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ヒット総研の視点

この夏は、乾杯のお酒で不足がちな食物繊維も摂取 日経BPヒット総合研究所 西沢邦浩

日経BPヒット総合研究所

2016/6/30

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日経BPヒット総合研究所

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を斬るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、「食物繊維入りのビールテイストアルコール飲料」。通常のビールにほとんど食物繊維は含まれませんが、発泡酒、第三のビールの中には、特定保健用食品や機能性表示食品並みの量が入っているものがあります。暑い季節に喉を潤す1本で食物繊維まで採れるとなると、ちょっと得した気分になります。

だいぶ暑くなり始めた半月ほど前のこと。会議の終了時刻が夕方だったので、メンバーにいた左党が、「そろそろ喉を潤す時間ですね」とうれしそうにつぶやいた。

すると、同席していたあるメーカーの研究開発部長が「少し前に、発泡酒や第三のビールのなかに、結構な量の食物繊維が入っているものがあることに気づいてから、この種類のものをチェックしては飲んでいるんですよ」と言った。

一同、口をそろえて「それは知らなかった」。

私も不勉強ながらこれまで気づいていなかった。

ビールに食物繊維はほとんど入っていない。なぜなら、原料に使用する大麦には粘性の高いβ-グルカンをはじめとする食物繊維が多く、これがどろっとした雑味になるので、ろ過して取り除いてしまうからだ。

しかし、発泡酒や第三のビール(新ジャンルとも呼ばれる)に、食物繊維入りの商品があるとは、どういうことだろう?

なぜ入っているのか? 雑味にならない食物繊維があるのだろうか?

まずは、食物繊維入りビールテイストアルコール飲料を探してみなければ。

早々に座を辞した私は、そのまま近くのスーパーに向かった。

すると、確かに各社から出ている。

発泡酒類のなかでも食物繊維量が多いのは「糖質オフ」系の商品のようなので、このあたりに配合の理由がありそうだ。

「アサヒスタイルフリー パーフェクト」(食物繊維1.8g/100ml、アサヒビール)
「キリン 濃い味<糖質0>」(食物繊維1.8g/100ml、キリンビール)

「サッポロ 極ZERO(ゴクゼロ)」(食物繊維1.0g/100ml、サッポロビール)
「サントリー 金麦<糖質75%オフ>(食物繊維1.5g/100ml、サントリービール)

ちなみにこの日購入した4種類の商品には、100mlに1gから1.8gの幅で食物繊維が入っていた。350ml1本を飲むと、1g入りの商品で3.5g、1.8g入りの商品では6.3gの食物繊維が採れることになる。

比較のために記すと、「糖の吸収をおだやかにする」という表示が許可された特定保健用食品(トクホ)のノンアルコール飲料「SAPPORO+(サッポロ プラス)」(サッポロビール)には関与成分として、水溶性食物繊維の一種、難消化性デキストリンが1缶350mlに4g入っている。

また、2015年にスタートした機能性表示食品として受理され、「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」という2つの表示がある「パーフェクトフリー」(キリンビール)には、同じ難消化デキストリンが350mlに5g入っている。

食物繊維の種類は異なるかもしれないが、食物繊維入りのビールテイストアルコール飲料には、こうした機能性飲料と同等量の食物繊維が入っているようだ。

■糖質オフ系のビールテイストアルコール飲料に食物繊維が入っているわけ

メーカーに取材を申し込んだところ、アサヒグループホールディングスの広報部門からは、「糖質をオフにすると、味が平板になるので、厚みやコクを加えるために入れている」という答えが来た。先に挙げた4種類以外の糖質オフ系商品の成分表示欄をチェックすると、食物繊維と書いてあるものと水溶性食物繊維と書いてあるものがあるようだが、使用されているのは、セルロースなどの不溶性食物繊維ではなく、水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維のようだ。

サッポロビールの新価値開発部第1新価値開発グループ、渕本潤課長代理は、食物繊維を配合する理由を、アサヒビール同様、「糖質をオフにしたときのライトすぎる味わいに、ボディー、つまり厚みを加えるために使用する。甘みなどの味の調整成分ではない」と話す。

