の様子を見て、地元・地域をもっと元気にしたいという思いを持っていました。ふるさとチョイスを通じて、今後もいろいろな形で地域経済に貢献できる事業を展開していく予定です。

 自分のキャリアをどう形成したらいいのか悩んでいる女性は、たくさんいると思います。私もそうでした。そんな方には、とにかく何かを始めてみることを勧めます。自分が少しでも興味を持っていることを見つけて、実際にやってみてください。

 自分1人の力だけで何かを成し遂げようとしても、難しいでしょう。ふるさとチョイスを事業化する上では、自治体の様々な方から力をお借りできたことが大きかったと思います。特に情熱を持っている方との出会いが大切です。

◆ふるさと納税

 2008年に開始された制度で、自治体に寄付をすると、寄付額から2000円を差し引いた額が住民税から控除、所得税が還付される。総務省が全国1788の都道府県と市区町村に聞き取り調査したところ、2015年度は寄付額が1652億9102万円と前年の4.3倍に増えた。

 急増した要因として、寄付した人に自治体が送る特産品などの返礼品が充実したことが挙げられる。住民税などが控除される寄付の上限額が約2倍に引き上げられたほか、寄付先の自治体が5団体までなら、確定申告がいらなくなるなど、制度面の改善も後押しした。

※別途、申請書の提出が必要

須永珠代さん (すなが・たまよ)
トラストバンク代表取締役
群馬県伊勢崎市出身。2012年4月にトラストバンクを設立し、同年9月、ふるさと納税総合サイトを立ち上げる。14年1月からふるさと納税全国セミナーを開始。15年12月 日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」の大賞受賞。

[2016年6月27日公開の丸の内キャリア塾を再構成] 丸の内キャリア塾とは、キャリアデザインを考える女性のための実践的学習講座です。毎回、キャリアやライフプランに必要な考え方と行動について多面的に特集しています。facebookページは https://www.facebook.com/marunouchi twitterアカウントは https://twitter.com/_marunouchi_

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