50代前半、盛り上げよう
研修や面談で「価値」再認識
サントリーが53歳全員を対象に開く「キャリアワークショップ53」。これから働く意欲を高めてもらう
50代でもペースダウンせずに働いてほしい。65歳までの再雇用や定年延長が定着。就労長期化により、50代前半の社員の士気向上を狙った研修や面談に力を入れる大手企業が増えている。今の50代前半といえばバブル期に入社した世代を含む。その活用が「待ったなし」になってきた。中高年社員は昇進・昇給へのこだわりを捨て、会社人生を振り返り「なぜ働くのか」を改めて問い直し始めた。
6月半ば、東京都内のオフィスビルの建設現場。「機器の配置や配線はアートです。美しく配置することが隠れた不具合を防いでくれるんです」と快活に、作業する下請けの人たちに丁寧に指導する小宮山寛さん(50)。NTTコミュニケーションズのソリューションサービス部でシステムエンジニアとして働く。オフィスビルやマンションに通信設備を入れる業務だ。
今は楽しんで仕事をする小宮山さんだが「研修と面談を受けるまで、日常業務を淡々とこなす感じだった」と明かす。変わったきっかけは昨年の研修で見せられた自社の人員構成のグラフ。48~52歳と41~44歳の社員数が、他の年代に比べ飛び抜けて多い。多い年の社員は500人近く、その1年で全社員の約1割を占めることを知った。
管理職になれば当然こういった数値を元に経営方針を議論する輪に加わる。だが通常、現場の社員がこの種の情報を気にすることはほとんどない。「自分たちの世代が、定年間際だからと仕事のペースを緩めたら会社は持たないと危機感すら覚えた」と小宮山さん。
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同社は昨年後半に非管理職で50歳の社員全員の230人を対象に、研修と社内キャリアコンサルタントによる1人30~45分の面談をした。小宮山さんは面談で漠然と感じていた今後の仕事への不安なども話した。じっくり話し「50歳までと同じ職務だが、昇格・昇級とは別の次元で、現場でいい仕事に取り組もうと思いを新たにした」と話す。
「システムは試験をして基準を満たせば合格」だが、そこで満足しない。従来システムに加え「あらゆるモノがネットでつながるIoTや人工知能など、新しい技術を取り入れた提案を積極的に始めた」と小宮山さん。「顧客からの信頼も厚くなった」と実感している。