なぜ、水溶性食物繊維かということについては、「酵母が食べて発酵させないこと(発酵基材にならないこと)が条件になるため、水溶性食物繊維が選ばれている」とのこと。水溶性食物繊維は酵母の餌にならず、さらにコクを増す作用を持つようだ。

ということは、ここで使用されている水溶性食物繊維は、大麦のβ-グルカンのように粘性が強いものではなく、雑味にならず比較的サラッとしたタイプのものらしい。

ではその種類は何だろうか?

各社ともに「いろいろな水溶性食物繊維を使用している」という以上の回答は難しいとのこと。

ここからは推測になるが、2013年に公開されたビールテイストアルコール飲料の特許情報を見ると、「水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンまたはポリデキストロースが最も好ましい」と記されている。

ほかの選択肢もありえるだろうが、ともに、トクホと機能性表示食品の関与成分になっている2つの素材が使用されている可能性は高そうだ。

実際に、2003年にサッポロビールから発売された、その名も「北海道生搾り FIBER(ファイバー)」という発泡酒の広報資料には、350mlに難消化性デキストリンを6.3g、500mlで9.0g含むと明記されている。

トウモロコシのでんぶんから作られ、トクホ製品の約3分の1に使用されている機能性成分、難消化性デキストリンで表示が許可されている機能性には次のようなものがある。「整腸作用」(1日3~8gの摂取)、「食後血糖値の上昇抑制作用」(1日4~6gの摂取)、「食後中性脂肪の上昇抑制作用」(1日5g程度の摂取)。

こうした食物繊維入り発泡酒類は、今のところ酒税も安く懐にやさしい。工夫してコクが加えられ、しかもその工夫のもとになっている成分には機能性が期待できるかもしれないとしたら、得をした気分になってくる。

ちなみに、アルコール類は、トクホでも機能性表示食品でも対象外とされているため、もちろん、それを飲んで期待される作用を表記した商品はない。

■「食物繊維入り発泡酒で乾杯」でベジタブルファースト

難消化性デキストリンのような水溶性食物繊維が使用されていれば、乾杯でそういった発泡酒をゴクッとやって、その後食事をしながら飲むことで、今や多くの女性たちが取り入れている「ベジタブルファースト」が実現できる可能性もある。これは、食物繊維を多く含む野菜を食事の最初に食べて、白米ご飯やパンなどに含まれる糖質の吸収を穏やかにし、食後血糖値の上昇を抑え、ひいてはダイエットにつなげるという食事法だ。

また、肥満や生活習慣病、病原菌感染の予防などにまで幅広くかかわることが解明され、健康分野の話題を集めている「腸の健康維持」の要となる食物繊維摂取量の底上げにもつながるかもしれない。実際、日本人の食物繊維量は減る一方だ。

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、成人男性で1日20g以上、女性で18g以上の摂取が目標になっているが、平成26年の国民健康・栄養調査によると男性平均で14.6g、女性平均で14gしか採れておらず、かなりの不足状態になっている。

そこに、食物繊維のなかでも腸内の有用菌の餌になる水溶性食物繊維を少しでも多く送りこめれば、一石二鳥ともいえる。

一方、食物繊維に詳しい大妻女子大学の青江誠一郎教授は、「難消化性デキストリンには、泡がすぐに消えてしまうのを防止する働きもあるようだ。しかし、アルコールと一緒に摂取したときに、この成分が効果を発揮するのかどうかは不明。そもそも、アルコールのとりすぎは腸内細菌叢を乱すので気を付けて」とのこと。

当然ながら、飲みすぎはいただけない。

が、夏の暑い日に乾いた喉を潤す発泡酒が、ベジタブルファーストや不足する食物繊維の補給に役立ってくれるかも、と思うことでちょっとハッピーな気分になるのは許されるだろう。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員・日経BP社ビズライフ局プロデューサー。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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