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個人型DCの落とし穴 住宅ローン持ちは恩恵縮小

日経マネー

2016/8/19

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 2017年1月から、個人型の確定拠出年金(DC)の制限が緩和され、誰でも使えるようになる。税制面で有利な制度として注目を集めているが、実際に個人型DCに加入すると、中にはがっかり感を覚える人がいるかもしれない。

■ふるさと納税の控除枠が減る人も

 例えばふるさと納税が大好きな人。ふるさと納税は、自治体に寄付をすると自己負担2000円で特産品など返礼品がもらえるお得な制度。たくさん寄付をすれば、その分返礼品もたくさんもらえるが、所得に応じて決まる上限額を超えると、自己負担が2000円では済まず、持ち出し額が多くなる。その上限額は所得が多い人ほど高くなる仕組みだ。

 仕組みを把握するのは難解だが、ポイントとしては、個人型DCに加入すると節税できる一方で、自己負担2000円で寄付できるふるさと納税の上限(寄付金控除の上限)額が縮んでしまうことを押さえよう。個人型DCの拠出額は、全額が所得控除の対象となる。このため、所得に応じて決まるふるさと納税の上限額も、個人型DCの拠出額分に応じて減ってしまうのだ。

■住宅ローン控除の恩恵縮小

 住宅ローン控除を使っている人も要注意。中には控除の限度枠を最大限に使えないまま、控除適用期間が終わってしまうケースもあり得る。

 住宅ローン控除を使うと最終的に納めるべき税額を少なくできるのだが、ローン控除で減額できる分はその人の税額の範囲内にとどまる。

 税理士・中村健二さんの試算では、年収700万円で、使える住宅ローン控除枠が20万円だった場合、個人型DCに加入しても20万円の控除枠はそのまま使える。

 一方、年収500万円だと納めるべき税金が少なく、個人型DC加入前から住宅ローン控除で減額できる税金は約15.7万円分しかない。DC加入で納税額が減ると、さらに控除適用額は約13万円まで縮小する。未使用の控除枠は翌年以降への繰り越しなどは不可。損をしているわけではないが、少しがっかりだ。

注:税理士・中村健二さんの試算。ローン控除額は所得税、住民税を合わせた金額

■ローン返済がお得な場合も

 「住宅ローン返済中の人や、これから借りる人は、DCで積み立てるより、その分のお金をローン返済に回した方がお得なケースが多い」と、ファイナンシャルプランナーの塚原哲さんは指摘する。

 DCでの運用に元本確保型の定期預金などを選んでしまうと、節税効果はあるにせよ、資金を殖やすのが難しい。一方、掛け金に相当するお金を住宅ローンの返済に回せば、利息を減らせる。

 つまり、個人型DCに加入するプラス(金融商品による運用益と節税)と、積立相当額を返済に回すことによるプラス(利息の圧縮)、それぞれの効果を返済期間中について比較すべきということだ。

 どちらがお得かは、年収や家族構成、借入額、返済期間、積み立て・返済に回す金額、DCを使うならどんな商品で運用するのか(どの程度の期待収益率か)などによって、変わってくる。ただ、「ある程度リスクを取った運用をしないなら、DC積み立てより、ローン返済を優先した方が得というケースがほとんどだ」(塚原さん)。

注:前提の24万9700円は、ある会社員の企業型DC掛け金の年額33万円の退職金前払い相当額(課税後、社会保険料控除後)。「生活経済研究所 長野」の試算

 事業主が掛け金を拠出する企業型DCでも比較は大事だ。企業型DCがあっても強制加入でない会社も多い。企業型DCに加入しない場合、希望すれば会社の拠出金相当額を「退職金前払い」という形で受け取ることも可能だ。前払い金には税金を課されてしまうが、そのお金をローン返済に生かせる。

 企業型DCに加入するなら、少なくとも住宅ローンの利息軽減効果を上回る利益が期待できる商品選びを心掛けたい。損得を正確に分析したい場合は、税理士やフィナンシャルプランナー(FP)など専門家の力を借りるといいだろう。

(ライター 福島由恵)

[日経マネー2016年8月号の記事を再構成]

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