積み立て投資 株安時の買い増しで成績向上狙う

英国の欧州連合(EU)離脱決定が株式市場を揺らしている。株価が下がると怖くて投資をやめてしまう人もいるが、長期的な資産形成は難しくなる。それを防ぐのが積み立て投資だ。毎月一定額を購入する方法が一般的だが、株価が大幅に下落した月に購入額を増やし、上昇した月に利益確定で売るという方法もある。この「修正積み立て投資」が一層の成績向上につながるケースも多い。

「残念ながら投資信託は株価が高いときに買われ、下落時に売られがち。結果的に投資家のリターンは悪くなる。日本でも米国でも同じだ」。大手投資信託会社バンガードのアジアパシフィック運用部門統括責任者、ロドニー・コメジス氏はそう指摘する。

投資信託協会によると、株価が高値圏にあった昨年1~5月、公募投信の市場へは通算で7兆円強の個人マネーが流入した。一方、株価が下落基調にある今年は5月までで約2350億円の資金が流出している。

ルールを設定

こうした「高値買いの安値売り」の傾向は長く続いている(グラフA)。投信は投資経験の少ない購入者も多く、逆張りの姿勢で売買する個人が目立つ株式市場とは対照的だ。

「相場下落時に怖くて売ってしまう行動を避けるには投資のルール化が有効だ」(コメジス氏)。例えば毎月一定額を買い続ける積み立て投資だ。価格が安いときに多くの数量を買うことで平均買いコストを抑えやすい。

この単純な定額積み立てよりさらに成績が上がりやすい方法がある。安値圏では通常よりも購入額を増やし、反対に高値圏では一部を売却して利益確定する。英国のEU離脱決定で株価が安値圏にある今こそ知っておきたい手法だ。

例えば、ある月の株価終値が過去1年間の平均値より(1)10%以上低かったら2万円分を購入する(2)10%以上高かったら2万円分を売却する(3)プラスマイナス10%の範囲内であれば1万円分を購入する――という具合にルールを設定する。

これに基づき長期で修正積み立て投資をしたとして運用成績を試算したのがグラフBの上部だ。先進国全体の株価を示す指数に連動する投信を対象に、1990年から今年6月まで約26年間、投資を続けてきたと仮定している。

例えば株価が高値圏にあった2014年11月~15年5月は多くの月で2万円分を売却。今年は世界景気の減速懸念から株安となった2月と英EU離脱が決まった6月(24日時点で計算)に2万円分を買っている。

26年間、月々購入した金額と売却した金額を通算すると108万円になる。一方、足元の株価水準を反映して現在の資産額を評価すると362万円。株価が長期で右肩上がりだったのと「安値買いの高値売り」の両方の効果により、資産額が投資額に対して3倍強の水準に増えた計算だ。

比較対照として定額積み立てによる効果をグラフBの下に示した。投資額累計が同じ108万円になるよう逆算して月々の積立額を設定した。この場合、資産額は足元で251万円になる。2倍強に増えたとはいえ、同じ投資額に対するリターンとしては修正積み立ての方に分がある。

幅広く分散投資

竹中正治・龍谷大学教授は修正積み立て投資を自らの資産運用の参考にするとともに人にも薦めている。価格が5年平均より30%以上低ければ増額購入し、30%以上高ければ売却するルールを目安にしている。

どれだけ価格が変動したら増額購入や売却をするか、それぞれの金額をいくらにするかというルールは投資対象や余裕資金額に応じて決めたい。リスクは増大するが、「一般に金額の倍率を高めた方が成績は上がりやすい」(竹中氏)。

修正積み立てが定額積み立てに比べて常に有利とは限らない。例えば数年にわたり株価が大幅に上がり続ける相場では、売りを出さない分だけ定額積み立ての方が成績が良くなる。

どちらにせよ積み立て投資は、価格が基調として右肩上がりでないと効果は出にくい。為替取引のように方向感が定まりにくい資産には向かない。世界株式で運用する投信のように、幅広く分散されて長期的に価格上昇が期待できる資産を選ぶのが基本だ。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2016年7月2日付]

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