非正社員の待遇改善 「同一労働」実態の評価こそ
男女 ギャップを斬る(池田心豪)
パートや派遣社員といった非正社員の待遇改善に関する議論が盛り上がっている。キーワードは同一労働同一賃金。職務が同じならフルタイムもパートタイムも時間当たりの賃金を同じにするという原則が欧米にはある。日本はそうなっていないことが問題にされている。
だが、同一労働同一賃金原則発祥のオランダでもフルタイムとパートタイムの格差は問題になっている。当然のことだが、時間単価は同じでも労働時間が短いと収入の総額は低くなる。
一昨年同国の政府を訪れたときは「男性はフルタイム、女性はパートタイム」という労働時間の差が男女間賃金格差や女性の経済的自立との関係で問題にされていた。日本において週2~3日働くパートの時給を正社員と同じにしても同様の問題は残るだろう。
日本には別の問題もある。あるとき目にとまった「パート募集」の求人広告に「月曜から金曜の週5日、朝9時から夕方5時まで」の勤務とあった。それってフルタイムでしょと思わず突っ込んでしまった。
日本の「パート」は短時間労働とは限らない。試みに総務省の「就業構造基本調査」(2012年度)で年間300日以上かつ週35時間以上就業する雇用者に占める「パート」の比率を計算すると3.0%になるが、男性0.9%に対し、女性は8.9%と男女差がある。特に35歳以上の女性においてその割合は高い。この「疑似パート」がフルタイム契約で雇用されれば待遇は改善されるに違いない。
職務給をベースとした欧米型の同一労働同一賃金が日本になじむかという議論はある。だが、働きが同じなら待遇も同じにという考えは日本にもなじむだろう。まずは労働の実態が同じであれば労働契約も同じにすべきではないだろうか。言うなれば「同一実態労働同一契約」である。
〔日本経済新聞朝刊2016年7月2日付〕
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