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私の履歴書復刻版

KDDI誕生――一社支配打破へ団結 業界発展目指し競争促す 京セラ名誉会長 稲盛和夫(29)

2016/7/18

20世紀もまさに終わろうとする2000年10月1日、国内第2位、世界でも十指に入る総合電気通信会社、KDDIが誕生した。

明治以来100年余り、国内通信は国家事業として独占的に運営されてきた。しかし、中曽根総理のリーダーシップのもと、土光臨調(第二次臨時行政調査会)が82年、最も適切な競争の仕組みを設け、独占の弊害を除くとともに、規模の適正化を図るべきだと、電電公社の分割・民営化を答申した。

私は分割されたNTT長距離通信部門と競争するものと信じ、84年、DDIを創業した。ところが、NTTの分離分割は遅々として進まず、DDIは当初、予想もしなかった巨大なNTTとの苦しい競争を余儀なくされた。厳しくとも、国民により良いサービスをより安く提供することは、善きことであるという信念で経営を続けた。

その結果、例えば東京―大阪間の通話料金は3分間400円を80円まで下げることができた。携帯電話分野でも、厳しい競争を続け、利用料金は劇的に下がった。経営的には大変でも国民のためにはなったと思う。

99年7月、NTTは新しい経営形態に移行したが、それは当初の方針とはまったく違っていた。NTTは純粋持ち株会社として残り、東日本、西日本、長距離部門などが形式的に分離分割されただけだった。しかも、それまで独立して運営されていたNTTドコモまでも傘下に入り、国際通信部門も持てるようになった。結局、NTTは以前にも増して一体的な経営ができるという、さらに強大なものになったのだ。

市場経済は自由で公正な競争を是として成り立っている。そのため、独占禁止法が必要となり、20年近く前にNTTは分離分割されることが決まっていた。それが実現しないという。国際的にも、世界第2の経済大国の通信市場で自由で公正な競争が行われず、実質的に1社に支配されるようなことは許されないはずだ。

KDDI発足記者会見(右端が筆者)

このままでは日本の通信情報産業の健全な発展は不可能になる。そのような危機感を持った私は、NTTの対抗勢力が大同団結するしか方法がないと考えた。

まず、携帯電話分野でNTTドコモに対抗するため、関東・東海地区で事業を行っているIDOとの合併が必要になる。また、国際、長距離分野ではNTTコムに対抗するため、KDDといっしょになるべきだ。そう思ってDDI奥山雄材社長と2人で行動を開始した。

KDD、IDOの親会社であるトヨタ自動車の奥田碩会長や張富士夫社長などにお会いした。また、KDDの中村泰三会長や西本正社長にもお会いした。私は日本の通信情報産業を健全に発展させるには、何としてもNTTに対抗できる勢力をつくらねばならない。「小異を捨てて大同につく」以外にない。このことは、日本の将来に大きな影響を与える。一企業の利害を乗り越えて、大義についていただけないだろうか。そして、通信業界は変化が激しく、素早い意思決定が欠かせない。ここはDDIを存続会社とし、責任ある経営をさせていただきたい。そうお願いした。素晴らしい見識をお持ちの方々ばかりで、ほどなく合意に達することができた。

私は21世紀における日本の通信情報基盤の一端をどうにか構築できたのではないかと思っている。今後、行政改革、構造改革が進められ、通信分野だけでなく、日本社会全体が国際的にも開かれたものになることを祈っている。

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この連載は、2001年3月に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」を再掲したものです。毎週月曜日と木曜日に更新します。第1回はこちら
稲盛和夫氏(いなもり・かずお)
1955年鹿児島大工卒。59年に京都セラミック(現京セラ)、84年には第二電電(旧DDI)を設立。2005年から現職。「盛和塾」で経営者指導に力を注ぐ。最近の活動は「稲盛和夫OFFICIAL SITE」(http://www.kyocera.co.jp/inamori/)に詳しい。84歳。

稲盛和夫のガキの自叙伝―私の履歴書
(日経ビジネス人文庫)

著者 : 稲盛 和夫
出版 : 日本経済新聞社
価格 : 669円 (税込み)

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