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出産後のフルタイム復職、道険し

2016/7/2

結婚や出産で一旦離職した女性がフルタイム勤務で復帰を希望しても、現実には難しい実態がある。子供が成長して手がかからなくなるに従い就労希望は増えるが、実際は子供が中高生になっても復帰できていない人が多い。人手不足のなか就労希望があるにもかかわらず職に就けない要因は何なのか。

■意欲、子の成長と正比例

労働政策研究・研修機構の「第3回子育て世帯全国調査」によると結婚や出産で離職した女性がフルタイムで働きたいと望む割合は、末子が4歳から小学校に入学前の層で24.8%、小学1~3年生の層で42.3%に達した。中学生で84.2%、高校生だと93%と、成長するにつれフルタイム復帰を望む比率が高まる。

調査は「末子が18歳未満」の世帯を対象に同機構が2014年に実施、2197世帯から回答を得た。周燕飛主任研究員は「日本の女性は金銭面で妥協しても子育てや家庭的時間を優先する傾向にある」と指摘する。その上で、入園・入学や中学で部活動が本格化する時期など、子供に手がかかる時間が減るタイミングでフルタイムに復帰することを理想の働き方としている人が多い。教育費の負担が膨らむことも、母親の働きたい気持ちを後押しする。

ところが現実にフルタイムで働く人の割合は、子供が成長しても大きな変化は見られない。「3歳まで」から「小学校3年生まで」は約4割とほぼ横ばいだ。子供が小学校高学年や中高生でも、約2割の母親は「休業・子育て専念」にとどまる。

フルタイムに復帰しにくい背景には、理想の働き方と現実に就業できる勤務形態が必ずしも一致しないことがある。リクルートジョブズ(東京・中央)の調査では、子育て中の女性が仕事選びで重視するのは、勤務地の「場所」や休暇・勤務時間帯といった「時間」が多く、「職種」や「仕事内容」などの条件を大きく上回っている。フルタイムで働ける職場は、自宅から遠距離にあり時間の融通がつきにくいこともある。

■ブランク払拭、不安も同居

宇佐川邦子ジョブズリサーチセンター長は、退職後のブランクで復帰に自信が持てないことも「仕事選びに大きな制約をもたらす」と指摘する。「働きたくても、希望にかなう仕事になかなか出合えない」という思いは根強く、リクルートワークス研究所(東京・千代田)によると、第1子出産後に仕事を辞めた女性の約4割が退職を後悔している。

「働く側は身近な仕事に目を向け、企業側は初めの一歩として取り組みやすい仕事を用意すればよいのではないか」(宇佐川さん)。フルタイム勤務を実現するには、まずは仕事に就き、スキルを磨く機会が提供されることが欠かせない。

■気になる! 主婦が働き方を調整する要因の1つが「130万円の壁」。サラリーマンの配偶者で年収が130万円未満だと、現在は年金や健康保険の保険料を自分で払わなくて済む。10月からは一部でこの壁が106万円に下がる。人材サービスのビースタイル(東京・新宿)の調査では、扶養枠または専業主婦世帯の税負担を優遇する配偶者控除が廃止されるとフルタイムの希望者が倍増する。制度改正を機に手取りを増やそうと働き方を変える人は増えるだろうか。
■記者の目 記者の出身女子大の就職課に卒業生アンケートがあった。「あなた職場ではいつまで働き続けられますか?」という質問に、公共機関勤務の先輩の「いたいだけ、いられます」という回答は異彩を放っていた。長く働ける職場は限られていたからだ。そんな時代に就職し、結婚や出産による離職を経て、再び仕事をしたいと考えた女性は少なくないはず。働きたいのに働けていない母親が円滑に仕事に就ける環境整備が、女性が活躍する社会には欠かせない。

■「1歳までは育児」9割望む

子供が1歳になるまでは子育てに専念したい女性は約9割いるが、現実には約4割が働きに出ている――。「子育て世帯全国調査」は、理想に反して働く乳児の母親の存在を浮き彫りにした。

背景にあるのは待機児童問題。認可保育所の倍率が比較的低い0歳児のうちに入所を申し込む母親は多い。出産に伴うキャリアの中断を短くしたい母親とは別に、働くために必要な保育所の枠を確保するため、育児休業をやむなく切り上げる母親の姿が浮かび上がる。

学習院大学の鈴木亘教授は、認可保育所のO歳児を保育ママや小規模保育で対応するようにして、「認可保育所は1歳児以上を対象にすべきだ」と提言する。7都府県で約8万人に達する認可保育所の0歳児定員を振り替えれば「1歳児以上の受け皿を15万人程度は増やせる」と試算する。

スウェーデンは保育所を1歳からと定め、生後1年は親が子育てする期間にしている。母親が望む保育環境が整備されれば、待機児童問題の解決に新たな道筋がつくかもしれない。

(南優子)

〔日本経済新聞朝刊2016年7月2日付〕

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