オリパラパーソン 百貨店屋上の壁画アートでリオPRブラジル芸術家、五輪開催地つなげる懸け橋に

百貨店の壁面に描かれた作品の前でポーズを取るコブラさん(そごう・西武の西武池袋本店屋上で)
百貨店の壁面に描かれた作品の前でポーズを取るコブラさん(そごう・西武の西武池袋本店屋上で)

リオデジャネイロ五輪・パラリンピックを約1カ月後に控え、日本でも少しずつブラジルモードになりつつある。そごう・西武の西武池袋本店(東京・豊島)の屋上の壁に、リオをテーマにした巨大な「壁画アート」がお目見えした。縦12メートル、横56メートルの壁面のキャンバスに、両手を大きく広げたキリスト像が立体的に描かれ、青や赤、黄色のカラフルに描かれた石畳が彩りを加える。制作したのはブラジルのサンパウロ在住のアーティスト、エドゥアルド・コブラさん(40)。

作品は「東京からリオへとつながる扉になってほしい」という思いで描き上げた。リオの名所コルコバードの丘にそびえ立つキリスト像と、コパカバーナビーチの沿道に敷かれた石畳がモチーフ。「宗教的な意味合いでなく、愛や平和の象徴として描いた。キリスト像が両腕を大きく広げている様子は、ブラジル人がリオ大会で様々な国からの来訪者を大歓迎しているイメージにも重ねた」

制作は6人体制で2週間かけて完成させた。作業は百貨店営業時間外の夜11時から朝7時までで、「夜の仕事で光を当てながらの作業だったため、いつもの倍の時間がかかった。ペンキの色が日本とブラジルで違ったのにも苦労した」という。

「コブラ」はアーティストとしての愛称で、ブラジルで「優れた人」を意味する。小学生の時にひたすらノートに絵を描き続けており、それを見た友人たちがつけたのだという。「サンパウロの貧しい家庭で育ち、いつかアートで成功したいと夢見ていた」と話す。

期間中は店舗4階でコブラさんがリオをテーマに描いた3Dトリックアートも展示する

壁画アートには3種類ある。文字だけのアートである「ピシャソン」と、絵の「グラフィチ」「ムラル」。「グラフィチとムラルはいずれも絵だが、ムラルだけが合法です」とコブラさん。グラフィチは文字通り「落書き」で、建造物の持ち主の依頼を受けプロのアートとして描くと「ムラル」になる。

ムラルがブラジルでアートとして認知されたのは2000年ごろから。サンパウロを中心に花開いた文化で、リオでも活発だという。アートとしての地位を確立し、「近年では『ストリートアート』と呼ばれるようになった」。

コブラさんは10代からムラルとグラフィチを描いてきた。これまでに2000作品を描いてきて、このうち50作品が現存するという。サンパウロ市の中心部にある高さ56メートルのビルの壁に描いた、ブラジル建築界の巨匠オスカー・ニーマイヤーの肖像画は代表作だ。リオには3000平方メートルの大きさを誇る作品もあるという。

昨年は西武渋谷店でも壁に絵を描いた。前回の滞在では東京を離れ、遠出することができなかったが、今回は京都を訪ね、織物や扇子の絵に感銘を受けたという。「繊細な技術ですばらしい。自分の作品にも要素として取り入れたい」と熱を込める。

屋上に描かれた壁画アートの全景

いずれ東京の都心で人通りの多い目立つ場所で絵を描き、東京の歴史を表現したいと考えている。「僕の作品の特徴の一つは、その土地や街の歴史をテーマに取り入れていること。白黒の写真に色を与えていくイメージ。絵はすぐに目につくから、いつでも古きをたずねるきっかけになれる」

リオ五輪について、「ブラジルでの開催を誇りに思っている。社会的にも政治的にも安全面でも安定しているとは言えないが、危険な場所を避ければ問題ない。リオの美しい街並みと自然、それにカリオカ(リオ出身者の呼称)の来訪者を歓迎する姿勢はすばらしい」と話す。

リオ五輪でも公式の壁画を担当、選手村の近くには2500平方メートルの絵を描く。「帰国したらすぐに着手して、五輪の開幕前日に完成させる予定」。2つのテーマで悩んでいるといい「一つはスポーツ、もうひとつは五大陸を連想させる民族の描写」。

東京の作品展示は五輪閉会式後の8月いっぱいまで。来店者は自由に見学できる。「1人でも多くの人に落書きアートに興味を持ってもらい、ブラジルとリオを好きになるきっかけになることを願う」とコブラさん。大会期間中に東京とリオで人目を引く壁画は、両大会をつなげる懸け橋となりそうだ。

(夏目祐介)